• 日経平均株価は年初から31%下落した後、各国の中央銀行と政府による迅速な流動性供給と財政刺激策を受けて15%ほど値を戻した。
  • 足元の日経平均株価とTOPIXは、株価収益率(PER)と株価資産倍率(PBR)のいずれから見ても適正な水準にあると考える。
  • 当面はボラティリティ(変動率)が高い相場が続くとみられるため、新型コロナの経済的なダメージを踏まえて業界内での勝ち組候補を慎重に選別する必要があると考える。株式市場が上昇の第二波に向かう中、投資家には銘柄選別的な投資を勧める。

我々の見解

日経平均株価は年初から31%下落した後、各国の中央銀行と政府による迅速な流動性供給および財政刺激策の効果・期待感から15%程度値を戻した。日銀は年間の上場投資信託(ETF)の購入目標額を12兆円に倍増し、政府は国民1人当たり10万円の現金給付を含む、過去最大の補正予算を発表した。

こうした対策により、世界金融危機を彷彿とさせる金融メルトダウンが回避され、ここ1カ月の株価反発につながったものと考える。だが当面はボラティリティが高い不透明な相場状況は続くだろう。市場の注目は特に企業業績に向けられているが、足元の株価の戻りは時期尚早で、ペースも早すぎた可能性がある。短期志向の投資家は、早々に利益確定に回り始めるかもしれない。

3月2日付日本株式レポート「押し目買いに備える:下値は限定的」と3月17日付日本株式レポート「日本株が売られ過ぎである3つの理由」を発表して以降、絶対リターンの視点から、我々は日本株式に対して強気な見方を維持しており、相場の激しい変動に後れを取らないよう日本株推奨リスト(EPL)を機動的に変更している。図表1の通り、年初から30%程度下落した日本株式は、いま半値戻しの水準にある。足元の日経平均株価とTOPIXは、株価収益率(PER)と株価資産倍率(PBR)のいずれから見ても適正な水準で取引されていると考える。日経平均株価の12カ月先業績予想に基づくPERは、3月中旬の13倍から足元で17倍近辺まで回復している(図表2参照)。

今度は市場の次の動きに目を向ける時である。世界経済に対する我々の基本シナリオ(5月中旬以降、各国で規制が徐々に解除されると想定)では、株式市場は来年にかけて引き続き上昇すると予想しているが、上昇の第二波が始まるまでにはもう少し時間が必要かもしれない。それにはまず、企業の収益回復が鮮明化する必要がある。緊急事態宣言や店舗営業自粛の解除、日本や主要国での新規感染者数の減少もそうした第二波到来のきっかけになる。これらの時期を予測するのは難しいが、我々は引き続き4-6月期(第2四半期)が企業利益の底になるとみており、同四半期のTOPIX500構成銘柄の利益成長は9年ぶりにマイナスとなり、純利益は四半期で2兆円の赤字の水準まで低下すると予想している(図表3参照)。

だがその後、日本の企業利益は世界金融危機時を上回る早さと規模で持ち直すと考える。注目すべきことは、当時と異なり、日本の金融システムが健全なことである。そのため、政府の特別支援措置(約1兆6,000億円)や日銀の社債買い入れプログラムを通じて金融機関が潤沢な資金を提供できるため、中小企業はこの2-3カ月間を持ち堪えられるとみている。

さらに、中国での生産や消費の復調は日本の多くの製造業に後押しとなるため、3月以降の中国経済の堅調な持ち直しも、年後半の日本の景気を下支えするとみられる。我々が懸念しているのは、自動車や電気部品といった製造業ではなく、むしろ小売りや外食産業のような従来型の日本のサービス業者である。こうした業種は固定費が高く、コロナ感染拡大抑制策に伴う移動制限の影響で深刻な打撃を受けている。一方、日本の製造業は過去に何度も経済的な混乱を経験しているうえ、中国が比較的早く回復していることも追い風になる。

House View レポートの紹介


居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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