無視か、調整か、中止か 

資産配分

20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて行われた米中首脳会談により、関税をめぐる不透明感がやや低下した。また、各国中央銀行の金融緩和観測も強まっており、これらを背景にリスク資産が下支えられている。G20での習近平中国国家主席とトランプ米大統領の会談で貿易紛争が一時休戦となり、追加関税もひとまず見送られた。今回の会談で、米中間の対話再開の土壌はできたものの、両国とも合意は急いでいない模様で、休戦状態は長期化が見込まれる。世界的に製造業と貿易の低迷が続いており、インフレ期待も低いため、各国中央銀行はハト派に舵を切り始めている。米連邦準備理事会(FRB)は今月末に利下げに踏み切ると予想され、欧州中央銀行(ECB)もこれに追随する公算が大きい。低金利環境の長期化はキャリー(金利獲得)ポジションにとって有利に働くだろう。我々は、株式にはニュートラルの資産配分を維持する。企業利益の伸びは年初来で鈍化しているが、債券利回りが歴史的な低水準に低下したため、株式のリスク・プレミアムは引き続き魅力的だ。

株式

FRBによる予防的な利下げは株式の下支え要因となる上、低金利環境も重なり、株式のバリュエーションは債券よりも魅力的とみられる。今年後半に世界の経済成長率が安定するとの我々の見方に変更はないが、米中貿易紛争をめぐるリスクは依然として高い。リスク・シナリオが実現しないと想定すれば、株式市場は緩やかに上昇する可能性がある。現在行われている決算発表で、企業側の利益見通しにさらなる下方修正があるかどうか注視していく。ユーロ圏株式に対する日本株式と米国株式のオーバーウェイトを継続する。ユーロ圏と日本は世界の景気サイクルの影響を大きく受けるが、ユーロ圏がマクロの景気回復を織り込んでいるのに対し、日本はまだ織り込んでいない。ユーロ圏株式は、日本株式よりも割高に見える。また、2019年と2020年の米国企業の増益率が欧州企業を上回る見通しであるため、ユーロ圏株式に対し米国株式もオーバーウェイトとする。さらに、貿易摩擦が激化した場合には、FRBの方がECBよりも経済成長減速に対して多くの対応手段を持ち合せていると考えられる。

債券

我々は高格付債に対する欧州投資適格債のオーバーウェイトを拡大する。欧州投資適格社債は、ユーロ圏の経済成長の安定とECBの金融緩和政策に支えられるとみている。企業のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は健全で、かつ我々の基本シナリオでは、今後12カ月は景気後退入りの可能性はないと予想しているため、キャリー収入が魅力的とみる。さらに、高格付債に対する米ドル建て新興国国債のオーバーウェイトを追加することで、同新興国国債のオーバーウェイトを拡大する。利回り追求の動きが下支えとなり、しかもバリュエーションは適正である。また、米2年国債を戦術的(短期的)にアンダーウェイトとしている。世界的に景気指標が軟化しつつあることから、FRBの利下げの可能性は高まっているが、2020年末までに4回程度の利下げを織り込んでいる市場の反応は過剰とみている。

外国為替

世界的な金融緩和への傾斜で安全通貨に資金が集まりやすくなる。それらの国の中央銀行にはさらなる利下げ余地がさほどないからだ。ユーロとノルウェー・クローネに対するスイス・フランのアンダーウェイト・ポジションを終了する。ノルウェー・クローネのカナダ・ドルに対するオーバーウェイトは継続するが、ノルウェー・クローネの対スイス・フランでのオーバーウェイトは対ユーロへと切り替える。両ポジションともに両国間の中央銀行による金融政策の乖離から利益を得ることを目指している。また、米中が貿易紛争の休戦に合意し、一方オーストラリア準備銀行(RBA:中銀)は6月、7月と2会合連続で利下げを実施したため、豪ドルの下振れリスクは低下している。これらを踏まえ、米ドルに対する豪ドルのアンダーウェイトを終了し、英ポンドのオーバーウェイトを対豪ドルから対米ドルに切り替える。景気感応度の高い先進国通貨バスケットに対する選別した新興国通貨バスケットのオーバーウェイトを拡大して、魅力的な高金利からの利益を狙う。

長期資産配分(1~4年)

英国株式のアンダーウェイトを継続する。英国市場は従来、リスクの低い保守的な市場と捉えられてきたが、ブレグジットをめぐる不透明感によりこの市場の特性が変化し、リスク・プレミアムが上昇する可能性がある。米ドル建て新興国国債は、相対的に今後長期的な価値があると予想し、オーバーウェイト・ポジションを維持する。さらに、投資家には通貨ヘッジをしない形で日本株式へ投資することを推奨する。日本円は大幅な割安水準にあり、米ドル、ユーロ、スイス・フランに対して今後長期的に上昇する可能性があるからだ。

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