日本株式 低金利環境の恩恵を受ける日本のREIT

東証REIT指数は直近高値から約50%下落し、TOPIXを最大で20%アンダーパフォームした。これは3月末に2019年度決算期末を控えた日本の金融機関の損失確定売りが一因であろう。REIT(不動産投資信託)セクターのファンダメンタルズは比較的安定しているにも関わらず、東証REIT指数の足元の分配金利回りは平均6%に上昇した。日銀がREITの年間買い入れ額を倍増したことも下支え要因となり、債券の代替投資先を求める投資家には魅力的だろう。

by 小林 千紗、居林 通 2020年 3月 24日
  • 東証REIT指数は直近高値から約50%下落し、TOPIXを最大で20%アンダーパフォームした。これは3月末に2019年度決算期末を控えた日本の金融機関の損失確定売りが一因であろう。
  • REIT(不動産投資信託)セクターのファンダメンタルズは比較的安定しているにも関わらず、東証REIT指数の足元の分配金利回りは平均6%に上昇した。日銀がREITの年間買い入れ額を倍増したことも下支え要因となり、債券の代替投資先を求める投資家には魅力的だろう。
  • 米連邦準備理事会(FRB)が金利をゼロ近辺まで引き下げ、世界的に低金利が続くと予想される。こうした低金利環境によりREITは恩恵を受けるとみており、足元の水準は売られ過ぎであると考える。我々は物流、住宅、および質の高いオフィスREITを推奨する一方、ホテルREITと大半の商業施設型REITを推奨リストから外した。

我々の見解

東証REIT指数は2月21日につけた直近高値から最大で49%下落しており、TOPIXの下落率(2月12日の高値から27%下落)を上回る下げ幅を記録した(図表1参照)。株価純資産価額(NAV)倍率はピーク時の28%プレミアムから世界金融危機以降で最も低い28%ディスカウントまで低下した(図表2参照)。その結果、予想分配金利回りは平均6.7%に急騰し、10年国債利回りとは対照的なパフォーマンスを示している。日本の10年国債金利は年内、そしておそらく来年にかけてもゼロパーセント程度が続くと予想される(図表3参照)。今後利回りを求める動きが加速する中でREIT市場に買いが増え、REITセクターはTOPIXをアウトパフォームすると考えている。

REITのディフェンシブで安定した特性を考慮すると、最近の株価下落と割安な状態は行き過ぎであると考える。REIT指数が急落したのは、地方銀行や保険会社等の金融機関が、3月期末を控えて保有するREIT銘柄の損失確定売りを急いだ、もしくは保有簿価が低いREITの益出しを行ったものと思われる。よって、期末が過ぎれば需給は落ち着いてくるものと考えられる。

投資口価格は大きく下落しているが、REITのファンダメンタルズは比較的安定して推移する公算が大きい。日本の構造的な労働力不足からAクラス(高立地・高環境)オフィスに対する需要は堅調で、東京都の空室率は1995年以降最低水準にある。今年のオフィスの平均月額賃料は、1桁後半の伸び率を示している。今後3四半期ほど企業業績は低迷するとみられるが、我々は世界的な景気後退に陥るとは予想しておらず、累積需要と年前半に落ち込んだことによるベース効果により、10-12月期(第4四半期)には企業業績は回復を予想している(図表4参照)。

我々のネガティブ・シナリオでは、新型コロナウイルスの感染封じ込め策が不十分で、5月あるいは6月になっても欧米で新規感染者数が増え続けるケースを前提としている(2020年3月19日付「UBS House View Monthly Letter」を参照)。この場合、将来的な月額賃料の下落によりオフィスREITが最も大きな影響を受けるだろう。我々は、賃料の1%の低下は、分配金支払額の2.2%減少へつながると推定している。一方、物流および住宅REITへの影響は比較的限られるだろう。

日銀は、3月16日の緊急金融政策決定会合でREITの年間買い入れ額を900億円から1,800億円へと2倍に引き上げることを決定したが、これも強力な下支え要因になろう。

REITのパフォーマンスは日本国債金利と逆相関を示す傾向にある。米連邦準備理事会(FRB)は3月3日に50ベーシスポイント(bp)、3月15日にも100bpの緊急利下げに踏み切り、誘導目標を0~0.25%に引き下げるとともに、新型コロナによる景気悪化に対処する緊急措置対策を講じており、当面世界中で低金利が続くと予想される。こうした金利予想の修正はREITに好材料になると考える(図表5参照)。

日銀がREITの買い入れ額を倍増

日銀は3月16日の金融政策決定会合で、REITの年間買い入れ額を900億円から1,800億円へと2倍に拡大しており(図表6参照)、これによりREIT価格の下値は限定的になると考える。REITの投資家にとっては、相対的に高い分配金利回りが期待できるだけでなく、債券代替として下値が小さいことも重要である。したがって、日銀によるREITの買い入れ増額方針は、REIT市場にとってポジティブと捉えられるだろう。

日銀はREITを個別銘柄として直接購入するため、買い入れ対象銘柄が格付けや流動性によって絞られることに注意が必要である。この点は、市場全体を対象とする上場投資信託(ETF)の買い入れと異なる。我々は日銀の銘柄選定基準を以下のように推定しており、特にオフィスREITについては上位銘柄に注目することを勧める。

日銀の買い入れ対象銘柄

  • 格付けがAA-以上(格上げされて新たに買い入れ対象となった場合、6カ月後から購入可能)
  • 適格銘柄は上場してから1年以上経過後に買入れ開始可能
  • 購入総額は、各銘柄購入日の引け値で計算した時価総額に対する割合に基づく
  • 各投資法人の発行済み投資口の10%に達した時点で購入を一時停止する(ただし、売出しにより新規投資口が発行された場合は買い入れを再開)
  • 債券が発行されているかどうか等、負債状況を考慮する

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