• 我々は、グローバル資産配分でユーロ圏株式に対して日本株式をオーバーウェイトにしていたが、このポジションを解消する。
  • 新型コロナウイルスの感染拡大が2020年1-3月期(第1四半期)の企業利益に重石となり、今後数四半期先まで不透明感が残るだろう。だが、新型コロナウイルスの影響は重大ながらも、一時的なものにとどまると考える。
  • 日本株式の投資家には、銘柄を厳選して投資することを勧める。配当の質の高い銘柄や、米中貿易協議の第1段階合意の署名後も株価の戻りが遅い企業を推奨する。

我々の見解

2019年12月30日付の日本株式レポート「強気に振れたセンチメントの今後を占う」の中で、大半の好材料は織り込み済みであり、今後3~6カ月は上値余地が限られると指摘していた。日経平均の株価収益率(PER)が過去10年間の平均を大幅に上回っており、海外投資家の投資対象は日経平均の構成銘柄である大型株が中心で、TOPIXや広く他の市場の銘柄にまで広がっていないからである。そのため、我々は配当の質の高い銘柄に注目し、投資家心理が反転し株式バリュエーションが低下する局面に備えた。

2020年は年初から、新型コロナウイルスの感染拡大とそれを受けた中国の工場閉鎖が日本株式を襲った。だが、最近の日本株式の冴えないパフォーマンスは、コロナウイルス以前の2019年第4四半期(10-12月期)の企業利益が落ち込みはじめ、純利益が対前年同期比で6%減となったことも要因である。純利益は2018年第4四半期に前年同期比27%減少していたことを考慮すると、2019年第4四半期もさらに6%低下したのは予想外の悪材料だった。さらに、2019年第4四半期の国内総生産(GDP)成長率が前期比年率換算で-6.3%となったことも、海外投資家にとっては想定外だったかもしれない。このマイナス成長は、昨年10月に日本を襲った大型台風による記録的な被害や暖冬による影響が大きい。しかしながら、今後発表される2020年第1四半期決算には新型コロナウイルスの感染拡大による悪影響が影を落とす公算が大きく、今後2~3四半期にわたりさらに不透明さが増すとみられる。

では、株式市場は回復するだろうか?我々はその可能性は高いと考えるが、投資家は銘柄を慎重に選び、適切な投資タイミングを見極める必要がある。大半の日本企業は決算期末を3月末としているため、新型コロナウイルスの影響の大半は今期中に現れ、2021年3月末に終了する事業年度(2021年夏に開かれる東京オリンピック期間が含まれる)には企業利益が回復すると予想する。

2019年第4四半期(10-12月期)には企業利益がすでに悪化していたため、一部で見送られていた消費や設備投資が持ち直す可能性があることから、2020年後半には企業利益は10~15%成長すると期待される。株価がいますぐV字回復するとみるのは時期尚早だが、年後半にその可能性はあると考える。

House View レポートの紹介


居林通

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィス
ジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド


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