高まる貿易摩擦、低下する金利

今週の要点

1. 貿易摩擦の悪化が追加利下げを促す可能性

トランプ米大統領は今月1日、現時点で制裁関税の対象となっていない3,000億米ドル相当の中国からの輸入品に対し10%の関税を課すと発表した。関税率はその後25%に引き上げられる可能性もある。両国が妥協点を見出す時間はまだ残されているが、新たな制裁関税が発動されれば、景況感と投資を押し下げる可能性が高い。そうなれば、米連邦準備理事会(FRB)が先週の25ベーシスポイント(bp)に加えて追加利下げを実施する理由にもなるだろう。景気減速に歯止めをかけるために、中国も金融・財政両面で緩和策を強化すると予想される。しかし、緩和策によって金融市場への影響も軽減されるだろうが、不確実性が晴れない限り、株価の大幅上昇は難しいだろう。低金利が長期化し株価がレンジ内で推移する環境においては、ポートフォリオのインカム向上が期待できる「キャリー取引」を検討することを推奨する。

要点:我々は地域を厳選した株式の戦術的オーバーウェイトと「キャリー取引」を推奨する。さらに、割安な水準に加え、市場が不安定な局面でポートフォリオを守る日本円へのエクスポージャーも維持する。

2. 1米ドル=7.0人民元は死守すべき防衛ラインではない

人民元は8月5日、対米ドルでほぼ11年ぶりに7元台を付け、株式と債券市場にも動揺が広がった。ハンセン指数と日経225はともに2%以上下落し、米国10年国債の利回りはアジア時間では異例の7bpの低下を記録した。しかし、我々は、1米ドル=7元突破で「死守すべき防衛ライン」を超えてしまったとはみていない。中国人民銀行は市場原理による米ドル/人民元の上昇は容認しつつも、元相場安定に対する市場の信頼を揺るがすことは望んでおらず、元安の進行ペースを制御していくものと我々はみている。人民元の下落は米国による関税の影響を緩和するが、資本流出には警戒しており、人民銀が意図的に元安の道を選ぶとは予想していない。

要点:投資家と起業オーナーには、人民元へのエクスポージャーへのヘッジを継続するよう勧める。短期的には元安が進むと予想され、我々は米ドル/人民元の3カ月予想を7.0から7.2に、6カ月を6.8から7.2に、12カ月は6.7から7.0にそれぞれ引き上げた。

3. 英ポンド安は「合意なき離脱」リスクへの過剰反応

英国のEUからの「合意なき離脱」懸念が英ポンドを圧迫している。英ポンドは7月に対米ドルで4.2%下落したが、これは月間の下げ幅としては2016年10月以来最大で、過去10年間でも7番目の下げ幅となった。市場では合意なき離脱は避けられないとの見方が強まっているが、これは過剰な反応だと我々はみている。ジョンソン首相がEUから(解釈変更ではない)実質的な離脱協定の修正を勝ち取る可能性は低い。しかし、合意なきブレグジットには英議会の過半数が反対しており、議会はジョンソン首相に離脱交渉期限の再延長要請を迫ると予想され、こう着状態の打開に向けて解散総選挙となる可能性もある。最終的な結末は依然として極めて流動的である。しかし、重要なのは10月31日の合意なき離脱をめぐる懸念が高いとはいえ、それが現実のものになる可能性は低いことである。

要点:短期的には英ポンドは売られすぎと考えており、我々は英ポンドを対米ドルでオーバーウェイトとする。短期的な英ポンドの下落に対してヘッジしてきた投資家はヘッジの解消を検討してもよいだろう。

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