製造業の低迷は景気後退につながるのか?

8月25日付CIO Alertにて一部の戦術的資産配分が変更されておりますので、こちらもご一読ください。

今月は、米10年国債利回りが、金融危機以降初めて米2年国債利回りを下回った。第二次世界大戦後の米国では、景気後退に陥る前に長短金利が逆転していたため、ここに来てグーグルで「景気後退」の検索数が跳ね上がっている。

しかし、逆イールドが株式の信頼できる売りシグナルであったとは言い切れない。米国大型株のリターンは、逆イールドが発生した翌年が平均8%で、2年後が15%だった。しかも、1965年以来8度あった逆イールドのうち、3年後にリターンがマイナスになったケースは1度しかない。

とはいえ、売りシグナルであるかどうかは別にして、米国市場での逆イールドは、現在市場を支配している2つの正当な懸念を反映している。第1に、最近特に製造業セクターに顕著に見られる景気指標の鈍化は、今後広がり、深まっていくのではないかという不安。第2に、トランプ大統領は、中国との貿易交渉を妥結するためには、米国経済が景気後退に陥ることも辞さないのではないかという疑念である。

本レターでは、この2つの不安を検討した上で、我々がなぜどちらの見方も行き過ぎだと考えるのか、状況の変化を把握するために何に注目するのか説明する。

世界の製造業セクターは低迷しているようだが、これが世界的な景気後退へと波及するかどうかは今のところはわからない。小売売上高に関する最近のデータによると、米国の個人消費は、非常に低い失業率に支えられて好調さを持続している。米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行、中国人民銀行による景気刺激策に加え、世界中で財政刺激策が取られる可能性もあり、景況感は支えられるだろう。

関税については、発表と実際の発動状況に目を向けると、今のところ、トランプ大統領は自らの関税発言を守っているものの、関税が発動されるのは発表時よりも株価が高い時に限られている。つまり、トランプ政権は関税の経済的影響をある程度気にしている可能性がある。そのことは、直近の追加関税の発動が一部延期されたことでも確認できる。

全体として、経済データか企業収益データが安定するか、あるいは米中貿易紛争が本格的に収束に向かうまでは、我々は現在の投資環境で大きなリスクを取るわけにはいかない。とはいえ、さらなる景気減速に対抗するための金融・財政刺激策による効果や、リスク資産への投資を見送ることによるコストも考え合わせる必要がある。キャッシュ利回りと国債利回りは、インフレ率を当面下回ることが予想される。しかも、グローバル株式の益利回りと国債の実質利回りの差は、米国債との場合では2016年以来、ドイツ国債との比較では2013年以来で最も高い。

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