House View Weekly 米国の景気後退入りは間近か

貿易摩擦をめぐる不透明性を背景に最近、成長率や利益予想の下方修正が相次ぎ、年末の長期国債の利回り予想も引き下げている。債券市場は実際、景気の鈍化を織り込んでいるように思われる。米国10年国債利回りは米中の貿易摩擦が激化した8月初めの2%から低下しており、先週には一時、1.46%にまで落ち込んだ。

09 9 2019

今週の要点

1.景気鈍化は必ずしも景気後退の兆候ではない

経済成長率や企業収益、米国債利回りに関する予想が下方修正されたことを受け、先週は、景気後退をめぐる懸念が高まった。中国との貿易摩擦で景況感が悪化していることから、我々の予想では、米国の経済成長率は今年は2.3%、来年は1.3%に鈍化するとみている。しかし、経済成長が鈍っても、米国の景気後退入りは回避されるという我々の基本シナリオに変更はない。我々は現時点で、景気浮揚のため、米連邦準備理事会(FRB)が来年末までに25ベーシスポイント(bp)ずつ5回の利下げを実施すると見込んでいる。先週発表された米国の8月のISM製造業景況指数は、3年ぶりに好不況の節目である50を割り込んだが、同非製造業景況指数は上昇した。これにより、製造業は縮小するも、サービス業は底堅く、個人消費も堅調とする我々の見方が裏付けられた。貿易摩擦のさらなる激化がないかぎり、米10年国債利回りのこれ以上の急低下はないとみている(現在の1.6%から年末には1.5%程度になると予想)。中期的には、我々の基本シナリオが実現した場合は、米10年国債利回りは現在の水準前後のレンジで推移する可能性が高いと考える。無リスク資産の利回りが低いため、インカム創出機会を追求する。

要点:我々の戦術的資産配分では、一部の新興国通貨、米ドル建て新興国国債、欧州投資適格債をオーバーウェイトにしている。

2.合意なきブレグジットのリスクは、当面は後退

英上下両院は、欧州連合(EU)離脱延期法案を可決した。10月19日までにEUとの協定案で合意できなければ、離脱期限(10月31日)の延期をEUに要請するようジョンソン首相に義務付ける内容だ。ジョンソン首相が提案した総選挙の前倒しを求める動議は否決された。これにより、「合意なきEU離脱(ブレグジット)」の差し迫った脅威はひとまず後退し、短期的には英ポンドにとって好材料と考えられる。もし合意なきブレグジットとなった場合には、1英ポンド=1.15米ドルまたはそれ以下に押し下げられる可能性が高い。先週の両院での投票結果は、英ポンドを米ドルに対してオーバーウェイトとする我々の判断を裏付けた。しかし、ブレグジットの最終的な結末は、依然として予測が困難である。総選挙で保守党が勝利すれば、合意なきブレグジットの可能性が再び高まるおそれがある。一方、労働党が勝てば、2回目の国民投票が実施され、EU残留が選択される可能性も浮上する。さらに、議会でどの党も単独過半数を獲得できない(ハング・パーラメント)状態になれば、今後の道筋は不透明な状況が続くだろう。

要点:短期的には合意なきブレグジットの可能性が低下したため、我々は引き続き英ポンドを米ドルに対してオーバーウェイトに据え置く。しかし、ブレグジットをめぐる長引く不確実性を背景に、英国資産についてはボラティリティ(相場の変動)の高い状況が続くと予想する。こうした不透明性の高い局面を乗り切るには、高配当分散投資が有効な戦略と考える。

3. キャッシュへの逃避は答えではない

地政学的な不透明感に加え、株式相場の見通しも弱まっていることから、投資家は安定したキャッシュに逃避先を求めがちである。しかし、これは好ましい対応だとは言い難い。第一に、株価下落局面後に株式を購入するための「ドライパウダー(待機資金)」としてキャッシュを保有することは、リターンを損なう場合が多い。1945年以降、シンプルなバランス型ポートフォリオ(米国大型株60%、米国債40%で構成)で運用した場合、ポートフォリオが20%を超えて下落したケースは約5%にとどまる。市場のタイミングを図ろうとすると、一挙両損という結果になりがちである。つまり、高い機会コストに加え、さらに高い価格で買い戻さざるを得なくなる。第二に、キャッシュは短期的には価値が安定して保たれるが、下落相場の中で価値が上昇することがないため、「クライシス・アルファ(危機時に優れたリスク調整後リターンを獲得すること)」がない。最後に、キャッシュの保有は長期的には機会コストが大きくなる可能性がある。大半の国で預金金利がインフレ率を大きく下回るなか、キャッシュの購買力は時間とともに小さくなる。キャッシュの機会コストは株式益回り(欧州株式が7.4%、米国株式が5.7%)と比較すると特に大きい。キャッシュを保有することで、リスク資産から得られる潜在的なリターンの機会を逃すことになる。

要点:我々は、流動性を確保し、下落幅を抑えつつ、長期リターンを確保するための代替的な戦略を検討するよう勧める。分散投資はその選択肢の1つである。計画の作成も重要である。人生の様々な目標や目的に最適な投資戦略を策定するには、我々が提案する「Liquidity(流動性の確保).Longevity(老後への備え).Legacy(資産承継の準備).*」のアプローチが有効である。

*時間軸は様々です。戦略はお客様の長期目標、中期目標、適合性によって変わります。このアプローチは、資産構築あるいは何らかの投資利益の達成を約束または保証するものではありません。



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