House View Weekly 米大統領選へのカウントダウン: 政策の相違

先週木曜日、トランプ大統領と民主党のバイデン候補は最後の候補者討論会で直接対決し、第1 回討論会よりも政策論争を行い、目新しさはなかったものの両者ともに善戦した。自制したトランプ大統領は前回ほど相手の発言を遮らず、代わりに数十年にわたるバイデン候補の議員としての実績について攻撃した。一方、バイデン候補はトランプ大統領の新型コロナウイルスへの対応を批判し、米国経済の活性化を目指す自身の計画について熱弁をふるった。

2020年 10月 26日

今週の要点 

ボラティリティを活かして株式のエクスポージャーを構築

先週の株式市場はボラティリティ (変動率)が高い状態が続いた。VIX 指数は 30 近辺で推移し、来月にかけて S&P500 種株価指数が 1 日当たり 1.8%程度変動することを示唆した。ワクチン開発の進展状況と米国大統領選をめぐる不確実性を受けて、ボラティリティは高止まりが予想される。しかし、不透明感の先を見越して長期の株式エクスポージャーを構築することを投資家には勧めたい。世界中で 10 種類のワクチン候補が治験の最終段階にあり、初期データは期待が持てる内容であることから、我々は 2021 年第 2 四半期にはワクチンが広く行き渡ると見込んでいる。今月末か来月にもワクチンの有効性を証明する結果が発表されれば、市場はワクチンが経済に与える恩恵を織り込み始めるとも考えている。また、米大統領選は短期的にはボラティリティを高める反面、どちらが勝利しても、

結果が確定すれば追加経済対策の協議が進展する可能性が高い。
要点:米大統領選を控え、ボラティリティを活かした規律ある投資を推奨する。これまで上昇局面に出遅れていたセクターがけん引役になることが予想され、株式の上振れ余地に備えたポジション構築を勧める。

ワクチン開発以外にも見出せるヘルスケアの投資機会

足元のボラティリティはワクチン開発をめぐる紆余曲折も主因の 1 つである。一方で、この短期的な注目材料以外にも、人口動態やテクノロジーの進歩を受けて、ヘルスケア産業にはいくつもの長期的な機会が見出せる。各国で医療費が増大し政府予算を圧迫する中、ヘルステック (医療 X 新技術 )は力強い成長の可能性を秘めている。例えば、昨年は米国の医療費のうち 25%が医療システムにおいて無駄になったと試算されている。だが、慢性疾患を患者一人ひとりに合わせて個別的に管理できるようになれば、コストを削減できる余地がある。こうした分野は魅力的な成長市場だとみている。例えば、米国には糖尿病患者が約 3,400 万人いるが、疾病管理プラットフォームを現在利用している人は全体の 2‐3%に過ぎない。一方で、世界的な高齢化社会と新たな治療法の開発に伴い、癌治療薬市場における需要は今後さらに増大するだろう。急成長しているこの市場の規模は現在の 1,500 億米ドルから 2025 年には 2,500 億米ドル以上に拡大すると予想される。 

要点:最近公表した『F uture of humans』レポートで取り上げたように、ヘルスケアセクターは人類の未来に寄与するビジネスの柱である。さらに、ヘルスケア以外にも、新型コロナウイルスの感染拡大によって加速されたテーマに投資機会が見出せる。

過去最大の需要が ESG 債券の成長を浮き彫りに

欧州連合(EU)が発行した 170 億ユーロの債券に対し 2,330 億ユーロ以上の応札があり、EU 発行の債券に対して過去最大の需要を記録した。コロナ危機下での雇用を支える財源調達のために発行された債券が人気を博したことは、環境、社会、ガバナンス (ESG)に関する債券への投資意欲が高まっていることを示唆している。複数の動きから、この ESG 債市場は今後さらに拡大する可能性もある。第 1 に、欧州委員会が打ち出した失業リスク緩和緊急支援( SURE)プログラムの資金源となるソーシャルボンドの発行により、今後 9 カ月でソーシャルボンド市場の規模が 2 倍に拡大することが予想される。第 2 に、世論調査で現在優勢の民主党のバイデン候補は 2 兆米ドルの気候変動対策投資を計画している。最後に、一部の政府はコロナ禍からのグリーンリカバリーに重点を置いており、グリーンボンドに一段の追い風が予想される。

要点:ESG 債券市場は一段の拡大が予想される。この市場で最も普及しているグリーンボンドは、伝統的な債券のパフォーマンスに並ぶ運用成績を上げており、I CE BoA グリーンボンド指数とグローバル・ブロード・マーケット指数は 2014 年 3 月以降、ほぼ同水準のリターンを記録している。

