• 2020年1-3月期の日本企業の純利益は、新型コロナの感染拡大による影響で前年同期比77%減となった。
  • だが新型コロナによる混乱はひとまず落ち着きつつある。安倍内閣は5月25日に緊急事態宣言を全面的に解除し、新規感染者数もここ数週間は低水準にとどまっている。
  • 政府の追加経済対策や民間消費の年後半以降の回復見通しなどから、我々は企業利益予想を修正した。

我々の見解

2020年1-3月期(第4四半期)の日本企業の純利益は、新型コロナの感染拡大による影響で前年同期比77%減となった。資産評価損を中心に1兆5,000億円に上る特別損失が発生した。だが新型コロナによる混乱はひとまず落ち着きつつある。安倍内閣は5月25日に緊急事態宣言を全面的に解除し、新規感染者数もここ数週間は低水準にとどまっている。我々は、2021年3月期決算で特別損失がさらに増える可能性は低いと考えている。

我々は業績予想モデルと経済成長率の前提を見直し、企業業績予想を修正した。新たな予想は、2021年3月期の純利益を前期比マイナス6%(従来予想はマイナス18%)、2022年3月期を同プラス34%(同プラス62%)とする(図表1)。政府の追加経済対策や民間消費の年後半以降の回復見通しを織り込んだ。安倍政権は第1次補正予算に続き、事業規模が過去最大となる第2次補正予算案(財政支出は国内総生産(GDP)比約6~7%と予想)を公表した。2回の補正予算には国民1人当たり10万円の現金給付、緊急事態宣言発令中に休業手当を支給した企業に対する雇用調整助成金などが盛り込まれており、こうした経済対策の後押しにより年後半には民間消費が持ち直すとみている。

とは言え、上方修正後の2021年3月期利益予想に基づいても、足元の株価水準は、株価収益率(PER)で見て日経平均株価は17倍台、TOPIXは同13倍台と、いずれの指数も過去10年平均をやや上回る。また両指数とも世界の主要株式市場の平均を若干上回っている。日経平均株価は年初から31%下落した後20%以上を戻す一方で、年初に我々が予想していた企業利益水準に戻るのは1年半後になるとみている。よって、日本株式の上値余地は限られると考える。図表3の通り、4月に売られ過ぎた株式の多くは5月に回復しており、投資家には割高なディフェンシブ銘柄を回避することを勧める。

図表4からは、ディフェンシブ、ハイテク、資本財、消費支出(UBS CIOの定義に基づく)の4つの市場セクターの値動きがまちまちであることが見て取れる。ハイテク銘柄が最近の市場の戻りをけん引する一方、資本財や消費支出関連銘柄はベンチマークから10%以上出遅れている。だが、この2つのセクターは、日本経済(および多くの諸外国経済)が再開して民間消費が底打ちするに伴い、今後半年にかけて妙味のあるセクターになると考える。

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居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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