日本株式 5Gが日本のデジタル化をけん引

今後、携帯端末で利用されるデータ量がさらに増加すると見込まれることから、数年以内に次世代通信技術「5G」の整備が必須となる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府や地方自治体では迅速な情報収集と情報共有が必要不可欠になるだろう。こうした状況に加え、ネットワークの安全性強化に対するニーズも高まり、5G 技術は今後数年で広く普及し、政府の支援策による強力な後押しも受けるものとみている。

by 居林 通、小林 千紗 2020年 8月 06日
  • 今後、携帯端末で利用されるデータ量がさらに増加すると見込まれることから、数年以内に次世代通信技術「5G」の整備が必須となる。
  • ネットワーク上で扱うデータ量がなぜ、どのようにして増えているのかは、クラウドサーバーの例を取ると良く理解できる。オンライン・ビデオゲームなど、クラウドサーバー上で処理される計算量が増えるにつれ、携帯機器には高度な計算処理能力は必要ではなくなるかもしれないが、通信の高速化は不可欠となるだろう。
  • 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府や地方自治体では迅速な情報収集と情報共有が必要不可欠になるだろう。こうした状況に加え、ネットワークの安全性強化に対するニーズも高まり、5G 技術は今後数年で広く普及し、政府の支援策による強力な後押しも受けるものとみている。

5G技術がなぜ重要なのか?

一言で言えば、近い将来、社会はより多くのデータをモバイル・ネットワーク上でやり取りする必要が出てくるからである。Cisco VNIによると、2014年以降、モバイル・ネットワーク上で送受信されたデータ量は約13.7倍に拡大しており、今後2年間でさらに87%増加すると予測されている。インターネット上で送信された総データ量のうちモバイルデータは20%近くを占めると予想され、年間増加率は約20~30%と見込まれている(図表1参照)。

加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で、働き方など我々の行動様式が大きく変化した。在宅勤務がかつてないほどに増えており、東京の企業におけるリモートワーク導入率は新型コロナ危機前の24%から62%に急上昇している。こうした大きな変化を受けてインターネット上のデータ量はすでに急増しており、クラウドサーバーへのアクセス数はコロナ危機以降で18~20%増加した(NTTデータの推計による)。5Gの最高伝送速度は4Gの約100倍だが、これはデータアクセスの速度が100倍になるわけではない。近い将来、携帯端末で送受信できるデータ量が100倍になるということだ。10年前は特別な機材が必要なためテレビ会議を行うことは非常に困難だったが、4G技術のおかげで携帯端末でもテレビ会議が可能になり、その結果、データトラフィックが急増した。今後、携帯端末で利用されるデータ量の更なる増加が見込まれるため、今後数年以内に5Gの整備が必須となる。アクセス速度の高速化で、より多くのデータトラフィックを要する先進オンラインサービスも利用できるようになるだろう。

ネットワーク上で扱うデータ量がなぜ、どのようにして増えているのかは、(オンライン上のサーバーで計算を行う)クラウドサーバーを例にとると良く理解できる。ローカル機器や端末ではなく、オンライン・ビデオゲームなどの様にクラウドサーバー上で処理される計算量が増えるにつれて、携帯機器には高度な計算処理能力は必要ではなくなるかもしれないが、通信の高速化は不可欠となるだろう。

音声認識や仮想現実(VR)/拡張現実(AR)等の先進テクノロジーも新たなオンラインサービスを生み出し、データ送受信のニーズを加速するだろう。ここでもデータトラフィックの伸びは一段と加速するとみられる(図表1参照)。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府や地方自治体では迅速な情報収集と情報共有が必要不可欠になるだろう。こうした状況に加え、ネットワークの安全性強化に対するニーズも高まり、5G 技術は今後数年で広く普及し、政府の支援策による強力な後押しも受けるものとみている。(下表参照)。

5Gと4Gの違いは何か?

5Gには4G携帯通信にはない、1)超高速伝送、2)多数同時接続、および3)低遅延性という3つの特徴を備える。

世界中で5Gが普及すると、多数同時接続と超高速データ転送によりスマートフォン等の携帯機器に新たな機能が登場すると期待される。

前段で、5Gデータ伝送がアフターコロナの社会にいかに影響を与えるかを説明したが、5Gにはさらに多数同時接続と低遅延性という2つの特徴がある。モノのインターネット(IoT)では、大規模工場内の複数のラインで稼働するさまざまなオートメーション機器を同時にモニタリングするため、5Gの多数同時接続と低遅延性も必要となる。

IoTの活用事例には、リアルタイムでの健康モニタリングも挙げられる。健康状態が悪化している兆候が検知されると、IoT機器から登録されている通知先にアラートが送信される。

また5Gを活用すれば、オフィスワーカーは柔軟に働く場所を選ぶことができる。新型コロナの感染拡大を受けて、在宅勤務を推進する企業が増えているが、5Gによる高速・大容量のデータ通信が可能になれば、在宅だけでなく自宅以外の場所で働く人も増えると考える。

このように、5Gはさまざまな点で我々の日常生活を変え、「コネクティビティ(接続性)」が新たなバズワードとなるだろう。5Gで働き方や情報配信の方法が変わり(テレビやラジオの依存度が低下)、人と機器がよりシームレスにつながる。たとえば5G技術を使って、自宅の電子機器を遠隔で操作したり、体温や血圧をモニタリングしたり、生中継のサッカーの試合をオンラインで視聴する等、さまざまな独自機能を新しい機器で利用できるようになるだろう。

