今週の要点

存在感を高めるフィンテック 

大手金融サービス企業は、新たなテクノロジーへの適応に遅れをとってきた。複雑な業界規制、依然従来型の決済手段を好む一部の消費者、その他構造的な制約などがその理由だ。しかし、そうした中でもフィンテック産業は転機を迎えている。需要と供給の双方を原動力に、金融サービス・セクターに抜本的な変化をもたらしている。コロナ禍で非接触のキャッシュレス決済が普及し、オンラインサービスへの移行が広がっている。また、米調査会社CBインサイツによると、フィンテック分野のユニコーン企業は2021年初時点で世界75社に上るが、こうした企業が多くの主要市場でデジタル製品やプラットフォームを展開しており、オンラインでの金融取引や顧客サービスに抵抗のないデジタルネイティブの消費者の間で広まっている。世界のフィンテック市場は2030年までに3倍以上拡大して7,500億米ドルに達すると予想されており、投資家に長期に亘る構造的な成長機会をもたらすと考えている。 

要点:世界各国でフィンテック企業の上場が予定されている。フィンテック企業の上場により、金融サービス・セクターを一変させる画期的なテクノロジーへの長期的なエクスポージャーが可能となる。 

景気回復で株価上昇余地が拡大 

S&P500 種株価指数は 4 月初め以降、史上最高値を 8 回更新している。また、年初来の上昇率は 11%近くに上る。史上最高値で投資することには躊躇する向きもあるだろうが、我々は目先一段の上昇を予想しており、年末時点の S&P500 の目標値をこれまでの4,200 から 4,400 に引き上げた。ひとつには、先週から始まった第 1 四半期決算発表で、S&P500 構成企業の業績が四半期としては過去最高を記録する見通しが挙げられる。我々は、S&P500 構成企業の 1 株当たり利益(EPS)の伸び率を、第 1 四半期については 30%近く、通年では 31%と予想している。2 つ目に、投入コストが上昇しているものの、経済成長の加速に伴い業績も加速するため、投入コストが利益率の重しとなるとは考えにくいということだ。過去の数値を見ると、経済活動の活発化に伴い生産コストが上昇した場合、企業の多くは健全な利益率を維持できている。最後に、バイデン政権が提案する法人税制改革案による影響は、足元の想定ほどには大きくならないとの見方だ。バイデン大統領は 8 ポイントの増税幅を提案しているが、議会の抵抗により 4 ポイントにとどまる可能性が高いと我々はみている。

要点:経済の再稼働と経済成長の加速を背景に、投資家のリスクオンの地合いが続くと予想される。投資家の強気姿勢が、金融やエネルギーなどシクリカル(景気敏感度の高い)セクターやバリュー(割安な)・セクターの支援要因となるだろう。

逆風はあるものの、テクノロジーには依然長期の成長機会 

ここ数週間、テクノロジー・セクターにとって厳しい展開が続いている。テクノロジー企業は保有資産の大半が無形資産であることから、世界の低税率国の恩恵を受けることが可能である。しかし、バイデン大統領が提案した法人税増税は、そうしたテクノロジー企業にとって脅威となりうるものだ。また、中国の規制当局が国内大手 IT 企業に対し、独占禁止法に違反したとして、中国国内で史上最高額となる 182 億 2,800 万元(約 3,050 億円)の罰金を科した。これはテクノロジー企業に対する規制当局の取り締まりの強化を示唆している。しかし、いずれの圧力も対応は可能だと我々は考える。増税については、テクノロジー企業の利益に与える影響はパーセンテージにして 1 桁台半ばから後半に留まると予想している。また、こうした悪影響の一部は、研究開発や半導体製造に対する政府の支援拡大で緩和されうる。また、中国の規制当局は、圧力をかけるにしても、米国とのテクノロジー競争で不利にならないよう考慮せざるを得ない。さらに、米連邦準備理事会(FRB)が超低金利の長期化を示唆していることから、テクノロジー企業がもたらす長期的な成長機会は投資家の目に魅力的に映るだろう。

要点:5G、フィンテック、グリーンテック、ヘルステック関連分野を中心に、テクノロジー・セクターについては長期的に強気の見通しを維持している。

House View レポートの紹介


資産運用はUBS証券へ

UBSウェルス・マネジメントでは、富裕層のお客様の資産管理・運用を総合的にサポートしております。日本においては、2億円相当額以上の金融資産をお預け入れくださる方を対象とさせていただいております。

(受付時間:平日9時~17時)