• 日経平均はほぼ5 カ月前の水準まで低下している一方で、企業の業績見通しは改善しており、日本株式の魅力度は以前よりも高まっていると考える。
  • さらに、我々の銘柄推奨リストに掲載されている銘柄の一部は、今週初め(10 日週)の急反落で売られ過ぎたとみている。
  • 新型コロナワクチンの国内接種状況については、これからワクチンの輸入量が大幅に増え、 新たなワクチンについても今後数カ月以内に承認が下りる見通しであるため、接種ペースはまもなく加速するとみている。

我々の見解

年初からしばらくは際立つ強さを見せていた日本株式市場だが、最近の調整局面入りで日経平均は年初来の上昇分をほぼ失った(図表1 を参照)。この反落は、昨年12 月にリリースした日本株式レポート「バリュエーションから見ると上値が限られ始めた日本株市場」で指摘したとおり、バリュエーションの調整であって、業績見通しの低下によるものではないと考える。日経平均のバリュエーションは1 月時点の22.5 倍から足元では19 倍にまで低下している(図表2 を参照)。したがって、日経平均はほぼ5 カ月前の水準に戻る形となったが、業績見通しは従来よりも改善していることから、日本株式の魅力度はむしろ高まったとみている(図表3 を参照)。実際、12 カ月先予想EPS(1 株当たり利益)は年初来で13%上昇しており、PER(株価収益率)はほぼ同水準(%)だけ低下している。

さらに、我々の銘柄推奨リストに掲載されている銘柄の一部は、今週初め(10 日週)の急反落で売られ過ぎたとみている。 例えば、インドの四輪車市場でトップシェアを握る自動車メーカーは、インドの新型コロナ新規感染者数の急増で新車販売の伸び悩みが懸念され、この3 週間で株価が14%下落した。しかし、昨年前半の感染拡大第1 波の際にインドの工場からの出荷がほぼストップしたにもかかわらず、2021 年3 月期決算で同社は1,460 億円の当期純利益を計上している(前期比9.1%増)。まもなくインドでのワクチン接種も加速すると予想されることから、同社のインドでの四輪車事業も遠からず通常の成長軌道に戻るものと見込まれる。

同様に、アジアで生活用品ブランドを展開する小売り大手や、半導体パッケージ製造の世界大手の株価もこの3 週間で15%以上下落した。株価が下落した要因としては、主に次の4 つが挙げられる。

株価調整の4 つの要因

第1 に、米国でインフレ懸念の高まりから米ハイテク株が売られたことが、日本株の下げの大きな要因として挙げられる。

第2 に、中国の景気過熱感が意識され、中国の政府当局が経済成長の抑制策を打ち出すとの懸念が高まっている点である。

第3 に、グローバル投資家の多くがベンチマークとするMSCI ワールド指数の定期銘柄入れ替えが発表され、日本株29 銘柄が除外されたことである。この結果、日本の時価総額ウェイトは0.5 パーセントポイント低下する。現在、日本株の売買代金のうち7 割以上を海外投資家が占めているが、ウェイトの変動により日本株売買に占める海外投資家の比率も低下する見通しである。しかし、今回の銘柄除外はある程度予想の範囲内であり、これにより日本株の長期バリュエーションに変動が生じるとは考えていない。

第4 に、欧米に比べて日本のワクチン接種が非常に遅れていることである。5 月12 日時点で、1 回目の接種を終えた人は人口のわずか2.5%にとどまり、接種率はOECD(経済協力開発機構)加盟国のなかで最下位である。しかし、これからワクチンの輸入量が大幅に増え、 新たなワクチンについても今後数カ月以内に承認が下りる見通しであるため、接種ペースはまもなく加速するとみている(図表4を参照)。ワクチン接種が本格化すれば投資家の懸念はある程度緩和され、上述の売られ過ぎ銘柄も年後半には業績が安定するとみている。

ここ最近は売り圧力が強まっている日本株だが、1-3月期決算では総じて堅調な業績回復が確認されており、日本株式の魅力度は1月時点よりもむしろ高まっているとみている。さらに、各国の経済政策も当面は株式市場の下支え要因になるとみられる。よって、足元の調整局面は押し目買いの好機になると考える。

House View レポートの紹介


居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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