日本株式 ワクチン接種の前進が正常化の鍵

日本のワクチン接種の進捗は、米国や英国に大きく出遅れている。しかし、日本の正常化という投資テーマは依然として魅力的であり、最近の株価調整局面は買い場だと考える。2021年は大半のレジャーおよびエンターテインメント企業にとって転換点となるだろう。大きな打撃を受けた分、コロナ禍を乗り切った企業には、経済の正常化が進む中での累積需要と競争環境の改善が追い風となると考える。

by 居林 通、日本株リサーチヘッド、小林 千紗、アナリスト 2021年 4月 16日
  • 日本のワクチン接種の進捗は、米国や英国に大きく出遅れている。
  • しかし、日本の正常化という投資テーマは依然として魅力的であり、最近の株価調整局面は買い場だと考える。
  • 2021年は大半のレジャーおよびエンターテインメント企業にとって転換点となるだろう。大きな打撃を受けた分、コロナ禍を乗り切った企業には、経済の正常化が進む中での累積需要と競争環境の改善が追い風となると考える。

我々の見解

我々が2月上旬に日本の正常化という投資テーマを立ち上げた後、2月から3月上旬にかけて航空、小売り、ホテルといった内需関連株はアウトパフォームした。ワクチン接種の前進のほか、米国10年国債利回りが1%を切る水準から1.7%近辺まで急上昇する中で、投資家の物色対象がグロース株からバリュー株へと移行したことも、株価の追い風となった。一部の推奨銘柄では目先の好材料は概ね織り込み済みであるとの見方から、我々はそれら銘柄につき利益確定し、非推奨に変更した。

日本のワクチン接種の進捗状況は、米国や英国に大きく出遅れている。接種率は4月初旬時点で人口の1.1%に過ぎず、3月21日に緊急事態宣言が解除された後も、政府や東京都などは市民に外出自粛を呼び掛けている。主要都市のほとんどのレストランが営業時間を午後8時までとしており、5月の大型連休中の旅行計画をキャンセルした人も多いと報じられている。

だが、日本の正常化は投資テーマとして依然として魅力的であり、最近の株価調整局面は絶好の買い場だと我々は考える。理由は主に3つある。1つ目は、ワクチン接種のペースが6月から7月にかけて加速するという見通しだ。その頃までにはすべての医療従事者が2回目の接種を終えているだろう。2つ目は、年度替わりを機に企業利益の回復基調が鮮明となることだ。日本企業の多くは3月を事業年度末としているため、昨年の低調な業績に終止符を打ち、新年度の今後数四半期は好決算となる公算が高い。2021年半ばにはワクチン接種の加速が予想されることから、投資家の注目は新年度の利益回復動向に集まるとみている。3つ目は、円が米ドルやその他通貨に対して下落していることだ。円安は、世界経済の再稼働の恩恵を受ける銘柄にプラスに働く。

新型コロナウイルスによる国内レジャー産業への影響が予想外に長引いているが、2021 年は大半のレジャー、エンターテインメント企業が好転するだろう。大きな打撃を受けた分、コロナ禍を乗り越えた企業には、経済の正常化が進む中で累積需要と競争環境の改善が追い風となると考える。

日本のワクチン接種は5月以降加速する公算

日本の感染者数や死亡者数は多くの西欧諸国と比べるとかなり低い水準にとどまっており、これまでのところ感染の抑制に比較的成功していると言える。しかし日本のワクチン接種の進捗は多くの主要国に後れを取 っており、2020年4月14日時点で1回目の接種を受けた人口の割合は、世界平均が9.0%、米国では51%であるのに対し、日本はわずか1.1%にとどまっている。だが、5月からは供給増に伴い、ワクチン接種が加速しそうだ。日本経済新聞によると、5月からワクチンの月次供給量が3倍に増加し、7月までに人口の55%が2回の接種を受けられる見通しだ(図表1参照)。また、5月には日本でも第2、第3のワクチンが承認される見込みであり、さらに供給が増えるとみられる。政府は人口の120~170%に相当する3億1,000万回分以上のワクチン購入を契約済みである。日本は2022年のいずれかの時点で集団免疫を獲得できると期待されるが、他国と比べて感染率が著しく低いことやワクチン接種の緩慢な進捗を踏まえると、感染の封じ込めは2021年後半となるかもしれない。

新型コロナによる経済への影響

世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、世界の旅行業界の市場規模は、移動制限により2020年は4兆7,000億米ドルに半減した。国内旅行支出が45%の減少となった一方、海外旅行支出の落ち込みはさらに大きく、69%の減少となった(図表2参照)。日本でも2020年は観光業の低迷で1,380億米ドル相当の国内総生産(GDP)が失われた。前年比37%減に相当する数字だ。政府による観光支援事業「GO TO トラベル」の効果で国内旅行支出は30%減とやや食い止められたが、海外旅行支出は83%減少した。だが、日本が諸外国に比べて感染抑制に比較的成功していることや、ワクチン接種の加速見通し、安全衛生面での高い競争力(世界経済フォーラムの発表による)、日本が人気の旅行先に挙げられていること等さまざまな要因から、入国制限が解除された後は、日本は世界で人気の渡航先の1つになるとみている。

家計支出は大きく偏重

2021年1月の国内家計支出の内訳は、前年同月と比べて著しく偏重した内容となった(図表3参照)。コロナ禍で運輸、外食、娯楽向け支出が減少した一方、家庭での食品・飲料などの支出が増加した。2020年の月次の家計調査からは、大半のサービス支出が4月に底を打ったことが読み取れる。ワクチン接種の加速は年後半のサービス支出の回復を後押しするものと考える。

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居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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