不動産のサイクルはピークアウトへ
  • 世界の商業用不動産サイクルは、取引金額にも表れているように、流動性が大量に供給され、資金調達コストが低く維持されたことから長期化している。低金利の環境下、投資家は利回りを追求してきたことで、優良不動産の利回りは記録的な低水準で推移している。低金利の環境を踏まえると、負債比率が低い投資家、または資金調達が容易な投資家にとって、イールド・スプレッド(不動産と国債の利回り格差)は依然魅力的と考える。
  • 利回りまたは機会コストは中期的には大きく上昇しないとみている。家主が代替投資先不足から保有する不動産を維持し、投資活動は徐々に抑制されるだろう。
  • 不動産価格は既に高水準にあることからキャピタル・ゲインを期待することは難しく、賃貸利回りに着目することが重要と考える。数少ないニッチ市場は依然として魅力的なリターンが期待されるが、一方で負債水準を低く抑えることを勧める。
  • 新規供給と不動産ファンダメンタルズの悪化により賃貸料の伸び率は鈍化を続けていることから、入居率に着目することを勧める。市場に今参入する投資家の期待トータル・リターンは低下しており、デュレーション(金利感応度)リスクは高いと考える。
  • 米国、英国、欧州、ドイツ、スイス、シンガポール、ブラジルは、リスクに見合ったリターンが期待できるとみている。一方、カナダ、日本、中国、オーストラリア、香港の市場環境は好ましくないと考える。

不動産の期待トータル・リターンは低下

優良不動産への投資競争の激化が、優良物件の想定利回りの収斂のきっかけとなった。不動産価格は高止まりし、景気は減速していることから、サイクルの終焉に向けて家主は賃貸料ならびに不動産価格の上昇率の低下に対応する必要があると考える。

現在市場に参入している投資家の期待リターンは予想外の改修コストにより低下する可能性がある。賃貸料の伸び率が鈍化していることから、取引コストや維持管理費にも注意を向ける必要がある。また家主は借り換えリスクを抑制するために賃貸契約の期間ならびに借入期限の管理をして行く必要がある。

低金利の環境も手伝い不動産価格の下落は回避されており、急激な調整は予想していない。過去のサイクルに照らしてみると、投資家は依然として他の投資機会よりも不動産投資の方がリスクに見合ったリターンを追求することができるものと考える。

リスクとリターンの相対的関係

各市場の過去のデータと比較した現時点の魅力度を評価

出所: UBS、2019年5月現在

「グローバル不動産直接投資」は、不動産直接投資の対象となる世界の主要市場に関する年2回刊のレポートである。資産クラスとしての不動産は流動性が低いという特徴があるため、投資家は投資物件を少なくとも7-10年間は保有することを前提としている。同レポートでは投資機会を各不動産市場単独で評価しており、その他の資産クラスとの相対的な評価は行っていない。そのためCIO(チーフ・インベストメント・オフィス)の資産配分の枠組みの一部を構成するものではない。我々は下に示した3段階で市場を評価している。

魅力的:その市場に今日投資する投資家が7-10年の投資期間で魅力的なリターンを達成可能とみられる。

中立(均衡):現在の投資を続け、さらなる投資は厳選することを勧める。

魅力的ではない:現在の市場環境が魅力的でないため、投資比率を引き下げることを勧める。

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