日本経済 3月に予想される日銀政策変更は出口戦略の第一歩となるか?

日銀は21日の金融政策決定会合で、予想通り、現行の金融政策の維持を決定した。だが市場の関心は既に、次回3月の決定会合に移っている。次回会合では、金融政策の「点検」結果を踏まえ、政策変更が行われるものと見込まれる。

2021年 1月 22日
  • 日銀は21日の金融政策決定会合で、予想通り、現行の金融政策の維持を決定した。だが市場の関心は既に、次回3月の決定会合に移っている。次回会合では、金融政策の「点検」結果を踏まえ、政策変更が行われるものと見込まれる。
  • 日銀は、政策運営の持続性を高めつつ、副作用を緩和するため、上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の購入ペースの見直し、10年国債利回りの許容変動幅の拡大、中長期的な成長力の強化に向けた貸出支援プログラムの強化などを行うものと予想される。
  • しかし、こうした政策修正は、必ずしも金融政策の枠組みが早期に変更される可能性を示唆するわけではなく、市場への影響は限定的と考える。

日銀は21日の金融政策決定会合で、予想通り、現行の金融政策の維持を決定した。同日に発表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、1月8日の緊急事態宣言の再発令(2月7日までの予定)を受けて、2020年度の国内総生産(GDP)の成長見通しを下方修正したが、好調な輸出と設備投資関連指標の改善を踏まえ、日本経済の回復について強気の見通しを維持した。

市場の関心は既に、次回3月の決定会合に移っている。3月の会合では、現在の金融政策の点検結果を踏まえ、政策運営の持続性を高めるために政策変更が行われるものと見込まれる。我々の予想では、1)上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買入上限の撤廃(現在はそれぞれ年間最大で12兆円と1,800億円)、2)概ねゼロ%を誘導目標とする10年国債利回りの許容変動幅の拡大(現在は±0.2%)、および、3)中長期的な成長力の強化に向けた貸出支援プログラムの強化、を行うとみている。

こうした政策修正は、必ずしも金融政策の枠組みが早期に変更される可能性を示唆するわけではなく、市場への影響は限定的と考える。新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて、2%のインフレ目標の実現には想定以上に時間がかかる可能性があるため、日銀は金融政策の持続性を高める必要がある。

1. 政策修正は、量的緩和の縮小または出口戦略へ向けた第一歩を示唆するのか?

我々はそうは考えていない。上述の政策修正の目的は、副作用を緩和しつつ市場情勢に応じて柔軟に対応することで金融政策の持続性を高めることだと考える。新型コロナウイルスの影響で2%のインフレ目標の実現が遠のいていることから、日銀は金融緩和を長期化する必要がある。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に基づき、国債の買い入れは既に柔軟に行われている(図表2参照)。だが今後は、市場情勢に応じて10年国債金利の誘導目標からの乖離を許容することにより、イールドカーブ・コントロールの副作用軽減を目指す考えだとみている。

2. ETF/J-REITの買い入れペースは政策変更に伴い縮小するか?

これについては、市場情勢によるところが大きいとみている。現在の買い入れペース目標が撤廃されたとしても、相場が急激かつ急速に下落する場合には、日銀はETFを積極的に買うことができる。日銀は既に東証1部時価総額の7%近くを保有しているため、買い入れプログラムの拡大と市場の流動性向上には、足元のETFとJ-REITの買い入れペースを調整する必要があると我々はみている。

3. 変動幅の拡大で10年国債利回りは上昇するか?

米国債利回りと日本のインフレ率が低位にとどまる限り、日本国債の利回りが急上昇することは考えにくい。10年国債利回りの許容変動幅を拡大したとしても、ゼロ%程度という誘導目標は変更されないだろう。賃金上昇ペースが鈍く、企業が価格引き上げに慎重であるため、日本のインフレ率は抑制された水準で推移する公算が大きい。生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)は、対前年比ではプラスに転じるだろうが、2021年末でもまだ+0.4%程度にとどまるとみている。また、我々の金利チームは、2021年の米国10年国債利回りは約1.1%で推移するものと予想している。我々は2021年の日本の10年国債利回り予想をゼロ%近辺に据え置いている。

4. 日銀の新たな貸出支援プログラムにより設備投資は増加するか?

長期的なGDP成長を見据えてデジタル化やグリーン投資を後押しする新たな貸出支援プログラムは、関連分野の設備投資を下支えするだろう。コロナ禍でも2020年の失業率はわずか0.5ポイント上昇の2.9%であり、深刻な労働力不足から、企業には労働生産性改善のための設備投資を増やす大きなインセンティブがある。また、菅内閣が進めるデジタル社会やカーボン・ニュートラル(脱炭素)の実現に向けた政府補助金や税務上の優遇措置も、企業による関連設備投資を促すと見込まれ、日銀の貸出支援プログラムとのシナジー効果が期待できよう。我々はソフトウェア投資(デジタル化を含む)が2019年の10.3%増、2020年の10%増に続き、2021年には15%増加すると予想する一方、設備投資全体の伸び率は2020年に7.2%減少した後、2021年は+4.0%に持ち直すとみている(図表5参照)。

5. 市場にはどのような影響があるだろうか?

ETFの購入ペースの鈍化や日本国債の利回り上昇に対する懸念から、短期的に市場が嫌気する可能性がある。だが上記で説明したように、こうした悪影響はあったとしても一時的だろう。

これら政策の修正後でさえも、低いインフレ率に加えて米国10年国債金利の上昇幅が限定的であることから、日本の2021年の10年国債利回りはゼロ%近辺で推移するとみている。グローバル景気の回復が進む中、円は米ドルに対して緩やかに下落する可能性があり、2021年末のドル円は107円と予想する。日本株式については、5G(第5世代移動通信システム)やグリーンテック関連企業が政府や日銀による支援の恩恵を受けるだろう。日本株式については「5Gが日本のデジタル化をけん引」や「日本のグリーンテックの投資機会」などのテーマを推奨する。また、2月下旬からワクチン接種が始まる見通しであることから、サービス支出の回復見込みが追い風となる企業にも注目したい。

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