テクニカル・リセッションの可能性高まる
日本経済は、世界貿易の低迷に加え、消費増税や大型台風、暖冬などの国内要因を受けて、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行以前からすでに弱かった。2020年1-3月期(第1四半期)の国内総生産(GDP)成長率も弱含む見通しで、日本はテクニカル・リセッション(2・四半期連続での前期比マイナス成長)入りする可能性が高い。
- 日本経済は、世界貿易の低迷に加え、消費増税や大型台風、暖冬などの国内要因を受けて、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行以前からすでに弱かった。
- 2020年1-3月期(第1四半期)の国内総生産(GDP)成長率も弱含む見通しで、日本はテクニカル・リセッション(2・四半期連続での前期比マイナス成長)入りする可能性が高い。もしそうなれば政府は前倒しで景気刺激策を打つ可能性がある。だが、日銀は、急激な円高が進まない限り金融政策を変えないとみられる。
- 市場では、年金基金による為替ヘッジなしでの外債購入が進むと予想されており、外債投資が急激な円高を阻止する可能性がある。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は3月末に次期基本ポートフォリオの公表を予定しており、これに市場の注目が集まるだろう。
新型コロナウイルスの影響が出る前に、すでに日本経済は弱含み
新型コロナウイルスの影響が出る前に、すでに日本経済は弱含み
2019年第4四半期のGDP成長率は前期比年率換算で6.3%減と、予想をはるかに下回った(コンセンサス予想は3.7%減、UBS予想は4.8%減)。主な要因は、10月からの消費増税(8%から10%)、関東地方を襲った大型台風、全国的な暖冬などである。とりわけ内需が弱く、個人消費は前期比2.9%減、設備投資も同じく3.7%減となった。消費税還元効果による半耐久財・非耐久財やサービス消費がいくぶん下支えたが、耐久財消費は前四半期から12.8%減少し、設備投資も、前回2014年の消費増税直後(4-6月期)よりも大きく落ち込んだ。1月の輸出指標は、新型肺炎の感染が拡大する前から悪化しており、世界の輸出環境がすでに腰折れしていたことが示唆される。また内閣府が発表した機械受注統計調査報告によると、民需(変動の大きい船舶・電力を除く)は2019年第3四半期の前期比3.5%減、同年第4四半期の2.1%減に続き、2020年第1四半期(見通し)も5.2%減と更なる減少が見込まれている。
テクニカル・リセッションの可能性
テクニカル・リセッションの可能性
2020年第1四半期のGDP成長率も再びマイナスとなり、テクニカル・リセッション入りとなれば、政府は当初予定よりも前倒しで景気刺激策を打つ可能性が高く、日銀も追加金融緩和策を講じるかもしれない(ただし、ドル円が現在の水準で推移する限り、日銀が金融政策を変更することはないと我々はみている)。インバウンド(訪日客)需要の減少などに加え、サプライチェーンの断絶が景気成長を押し下げる可能性が高い。2月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は47.6と、2012年以来の低水準となった(図表1参照)。2019年第4四半期のGDP成長率は前期比年率換算で6.3%減を記録したが、我々は2020年第1四半期も同1.0%減を予想する。我々の予想通り新型肺炎が3月末までに収束するならば、日本経済は第2四半期以降に回復に向かうと考える(図表2参照)。
1月の円安はGPIFによる外債投資の可能性
1月の円安はGPIFによる外債投資の可能性
財務省が発表した直近の月次データから、GPIFとみられる非預金取扱金融機関の信託勘定が外債を2兆円超買い越したことが明らかになった(図表3参照)。GPIFは昨年10月、基本ポートフォリオで為替ヘッジ付き外債を国内債券の資産構成割合に算入することを決定した。GPIFのポートフォリオに占める外債の割合は約18%と、すでに基本ポートフォリオでの保有目標である15%を超過している(図表4参照)。GPIFは2020年4月から2025年3月までの向こう5年間の基本ポートフォリオを3月末までに公表する予定であり、外債の保有目標は20%近辺まで引き上げられるものと我々はみている。国内債から外債への追加入れ替えが大幅な円安要因になるとは考えにくいが、次期ポートフォリオで外債の投資枠が引き上げられれば、GPIFや他の年金基金は円高局面で外債を購入する傾向にあるため、急激な円高リスクが低減されるだろう。
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