日本株式 バリュエーションから見ると上値が限られ始めた日本株市場

日経平均株価は12月1日、海外投資家による旺盛な日本株買いを受けて29年ぶりの高値を付けた。だが、最近の株価上昇は市場の流動性によって引き上げられていると見ており、株価収益率(PER)の一段高は見込めないと考える。

by 居林 通、小林 千紗 2020年 12月 02日
  • 日経平均株価は12月1日、海外投資家による旺盛な日本株買いを受けて29年ぶりの高値を付けた。
  • だが、最近の株価上昇は市場の流動性によって引き上げられていると見ており、株価収益率(PER)の一段高は見込めないと考える。
  • このような高い利益成長は持続しないとみられるため(我々は2021年度の当期利益を40%増益、2022年度を2%増益と予想)、海外投資家は来年のどこかの時点で再び失望する可能性が高い。

我々の見解

日経平均株価は12月1日、海外投資家による旺盛な日本株買いを受けて、29年ぶりの高値を付けた。最近の底堅い市場パフォーマンスは、海外投資家が再び日本株式に注目したためだが、その背景には主に3つの理由があるとみている。

第1に、米大統領選でのバイデン氏勝利を受けて、米中摩擦に対する投資家の懸念がひとまず後退した。日本の製造業の多くは中国に工場を構えていることから、米中関係の改善がこれらの日本企業に大きな恩恵をもたらすと期待される。

第2に、日本企業の7-9月期の決算は、前年同期に比べて17%の増収、2.1倍の利益増と、予想を大きく上回る回復を見せた。我々は、2020年度(2021年3月期)はまだ7%の減益にとどまるが、2021年度は40%の大幅増益を見込んでいる。

第3に、新型コロナのワクチン開発と、日米で追加財政刺激策が発動される可能性から、投資家が株式に対して楽観姿勢を強めている。その結果、将来の利益成長の期待値を図る、12カ月先予想1株当たり利益(EPS)に基づく株価収益率(PER)が、日本株については、直近3カ月の間に19倍以下から足元23倍にまで上昇している。

海外投資家は戻ってきた……

一言でいうと、政治情勢、企業利益、経済環境が改善している。我々は、2020年8月21日付の日本株式レポート「第二の回復の波に乗る日本株式」で、「ハイテク以外の景気敏感株に復調の兆しが見えてくれば、海外投資家が再び日本株市場に参入してくるとみている。日本企業は世界経済の回復から恩恵を受けるとみられるため、海外投資家の日本株式への注目が高まるだろう」と述べた。海外投資家は年初に売り越した6兆円のうち、既に3兆円近くを買い戻している。では、来年、ワクチンが広く行き渡り、世界経済の回復が鮮明になり、金融緩和が続くとすれば、日本株式の上値はあとどのくらいあるのだろうか?

我々は、現時点で、TOPIXが2021年末までに1,990ポイントを付けると予想している。この見通しに基づくと、来年は7%の上昇余地があることになる。とは言え、過去20年のうち大半の年で、日本株は年率で20%を超えるボラティリティ(株価変動率)を示してきた。日本株式が一段高となる場合、ある程度の調整局面にも備える必要があるだろう。

……だが、株式バリュエーションも大事

今年は、2005年、2012年に次いで過去20年間で3度目となる年末ラリーになるとみている。過去を振り返ってみると、日経平均株価が一年で25%を上回る上げ幅を記録した時には、その翌年の上半期中に上げ相場が終焉している。日本株式は通常、他の主要市場に遅行するため、世界の景気サイクルの終盤で高値を付ける。だが、足元の企業利益はまだ回復の序盤にあるものの、日本株は将来的な業績回復期待の大半を既に織り込み済みだと我々はみている。

従って、今は、株価評価(バリュエーション)に注目すべき時であると考える。我々は、8月21日付日本株式レポート「第二の回復の波に乗る日本株式」を公表した8月時点では、企業利益がまさに回復し始めたところで、日経平均株価のPER19倍はさほど割高ではなく、日本株式には上値余地があるとみていた。しかし現在は、企業利益の回復シナリオが十分に描かれており、10%のEPS成長に基づく足元の日経平均株価のPERは22倍である。たとえアナリストによる業績予想の上方修正が今後も続いたとしても、指数のPERが一段と拡大するとは考えにくく、18-20倍(それでもまだ過去の高水準に近いが)に下落することもあるだろう。

日本経済の戻りは遅く、日本企業の業務や事業ポートフォリオの変革も緩やかであるため、2021年度の当期利益は40%増と大幅に回復しても、翌2022年度の利益成長率は2%と、緩やかな水準にとどまると予想する。さらに、日経平均株価のPERは現在、米巨大IT企業が大きな割合を占めているS&P500種株価指数に匹敵するほどの高い水準にある。

たしかに市場センチメントは明るく、投資環境も何年かぶりに好転している。だが、高い利益成長は持続せず、来年のどこかの時点で海外投資家が再び日本株に失望する可能性が高いと考えている。

最後に、日経平均株価をTOPIXで割ったNT倍率は、短期的な市場の過熱感を示している。図表5からは、NT倍率が2008年の10倍から足元15倍へと上昇していることが見て取れる。近年、海外投資家が日経平均の主要銘柄を中心に購入してきた結果、指数の一部銘柄が大きくアウトパフォームし、これがPER上昇の大きな原因となっている。従って、こうした一部の銘柄は既に割高であると考えられる。

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居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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