中国株式:2019年の振り返りと2020年の見通し

2019年の中国株式は、米中通商摩擦等で調整する局面はあったものの、良好なファンダメンタルズ等を反映し堅調な展開となりました。

ポイント

  • 2019年の中国株式は、米中通商摩擦等で調整する局面はあったものの、良好なファンダメンタルズ等を反映し堅調な展開。
  • 2020年は、中長期の経済目標の最終年に当たり、目標実現に向けて引き続き積極的な財政政策や緩和的な金融政策がとられると同時に、質の高い経済発展に向けた方針がとられると想定。
  • 主なリスク
    1. ダウンサイドリスク:第1段階の米中通商合意が実現せず、再び摩擦が激化する方向に傾斜すること等。
    2. アップサイドリスク:中国経済の高度化に伴う魅力的な投資機会拡大、米中通商問題の進展による投資家心理の改善等。

【米中通商摩擦を織り込みつつ、良好なファンダメンタルズ等を反映し堅調な展開となった2019年の中国株式】

  • 2019年の中国株式は、米中通商摩擦等のイベントで株価が調整する局面がありましたが、通商摩擦の経済への影響が織り込まれつつあることや、合意に向けた動きが見られ始めたこと、良好なファンダメンタルズ等から年初来では2桁の上昇となっています(2019年12月20日時点)。この間、中国政府は、外資規制の緩和等を定めた外商投資法の制定、上海・ロンドン・ストックコネクトの開始、ハイテク新興企業向けの新市場「科創版」創設等、市場改革を進めてきました。通商協議と並行して中国経済の高度化を進めていく方針と見られます(図表①)。

【図表①】2019年の主要国地域の株価推移(2018年12月末~2019年12月20日、現地通貨ベース)

2019年の主要国地域の株価推移(2018年12月末~2019年12月20日、現地通貨ベース)
出所:リフィニティブ、各種情報より当社作成。株価はMSCI指数、現地通貨ベース。基点を100として指数化。上記のデータは過去のものであり、将 来の動向を示唆、保証するものではありません。

【2020年、節目の年を迎える中国】

  • 中国にとって2020年は、①2016年に始まった第13次5ヵ年計画の最終年、②2020年のGDPを2010年比で倍増させるという中期目標の最終年、③中国共産党創設100周年(2021年)までに全面的な小康社会(ややゆとりある社会)を実現するという「第1の100年目標」の最終年にあたる節目の年といえます。
  • 12月に開かれた中央経済工作会議では、上記の目標を実現することの重要性が示され、2020年も積極的な財政政策、緩和的な金融政策、質の高い発展に注力する等、昨年と同様、安定成長維持に向けた取り組みを行う方針が決定されました。市場では2020年の経済成長率目標は6%前後になるとの見方が多いようです(2019年の目標は6.5%~6.0%、詳細は2020年3月の全国人民代表大会で公表される予定)。
  • 中国は、消費やサービス等の内需を中心とした経済に移行しています。所得の増加に伴い、消費行動は「生活の質」を重視する傾向が強まっています。同時に経済の高度化にも注力しています。人工知能(AI)を活用した医療や教育サービス、自動運転技術の開発等に注力している他、日本では商用サービスが始まっていない第5世代通信サービス(5G)では既に1,000万人が契約しているといわれています。
  • このように、経済の高付加価値化を進めていく中で、今後も投資魅力の高い企業が誕生すると考えられます。
  • 中国株式は図表②に見られるように、主要国・地域と比較して、予想利益成長率は高く、予想PERは低い状況で、投資魅力が高まっています。米中貿易問題に一定の方向性が見えれば株価が見直される余地が大きいと考えられます。

【図表②】予想EPS成長率、予想PERの推移(2017年12月末~2019年11月末)

予想EPS成長率、予想PERの推移(2017年12月末~2019年11月末)
出所:リフィニティブ、各種情報より当社作成。予想EPS成長率と予想PERはMSCI指数ベース。グラフ右の数値は2019年11月末時点。上記のデータは過去のもの及び予想であり、将来の動向を示唆、保証するものではありません。