新型コロナの感染拡大で、多くの人と同時に情報を共有する必要性が一段と意識されるようになった。情報を収集し、広めるうえで、携帯機器はアフターコロナの生活様式にとって不可欠なものになると考える。今後、政府による携帯機器を利用した交通規制に関する情報提供や、事業主や住民に対する給付金支給等が一般化するかもしれない。政府や地方自治体が5G技術を基盤とした新しい情報共有の枠組みを構築し、スタートアップ企業に対する5Gネットワークの割り当てを加速する可能性もあると我々はみている。日本における5Gネットワークの本格的な商用化は2021年上期になると見込む。

政府の強力な支援で5G導入スケジュールを前倒し

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は5Gネットワークインフラの展開計画を前倒しすることを決めた。現在、2023年度末までに、当初計画の3倍となる21万局の5G基地局整備を目指している。先ごろ政府が発表した支援策には、5Gネットワークインフラへの投資を進める企業に対する15%税額控除や、デジタル・トランスフォーメーションへの政府支出が含まれる。また数カ月以内に、5Gネットワークインフラの整備加速に向けた規制緩和も行われる見通しだ。こうした支援策が5Gの円滑なサービス開始を後押しし、数年以内に5Gネットワークの全国展開が加速するものと考える。

日本で恩恵を受けるのはどのような企業か?

5Gへの移行で恩恵を受ける企業は、主に電子部品メーカー、通信事業者、そしてオンラインサービス・プロバイダーの3つだと考える。国内携帯大手3社は、5Gネットワークの高い効率性を利用できる有利な立場にあり、今後、収益拡大が見込まれる。また、5Gネットワークの普及でサービス・プロバイダーにも新たな参入分野が開けると考えている。

今後1-2年以内に世界中で5G技術が展開されると予想される中、いち早くその恩恵を受けるのは5G対応の携帯電話端末メーカーだろう。ここ10年間でスマートフォンには様々な新機能が搭載され、カメラや地図の代わりを果たしてきたが、いまやビデオプレーヤーとしても使用されるようになっている。また、国や地域によって仕様が異なるため、5G携帯の電子回路基板設計はこれまで以上に複雑化しており、4Gに比べて端末当たり30~50%ほど多くの電子部品が必要になる。多数の小型電子部品が必要な5G端末への移行は、特に日本の電子部品メーカーには追い風になると考える。電子部品を埋め込むデバイスのスペースは限られているため、各部品には小型化、多機能化が求められるが、この分野では、日本の電子部品メーカーが海外の競合他社に対して技術的優位性を維持しているとみられる。

また、政府は、来年開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピックに合わせて、2021年に5G携帯通信システムの本格的な商用化を開始したい考えだ。5G通信システムは新型コロナウイルスの感染拡大封じ込めだけでなく、東京五輪の模様をお茶の間の多くの視聴者に向けて放送するうえでも重要な役割を果たすだろう。こうした支援材料から、通信事業者もまた5Gの恩恵を受けると考える。2021年に5Gシステムの本格運用が始まれば、通信事業者はおそらく2023年までに3Gのサービスを終了する見通しであり、維持費などの運用コストの低減にもつながるだろう。

5Gネットワークにより、企業は新型コロナの感染拡大をきっかけに新たに生じた需要にも対応が可能になると考える。例えば、不動産会社では遠隔内見の必要性が出てくるかもしれない。購入を検討している利用客が現地に足を運んで実際に確認する前に、オンラインで物件を内覧できるからだ。今後、オンライン接客の技術に投資する企業が増えるとみられ、こうした接客のデジタル化にも5Gの超高速・低遅延ネットワークが必要となるだろう。


5G技術が普及するようになると、プライベート5Gネットワークの提供も開始されるだろう。プライベート5Gネットワークでは、特定企業・自治体等が特定エリア内で5Gネットワーク周波数を利用することが可能になる。プライベート・ネットワークを構築することで、企業や自治体は確実に安全なネットワークを確保できる。例えば、地方自治体はプライベート5Gを利用して無線ネットワークでのトラフィック負荷のモニタリングが可能となり、従来のモニタリング・ネットワークに比べて設備の構築や保守費用の低減化と高い柔軟性を実現できる。

また、あるエリアに製造工場を数多く所有している企業の場合、プライベート5Gネットワークによってすべての製造ラインを互いに接続できるため、ローカルLANやWi-Fiによる接続よりも効率的に複数の製造ラインを管理することが可能になる。

製品のライフサイクル

消費者は毎年何百万もの製品を購入するが、大半がインターネットに接続されていないため、新機種が出るたびに陳腐化していく。仮に家電などの製品に5Gチップが組み込まれていれば、企業はユーザー体験を追跡し、それに応じてソフトウェアを更新できる。これにより製品の機能性を最新の状態に保つことができ、製造業にも大きな変化をもたらしうる。最終的には顧客の体験や行動が、それぞれのデジタル端末のタッチポイントでリアルタイムに追跡、記録、最適化されるようなり、商品開発から受注、使用、廃棄に至るまでの製品のライフサイクル全体で、最も効率的に5Gサービスの収益化が実現できると我々は予想する。5Gは多くのIT/家電分野で市場シェアを落としている国内メーカーに新たな機会と課題をもたらすだろう。

株式バリュエーション

2020年4月以降、テクノロジーセクターは力強いパフォーマンスを示している。その結果、ITセクターのバリュエーションは15年ぶりの高水準に跳ね上がっている。この株価水準の急上昇はITサービス企業と半導体企業の株価上昇にけん引されたと考える。一方、我々の5Gテーマ投資銘柄の大半のバリュエーションは過去10年間の平均近辺で推移しており、短期的な好材料をまだ完全に織り込んでいないとみる。また、我々の5Gテーマ投資銘柄の純負債比率は平均35%と、バランスシートが健全である。5Gネットワークは通常、運用開始までに複数年に及ぶ初期投資が必要とされるため、この投資テーマにおいて財務安定性は重要な要素であると我々は考えている。

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居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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