深読み 米大統領選へのカウントダウン:政策の相違

先週木曜日、トランプ大統領と民主党のバイデン候補は最後の候補者討論会で直接対決し、第 1 回討論会よりも政策論争を行い、目新しさはなかったものの両者ともに善戦した。

自制したトランプ大統領は前回ほど相手の発言を遮らず、代わりに数十年にわたるバイデン候補の議員としての実績について攻撃した。一方、バイデン候補はトランプ大統領の新型コロナウイルスへの対応を批判し、米国経済の活性化を目指す自身の計画について熱弁をふるった。

調査によると、候補者討論会は投票先を決めていない有権者には効果があっても、投票先をすでに決めている有権者を「心変わり」させることは少ないと言われている。 10 月 25 日時点ですでに 6,000 万票が投票されており、この選挙で有権者を心変わりさせる可能性はさらに低そうである。

しかし、討論会自体が投票行動に直結しないとしても、投資家にとっては複数の重要な政策課題が浮き彫りになった。

  • 経済成長: 両者ともに互いのパンデミックへの対応とそれが経済に及ぼす潜在的(および実際の)影響を批判し、トランプ大統領がより広範な経済再開を求め失業の増加に警告を発したのに対し、バイデン候補は「経済ではなく、ウイルスの封じ込め」を誓った。市場の今後の動向は、追加の財政刺激策をめぐる交渉、およびワクチンの承認と分配に左右される。我々は 2021 年第 2 四半期ま で に はワ ク チ ン が普及 し 、 財政刺激策に つい て は大統領選後に何 ら かの決着 を見る と 予想 し て い る 。

    接戦になることによる不確実性に対する市場の懸念は後退した。第二に、民主党が過半数を握る下院はすでに 2.2 兆米ドルにのぼる財政刺激策を可決しており、共和党の反対を乗り越えれば、財政支援は行われるからだ。最近の世論調査で最も可能性が高いとされる民主党圧勝は中期的には増税と規制強化につながるものの、短期的には、財政刺激策によって経済成長とインフレ率の上昇への期待が高まる。こうした要因が株式市場の最近の上昇とローテーション、 10 年国債利回りの上昇につながっている可能性が高い。ラッセル・バリュー指数は 9 月 29 日の第 1 回討論会以降 5.2%上昇し、その後バイデン候補が世論調査でリードを広げたが、ラッセル・グロース指数は 3.5%の上昇に留まった。一方、米国 10 年国債の利回りは同期間に 0.65%から 0.86%に上昇した。
  • サステナブル投資: バイデン候補は、「気候変動、地球温暖化は人類の脅威」であり、 2 兆米ドルにのぼる気候変動対策は「1,860 万人の雇用を創出」し、電気自動車などのセクターを後押しすると発言した。トランプ大統領はパリ協定からの離脱を経済的観点から擁護し、米国のエネルギー産業の雇用を守りエネルギー分野での米国の独立性を確保すると主張した。バイデン政権が誕生した場合は再生可能エネルギーにも重点を置き、例えば 国内での普及を推進するため、税制優遇などで太陽光発電への設備投資を促したり、中国製太陽光パネルにかかる関税を引き下げる可能性もあると我々はみている。第 2 次トランプ政権が誕生した場合、環境にやさしい同様の政策を実施することはないものの、サステナビリティに関する指数はトランプ政権下でも好調に推移している。
  • 中国: 両者ともに互いの中国戦略を批判し、中国に対する強硬姿勢を打ち出した。バイデン政権は中国に対して明白な強硬姿勢を抑えた予想可能な政策をとり、アジアの輸出関連セクターに恩恵をもたらすと考えられる。一方で、ワシントンでは中国に対して超党派のコンセンサスが広がっているため大幅な政策変更は期待できず、習近平国家主席も強硬姿勢を打ち出している。大統領選後もテクノロジー分野を中心とする米中の対立は続き、テクノロジーの世界では二極化が進むとみられる。

我々は様々な結果に対応できるよう、投資バスケットを作成している。 UBS 米国公共政策担当部門は選挙結果について民主党圧勝を 55%、トランプ大統領の勝利とねじれ議会、すなわち現状維持を 28%としている。選挙(および財政刺激策をめぐる)不確実性により 11 月 3 日まではボラティリティが上昇し、長期ポジション構築のエントリーポイントを提供しそうである。
 
世界では 10 種類のワクチン候補が治験の最終段階にあり、初期のデータは期待できる内容であることから、 2021 年第 2 四半期までにはワクチンが普及すると見込まれる。米国の政策をめぐる不確実性が解消され、財政刺激策が可決され、ワクチン開発に伴い移動制限が大幅に緩和されれば、中期的には株式の次の上昇局面を下支えすると考える。

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