Tokyo Stock Exchange

我々の見解

6月28日・29日に大阪で開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、米中貿易摩擦をめぐる懸念がやや緩和されたことを受けて、週明けの株式市場は上昇した。日本株式は今後6カ月で上値が開ける可能性が出てきたとみている。

6月12日付の日本株式レポート「貿易紛争が追い風となるか」の中で述べた通り、我々は主に次の3つの理由から、日本株式は現時点で過小評価されていると考えている。第1に、米中貿易問題の影響が来年までには薄れる見通しであるため、2019年10-12月期(第4四半期)に向けて日本企業の業績が回復するものと予想する(図表2参照)。第2に、日銀による年間6兆円規模の上場投資信託(ETF)買いと、企業による4-5兆円相当の自社株買いが相場の下支え要因となるだろう。第3に、バリュエーションで見ても、日本株式の株価収益率(PER)は13倍、株価資産倍率(PBR)は1.1倍と、いずれも10年平均を下回っており、割安水準にある。G20サミットでの貿易摩擦緩和で、今後、海外投資家が昨年売り越した日本株を一部買い戻す動きが見られると予想する(図表3参照)。よって、日本の一部の輸出関連銘柄と高配当利回りの優良株が魅力的とみている。

日本株式市場は、世界の主要国市場の中でも年初来パフォーマンスが最も低い市場の1つである(図表1参照)。これは、米中貿易摩擦については、中国企業よりもむしろ日本企業の方が業績に大きな打撃を受けると海外投資家が懸念しているからだと我々は考えている。日本は大規模な景気刺激策は難しいとみられ、日銀も既に追加金融緩和の余地が乏しくなっているからだ。

だが、G20サミットでみられた2つの進展を受けて、年後半には海外投資家が日本株式市場に回帰すると考える。第1に、中国製品に依存している日本の輸出業者、とりわけスマートフォン部品メーカーにとって、米中貿易摩擦の緩和はプラスに作用するだろう。また、米中貿易摩擦激化の新たな引き金になるとみられていたファーウェイに対し、米国が米企業による部品販売を一部認める方針に転じたことも、投資家の安心材料となるだろう。

第2に、G20サミットの議長国として成功を収めたことは、安倍首相のリーダーシップと外交手腕を示すこととなり安倍政権にとって明るい材料だ。約3週間後に参院選を控えるが、今回のG20で選挙結果に対する懸念が和らぐというのが我々の見方である。とはいえ、次回参院選では「日米安全保障問題」という論議を呼ぶ政治的テーマが争点の1つとなる可能性が高い。安倍首相は軍事力を強化するために憲法改正の実現を目指すとみられる。だとすれば選挙結果を予測することは困難で、投資家の懸念は再び高まるかもしれない。

米中貿易交渉が(部分合意を含め)いつ、どのような形で妥結するのかはまだ不透明だが、日経平均株価は4月末の水準である22,300円程度まで上昇する可能性があるとみている。米連邦準備理事会(FRB)は年内いずれかの時点で政策金利を引き下げると予想されるため、米国経済は底堅く推移し、結果として日本の輸出業者にもプラス材料となるだろう。結論としては、米中貿易摩擦の緩和と年後半の堅調な企業業績見通しを背景に、海外投資家が日本株のウェイトを引き上げると我々は予想する。これらを踏まえ、引き続き日本株推奨リスト(ELP)を更新し、テクノロジー分野の輸出関連銘柄を適時追加していく。

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