日本経済 スガノミクスの焦点は何か?

菅義偉官房長官が自民党総裁選で勝利したことにより、金融および財政政策が継承されるとの期待から、市場に幾分安堵が広がると予想される。菅氏は経済刺激策として、行政のデジタル化、地銀再編、観光業のてこ入れに注力すると公約している。生産性の向上がスガノミクスにとって重要な焦点となる。ドル円への影響は限定的な公算が大きい。日銀は当面緩和的な政策を維持するだろう。

by 青木大樹、居林通、細野光史 2020年 9月 15日
  • 菅義偉官房長官が自民党総裁選で勝利したことにより、金融および財政政策が継承されるとの期待から、市場に幾分安堵が広がると予想される。
  • 菅氏は経済刺激策として、行政のデジタル化、地銀再編、観光業のてこ入れに注力すると公約している。生産性の向上がスガノミクスにとって重要な焦点となる。
  • ドル円への影響は限定的な公算が大きい。日銀は当面緩和的な政策を維持するだろう。
  • 菅内閣は日本企業に支援的な現在の政策を維持するとみられ、企業利益は2022年3月期に41%増加すると見込まれる。

大方の予想通り、菅義偉官房長官は自民党の両院議員総会で、有効投票数534票の7割に当たる377票を獲得し、圧勝した。市場はこの結果に冷静な反応を示し、14日の日経平均株価の終値は前日比0.65%高にとどまる一方、ドル円は106円近辺で推移した。

菅氏は9月16日に正式に首相に指名され、同日に新内閣が発足する。安倍政権を継承する姿勢から重要閣僚は再任されるとみられるが、何人かは新しい顔ぶれが入閣する可能性がある。その後、菅氏が解散総選挙に踏み切るかどうかが問題だ。衆院議員の任期は2021年10月までだが、衆議院選挙を前倒しで行えば、自民党は公明党と合わせて国会で半分から3分の2の過半数議席を確保できる可能性がある。ここ数週間で内閣支持率が20%ポイントほど上昇していることもあり、新型コロナの状況次第では年後半に総選挙が前倒しで行われる可能性が高まったと考える。

菅氏の勝利により、金融および財政政策が継承されるとの期待から、市場に幾分安堵が広がると予想される。総裁選の際、菅氏は黒田日銀総裁の手腕を高く評価した。また、少なくとも今後10年間は新たな消費増税が見送られそうなことにも我々は注目している。菅氏は行政のデジタル化を進めて非効率性を解消し、幅広く景気を刺激すると公約した。さらに、地銀再編や観光業のてこ入れにより中小企業や地方経済を活性化させるとも述べている。生産性の向上がスガノミクスの重要な焦点となる。

外交政策では、安倍首相が確立した米国との関係を支持しながら、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や東アジア地域包括的経済連携を通じて、アジア域内での経済協力を一段と重視するものと予想する。

アベノミクス下で推進された大方の財政および金融政策は継承されるとみられるため、ドル円への影響は限定的だろう。また、日米国債の利回り格差は安定しているため、ドル円相場は過去数週間、狭いレンジで推移している。米連邦準備理事会(FRB)と日銀はともに、インフレ率が物価目標を一定期間上回ることを容認する姿勢であり、両中銀は当面緩和的な金融政策を維持するとみられる。中期的には全面的な米ドル安を予想しており、米ドルの上値は107-108円近辺となる一方、下値のめどは100円だろう。よって、レンジ取引戦略に妙味があるとみる。

我々は、菅政権が日本企業に対する現在の支援的な政策を維持し、今後数年間は補助金を積み増して民間需要の押し上げを図ると考える。

直近3カ月の日本株式市場の特徴は、海外投資家と日銀という異なる2つの投資主体だ。海外投資家は今年最大の日本株式の売り手であり、5兆5,000億円(520億米ドル)を売却する一方、日銀は5兆6,000億円を買い越している。我々は、日本企業の当期利益については2022年3月期に対前年比で41%増益と、ほぼコロナ危機前の水準に回復すると予想しており、海外投資家が質の高い割安な消費財銘柄や景気敏感株を拾いに日本株式に回帰すると考えている。

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青木大樹

UBS証券株式会社 ウェルス・マネジメント本部
チーフ・インベストメント・オフィス
日本地域最高投資責任者(CIO) 兼日本経済担当チーフエコノミスト


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