• 2020年8月21日付日本株式レポート「第二の回復の波に乗る日本株式」以降、日本株式は約10%上昇し、日経平均株価は29年ぶりの高値を付けた。
  • 日本企業の7-9月期の業績は大幅に回復した。我々の基本シナリオにおける業績予想では、今期(2021年3月期)は7%減益と見るが、来期(2022年3月期)は40%の増益に修正した。
  • 日本企業は、世界経済の回復進捗と、米大統領選でのバイデン氏勝利ほぼ確定を受けた米中貿易関係の改善期待から恩恵を受けるものと見込まれる。

我々の見解

2020年8月21日付日本株式レポート「第二の回復の波に乗る日本株式」以降、日本株式は10%以上上昇し、日経平均株価は29年ぶりの高値を付けた。前回、日経平均株価が24,000円を超えて27年ぶりの高値をつけた2018年には、企業業績が過去最高水準でありピークに近いと考えていたため、我々は日本株に弱気の見通しを示した(2018年10月16日付日本株式レポート「険しい行く手」を参照)。現在、足元の日経平均株価の株価収益率(PER)は19倍と割安とは言えず、短期的には利益確定売りもあり得るが、次の理由から今後数カ月はもう一段高が期待できるだろう。

第一に、7-9月期の日本企業の業績は、昨年の水準は下回るものの、国内経済の活動再開と底堅い中国需要を受けて力強く回復している。新型コロナウイルス感染拡大が経済にとって脅威でなくなるまで、主要国の多くは経済対策を継続する用意があり、政府の対策の下支えにより2021年も企業業績の回復が続くとみている。

日本企業は、世界経済の回復進捗と、米大統領選でのバイデン氏勝利ほぼ確定を受けた米中貿易関係の改善期待から恩恵を受けるものと見込まれる。従って、我々は2021年度(2022年3月期)の純利益の伸びを40%増と予想する。

第二に、世界的にリスク選好度合いが回復しており、海外投資家による日本株の買い戻しが期待できる。海外投資家は上場している日本株式の約3割近くを保有する最大の投資主体だが、今年は年初から6.5兆円を超える大幅な売り越しとなっている。これは、2002年以降では、米中関係が悪化した2018年に次いで2番目の規模である。

海外勢については、今年の巨額な売り越しを今後買い戻す動きが進むと考えている。さらに、菅義偉首相は、新型コロナからの経済の回復を確かなものとするため、追加の経済対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案の編成を指示した。デジタル化や温暖化対策に重点を置き、日本企業によるデジタル技術の導入と気候変動への対応を加速する。菅首相は就任後初の所信表明演説でも、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするとの野心的な目標を掲げている。よって、2021年以降は、デジタル関連企業と気候変動対策に積極的なl企業が相場上昇のけん引役になるとみている。

株価評価(バリュエーション) 

TOPIXと日経平均株価の12カ月先業績予想に基づくPERは、それぞれ17倍と20倍で、10年平均の16倍、18倍をやや上回る。だが、2021年の力強い業績回復見通しに加え、追加経済対策も見込めることから、バリュエーションに極端な割高感はないとみる。また、不測の波乱が起きた時には、日銀の上場投資信託(ETF)購入プログラムが下支えするとみている。

日本株式は企業業績の回復を受けて上昇しており、今後6カ月で海外投資家の買い意欲が高まると予想する。我々は景気敏感株を推奨する。

House View レポートの紹介


居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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