株価上昇の後のひと休みの時期
  • 魅力的なバリュエーションを踏まえ、我々は2019年4月以降、グローバル資産配分で日本株式をオーバーウェイトとしてきた。
  • ここ5週間の日本株式は、主要株式市場の中でも特に好調なパフォーマンスを見せ、株価は10%超上昇した。この相場反発は、国内要因よりもむしろ、米国の利下げや日米貿易交渉の部分的な進展をプラス材料に、投資家センチメントが改善したことが背景にあると考える。
  • その結果、日本株式の株価収益率(PER)は、過去平均に比べて16%低い水準から5%下回る程度にまで改善している。今なお過去平均値よりは低いが、PERは足元で12.9倍と、8月中旬の11.7倍からは上昇している。我々は日本株式のオーバーウェイトは維持するが、一部銘柄を日本株選好リストから外し、利益確定売りを行う。

我々の見解

ここ5週間の日本株式は、主要株式市場の中で特に好調なパフォーマンスを見せ、株価は10%超上昇した。この相場反発は、国内要因よりもむしろ、米国の利下げや日米貿易交渉の部分的な進展をプラス材料に、投資家センチメントが改善したことが背景にあると考える。

日本株式の投資家は、8月後半には、米中貿易問題や円高の進行を受けて弱気だった。2019年8月22日付の日本株式レポート「米中の狭間で立ち位置を探る日本株」の中で、我々は、米中貿易摩擦による日本への直接的な経済的影響は限定的だが、対米ドルでの円高進行が不安材料になるだろうと述べた。さらに、市場は米中貿易摩擦と円高による悪影響の大半をすでに織り込み済みで、「現在のマーケットは、バリュエーションが割安で、質の高い銘柄を拾う好機」とも指摘した。

最近の相場上昇は日本株式の見直し買いによるもので、PERや株価資産倍率(PBR)が低く、配当利回りが高い銘柄が相場を押し上げている。その結果、日本株式の株価収益率(PER)は、過去平均を16%下回る水準から、足元では5%下回る程度にまで改善している。今なお過去平均値よりは低いが、PERは足元で12.9倍と、8月中旬の11.7倍からは上昇している。ただし、年初来のパフォーマンスで他の市場に比べた場合、日本株の出遅れを完全に埋めるほどではない。

今年に入り日本株のポジションを大きく減らしてきた海外投資家からも、買い意欲が見られる。海外投資家は、今年1月から8月までに、約4兆円の日本株式を売り越した。つまり、海外投資家は、2012年12月にアベノミクスが開始して以来、日本株を積極的に買い、累計買越額は2015年半ばには約21兆円に達したが、その後、その大半を売り越している(図表1参照)。

では、日本市場は海外勢にとってかつてのアベノミクス初期のように魅力的になるだろうか?おそらく、当面はそれはないだろう。当面は、特段の上昇要因は見当たらず、日本企業全体が海外企業のパフォーマンスを上回るのには時間がかかるだろう。だが、株価バリュエーションは魅力的である。我々は企業収益の回復を背景に、来年はバリュエーションが上昇するとみている。7-9月期の決算が出揃う10月末までは、企業収益が回復し始めたかどうかを確認することはできないため、株式市場は最近の急上昇のペースは維持できないだろう。

今回の相場回復は、投資家センチメントが改善したためと考えられることから、貿易摩擦の影響や交渉の行方に対して市場が悲観的すぎていたことが伺えるが、今回の反発から、そうした過度な悲観論はいくぶん後退したものとみられる。結果として、我々の日本株選好リスト(EPL)から一部の推奨銘柄を外し、利益確定売りを行う。

過去のレポートでも述べた通り、企業収益が回復し(図表2参照)、米中貿易摩擦が解消すれば、海外投資家が日本株に回帰すると思われるため、来年は日本株式が上昇する可能性が高いと考えている。また図表3および図表4が示す通り、高配当銘柄とバリュー株に投資妙味があるとみている。この2つのグループは市場を大きくアンダーパフォームしており、目先の悪材料に対する投資家の懸念が和らげば揺り戻しが起こるとみている。加えて日本株式の配当利回りは、総じてS&P500種株価指数構成企業よりも高い(図表5参照)。この配当利回り格差は2012年のアベノミクス開始以降、最も拡大している。したがって、日本株式は、2012年当時のように、割安水準にあるとみている。

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