• 我々は2020年4-6月期(第2四半期)末、第3四半期末、第4四半期末および21年第1四半期末のドル円予想をそれぞれ100円、102円、104円、104円(従来は108円、108円、106円、104円)に修正した。
  • 数カ月以内に米連邦準備理事会(FRB)は政策金利をゼロまで引き下げると予想されるが、日銀にはそこまでの利下げ余地はないだろう。したがって短期的にドル円は100円をうかがう展開になるとみられる。
  • 円を借り入れている投資家には、ポジションのヘッジまたは解消を検討するよう勧める。世界的にリスク回避姿勢が強まるリスク・シナリオでは、ドル円が一時的に100円を割り込む可能性も排除できない。

FRBがゼロ近辺まで利下げするとドル円は100円まで進むだろう

我々は、2020年第2四半期末のドル円レート予想を、これまでの108円から100円に(円高ドル安方向に)修正する。米連邦準備理事会(FRB)は3月3日に50ベーシスポイント(bp)の緊急利下げを行ったが、今後数カ月以内にさらに100ベーシスポイントの追加利下げを行い、政策金利を現行の1~1.25%から0~0.25%に引き下げると我々は予想している。世界的な需要後退やサプライチェーン混乱等の逆風に加え、原油価格の急落により石油・ガスセクターの経営環境もさらに悪化する見通しであり、こうした悪材料を緩和するためにはこの規模の大幅利下げが必要だと考える。今回の原油価格の急落により、インフレスワップの5年先スタート5年物フォワードレートでみた中期的な米国の期待インフレ率は、過去最低水準の1.2%近辺に低下しており、米国の期待インフレは低迷している。このことも、FRBが積極的な金融緩和を急ぐとみられる理由である。

新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の減速懸念により、輸出主導の日本経済には逆風がさらに強まっている。また、夏に開催が予定されている東京オリンピックが中止または延期されるリスクも高まっており、これも日本の景気の下押し材料となるだろう。これらを踏まえると、日銀は追加緩和に踏み切ると見られるが、マイナス金利に対する国民の抵抗感の高まりを考えると、日銀が現在の-0.1%からさらにマイナス金利を大きく深掘りする可能性はきわめて低いと考える。したがって、3月の金融政策決定会合では10bpの利下げに加え、ETFの買い入れ額を増額するとみている。日銀は超低金利政策の副作用を意識しており、今後は財政刺激策への依存度が高まると予想される。よって、今後数カ月以内にFRBが政策金利をゼロに引き下げる局面で、米ドルは短期的に100円程度に下落すると予想する。

だが、世界全体で経済成長が安定を取り戻し、市場のリスクセンチメントが改善するに伴い、ドル円は年末までに104円を目指すだろう。日銀は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の中で10年国債利回りの誘導目標をゼロ%程度に据え置く見通しであることから、年後半に景気が力強く回復すると想定すれば米金利は上昇に向かい、ドル高に振れるとみる。

中長期的には、ドルは円に対して引き続き割高

2021年3月末のドル円は104円と、ややドルの回復を見込んでいるが、長期的には、構造的な要因から円高基調という我々の見通しは変わっていない。日本円は非常に割安で、日本の経常収支は黒字が続いており、現在の金融政策スタンスは長期的に持続不可能である。これらのファンダメンタルズ要因はすべて中長期的な円高見通しの根拠となる。

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