今週の要点

巨大 IT 企業への逆風は続く

先週は巨大 IT 企業の株価が下落した。第 1 四半期決算が好調だったにもかかわらず、 4月下旬からの NYSE FANG+指数(大手テクノロジー 10 銘柄で構成 )の下落率は 8%、ナスダック指数では 7%に達し、 S&P 500 種株価指数の下落率 1%を大きく上回っている。巨大 IT 企業は長期ポートフォリオの柱になると考えているが、配分比率を高くしすぎないことを勧める。 IT 銘柄への逆風の 1 つが債券利回りの上昇だ。先週は米国 10 年債利回りが 1.7%まで上昇し、シクリカル (景気循環)銘柄と比べてグロース銘柄のバリュエーションを大きく押し下げた。第 2 に、1 年の中で新製品の発売やアップグレードが少ない時期に差しかかっていることから、巨大 IT 企業の株価が上振れする要因は少ない。また、今年後半の業績はベース効果が薄れることで前年比の伸びが抑えられ、業績が市場予想を上回る余地は限られそうだ。最後に、テクノロジー・セクター内で中小型株へのローテーションが起きると予想している。巨大 IT 企業の成長見通しが緩やかになり、高リターンを模索する対象が発展段階にある中小規模の IT 企業に移るためだ。

要点:巨大 IT 企業への資産配分は、株価指数における IT セクターの構成比率程度に抑えることを勧める。グローバル指数であれば 18%、S&P500 株価指数なら 25%程度とすることだ。フィンテック、ヘルステック、グリーンテックなど新興セクターの長期的な構造的成長を捉えるポジションを継続する。

インフレ懸念は株価の上昇を阻まず

先週の米国株式市場はインフレ上昇への懸念からボラティリティ (変動率)の高い展開とな った。 4 月の米消費者物価指数が 4.2%と 2008 年以来の高い上昇率となったことが嫌気され、 12 日の S&P500 種株価指数は 2.1%下落した。コロナ危機からの回復が加速する中、インフレ率の上昇が今後も注目されそうだ。インフレ懸念から今後もボラティリティが高まる局面が見込まれるが、我々はリフレを捉えるポジションを継続する方針だ。また、ボラティリティによる株価の一時的な下落局面を利用し、構造的な勝ち組銘柄を割安な株価で組み入れる機会としてゆく。我々は、このところのインフレ率の上昇は、前年の水準が低かったことによるベース効果によるものだと考える。つまり、パンデミック下で不自然に下がっていたコモディティ価格の反発や、経済活動が再開される中でホテル、航空、中古車など一部の分野の需要が急増したことを反映したものとみている。 4 月の米雇用者数の伸びが事前予想を大幅に下回ったことで高まった労働力不足懸念も、今後数カ月で和らぐと考える。各主要中央銀行も、物価上昇は一時的なものにすぎないとして金融政策の引き締めを行わない方針を示している。先週、米セントルイス連銀のブラード総裁はインフレに関し、これまで数年にわたり FRB の目標水準に届かなったことを勘案し、短期的なインフレの高進についてはむしろ歓迎するとの姿勢を示した。

要点:過去にインフレ率や利回りの上昇局面で恩恵を受けてきたエネルギーや金融などのセクターを中心に、リフレに向けたポジションをとることを推奨している。ここ数週間これらセクターがアウトパフォームしているが、これは市場が我々の推奨の通りに展開していることを示すものであり、この展開が今後も続くものと予想する。

暗号資産の後退とデジタル通貨の台頭

先週は主要暗号資産のビットコインが 20%近く下落した。米電気自動車大手が 12 日、ビットコインを利用した EV 車の購入の受け付けを取りやめると発表したことが下落の引き金となった。ケンブリッジ大学のデータによると、ビットコインのマイニング (採掘)にはエジプト一国が 2019 年に消費したのとほぼ同量のエネルギーが消費される。そのため、ビ ットコインの持続可能性が改善しない限り暗号資産による決済は認めない方針に転換した。この発表を受け、仮想通貨セクターにおいてコンセンサスアルゴリズムを二酸化炭素の排出が多い「プルーフ・オブ・ワーク」からより効率的な (膨大な電力やマイニング機器を必要としない )「プルーフ・オブ・ステーク」への移行が加速する可能性がある。暗号資産に批判が集まる一方で、中央銀行デジタル通貨 (CBDC)を支持する声が当局高官の中で広がっている。イングランド銀行 (中央銀行)のベイリー総裁は「いずれデジタル通貨を採用するだろう」と述べた。暗号資産とデジタル通貨は別物であり、この 2 つを混同することは禁物だ。暗号資産はボラティリティが高く、また決済手段として認めている企業が少なく、我々は投機バブルの様相にあるとの見方をしている。一方、 CBDC は法定通貨に近い。このため、 CBDC は実質的に中央銀行が発行する形式の異なる紙幣とも言える。

要点:仮想通貨への投機に対しては慎重な姿勢をとることを勧める。デジタル決済資産へのエクスポージャーを求める場合は、「ネクスト・ビッグ・シング」のひとつであり、コロナ禍でさらに顕著となったフィンテックを投資対象として検討することを勧める。

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