Mark Haefele

弾劾裁判、ブレグジット(英国のEU離脱)、空爆、感染症の拡大にもかかわらず、S&P500種株価指数は最高値水準にある。今年は既に歴史の教科書に載るほどの事件が起きているが、2020年はまだ始まったばかりだ。

我々は、「Year Ahead 2020:選択の年 -変革の10年が始まる」の中で、今年の 投資成果を左右する3つの「選択」(①現状維持か変更か?②合意に至るのか 至らないのか?③金融政策か財政政策か?)について説明した上で、株式のオ ーバーウェイトで2020年をスタートさせた。新型コロナウイルスの感染拡大で 不透明感が広がったものの、政治、通商、経済政策の方向性は株式市場を支え ていると我々はみている。

市場参加者の大半は、トランプ大統領が再選され、現在の税制と規制環境があと4年続くとの見方を変えていない。大統領選挙が近づくと、この確信が揺らぐことは間違いない。とはいえ、米国人の過半数が、経済状態は3年前よりも今の方が良いと考えている模様である。しかも、1948年以降、現職大統領が立候補した11回の大統領選挙のうち、8回で現職が勝利している。

米中間の貿易紛争は峠を越えた。トランプ大統領は一般教書演説で、経済環境の好転と費用負担の大きい戦争を減らしたという実績を背に選挙活動に臨む意向を明確にした。その結果、米中間の貿易摩擦やイランとの紛争が新たに激化する可能性は低下したと考える。米国と中国は先月署名した「第1段階の合意」の一環として関税を一部引き下げている。

最後に、金融緩和政策は継続するだろう。2019年はメディア報道を注目しすぎるあまり、各国の中央銀行が「低金利の長期化」から「低金利の恒久化」へと方針転換したことを見逃していたと振り返る顧客の声が多く聞かれた。2020年も既に追加の景気刺激策が実施されている。中国は金融面・財政面から追加策を講じた。また、米10年国債利回りが年初来で30ベーシスポイント(bp)以上低下するなど、借り入れコストは世界的に低下している。

我々は全般的には楽観的な見通しを維持しているが、この見方は先進国の株式市場のバリュエーションには既に織り込み済みだ。そこで、株式市場への強気の見通しを新興国株式のオーバーウェイトに反映させている。その他では、選別した新興国通貨と英ポンドにも引き続き投資機会を見いだしている。

我々は、新型コロナウイルスをめぐる状況を、投資および経済への影響の点から監視している。新たな感染者数の伸びが鈍化している現状から、今回の感染拡大はおおむね第1四半期には収束し中国以外に大きく広がる可能性は低いとの見方を継続する。短期的な動きに注目するよりも、この世界的な公衆衛生上の非常事態発生をきっかけとして、脱グローバル化、遺伝子治療、デジタル・トランスフォーメーションなどの主要な長期投資テーマの進展に注目することで、投資家の大半がより多くの利益を得ることができると考える。

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