わずか1カ月前の時点では、欧米民主主義国家による過去に例のない都市封鎖措置が、新型コロナウイルス感染拡大のスピードを減速させるのに十分かどうか我々にはわからなかった。そして現在、既に投資家は世界的な感染拡大のピークの先を見据えようとする中、市場は急激に上昇している。

先月のレターで紹介した基本シナリオ(新規感染者数が4月半ばまでにピークに達する)が予想通りに展開していることから、今月号では、我々のシナリオ分析を再確認し、投資家が今後のリスクと機会を評価できるように、コロナウイルス危機の次の3フェーズについて検討する。

第1段階の正常化フェーズでは、欧米の大半の国々が従業員の職場復帰を許可するが、生産は依然として危機前の水準を大きく下回る。第2段階の回復フ ェーズでは、景気は危機前の水準へ徐々に回復する。事業所の増加率(開業と廃業を加味した増加率)はプラスとなり、都市封鎖中に解雇された労働者は新たに職を得る。第3段階の危機後フェーズでは、世界はより大きな負債を抱え、グローバル化は後退するが、デジタル化は進む。

これら3つのフェーズは複雑であり、様々な結果が生じる可能性があるが、市場は一度に多くの重要テーマを扱えず、今後数カ月の市場は、主にa)経済活動がどの程度のスピードで正常化するか、b)2021年中にどの程度回復フェーズは進行するか、についての見通しによって動かされるだろう。

我々の基本シナリオが実現すれば、2020年を通して都市封鎖措置が断続的に実施され、2021年に広範な回復が持続的に見られるが、このことはすでに株価指数に幅広く織り込まれている。だが、現在の市場にも投資機会は存在する。我々は引き続き、クレジットは割安であると考え、グローバル戦術的資産配分において米国投資適格債、米国ハイイールド債、米ドル建て新興国国債をオーバーウェイトとする。ボラティリティ(変動率)は依然として高く、相場上昇時に利益が出やすく下落しても損失が抑えられるポジションの構築、または利回りを得る機会を投資家に提供する。そして株式に関しては、世界的感染拡大によって引き起こされる構造変化の規模、特にそれがデジタル・トランスフォーメーション、eコマース、フィンテック、オートメーションとロボット、ヘルステック、遺伝子治療、オンコロジー(がん治療)に与える影響を、市場が十分に認識していないと考える。

新型コロナウイルスは経済や社会に途方もない不確実性をもたらしている。政府による経済への大規模な介入は、政治的判断によって市場の行く末が大きく変わりうることを意味する。そして中央銀行による債券市場への介入によって、分散投資は以前ほど単純ではなくなった。しかし、先を見据えた資産計画に従い、柔軟に投資機会を捉え、十分に規律をもって分散投資することで、投資家は長期にわたって資産を守り育てることができる。

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