引き続き株式に上昇余地

先週は、ダウ平均と日経平均を筆頭に、グローバル株式が2.1%上昇した。4-6月期(第2四半期)の米企業決算が予想を上回ったことやワクチン開発の進展、実質利回りの低下等が株価の上昇を下支えした。これらのプラス要因が米中の対立激化の影響を相殺する形となった。トランプ米大統領は、中国の対話アプリ「WeChat」を運営するテンセントと動画投稿「TikTok」を運営するバイトダンスとの取引を禁止すると発表した。米国はさらに香港の林鄭月娥行政長官を含む11人の中国高官を制裁対象に指定し、これに対抗して中国も報復措置を決定した。また、S&P500種株価指数を構成する企業の90%が第2四半期の決算発表を終えたが、うち83%の企業が予想を上回る内容となった。さらに、ジョンソン・エンド・ジョンソンは開発中の新型コロナウイルス1億回分を10億米ドルで米国に提供すると発表したほか、世界では6つのワクチンが、規制当局への承認申請前の最終段階となる大規模な臨床試験に入った。一方、米国10年国債の利回りは過去最低の0.51%に落ち込み、(インフレ調整後の)実質利回りは‐1%に低下した。グローバル株式の足元の株価水準は景気回復を織り込んでいるが、経済の完全な正常化は織り込んでいない。1997年以降で株式のリスクプレミアムが現在の水準を上回った局面は全体の10%に留まっており、株式には引き続き投資妙味がある。一方、グロース株などのセクターでは割高感が強まっている反面、景気が回復し企業利益が底入れすれば出遅れ株にも上昇が広がると予想される。よって、一部のバリュー株やシクリカル株へのエクスポージャーを追加するとともに、グロース株では厳選投資が重要となる。また、5Gなど新型コロナウイルスの感染拡大によって加速している分野にも注目したい。

要点:グローバル株式には一段の上昇余地があり、一部のバリュー株とシクリカル(景気に敏感な)銘柄が次の上昇をけん引すると考える。

金は上昇、米ドルは下落

金は先週、1オンス=2,000米ドル台に突入して史上最高値を更新した。金は年初来34%上昇している。しかし、上昇後もファンダメンタルズからの下支えがあるため、短期的には1オンス=2,300米ドルまで跳ね上がる可能性がある。実質利回りの低下を受けて、金を保有する機会コストは低下した。また、金は米ドル建てのため、米ドルの下落も追い風となっている。米ドル指数は7月に、月次ベースではこの10年で最大の下落を記録し、3月の高値から9%低下した。欧州における新型コロナウイルスの感染再拡大懸念、米国で追加の財政刺激策が可決されるめどが見えてきたこと、米ドルのショートポジションが積み上がり利食いの可能性があることなどから、ここからさらに大幅に下げることは想定しにくい。とはいえ、中長期的には米ドルの下落基調に変わりはなく、また、米中対立が激化したり、新型コロナウイルスに関するネガティブな情報が出た場合の安全資産として金に資金が集まる可能性がある。よって、金に対しては強気の見方を維持し、金保有の継続、あるいは価格が一時的に下落した局面でのポジション構築を勧める。

要点:利回りの低下、米ドル安、ボラティリティ上昇の可能性等が金の強気見通しを下支えしている。

サステナビリティに新たな支援材料

先週、米グーグルの親会社アルファベットはエネルギー効率、クリーンエネルギー、環境にやさしいビルなどのプロジェクトを使途とする57.5億米ドル相当の「サステナビリティ債」を発行した。この種の社債の起債額としては過去最大規模となる。また、英石油大手BPは2030年までに低炭素エネルギー分野への投資を年50億米ドルに引き上げ、投資総額を石油・ガスと環境にやさしい分野に二分すると発表した。これらの取り組みは、政府や消費者と並んで企業も今後サステナビリティ問題への対応を加速するという我々の見方を裏付けている。こうしたトレンドにおける投資については、大きく3つの勝ち組が考えられる。第1に、クリーンな大気と二酸化炭素排出削減、エネルギー効率、スマートモビリティなど国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成に関連したテーマに投資することを推奨する。第2に、サステナビリティ関連のプロジェクトに使途を限定したグリーンボンドをポートフォリオに追加することを提案する。第3に、投資家自身にとって重要な問題に資金を配分する。例えば、公害や廃棄物問題への対応に関心があるならば、有害大気物質の排出削減や廃棄物と土地の適切な管理に取り組んでいる企業への投資が検討できる。

要点:伝統的な投資に匹敵する投資リターン、3月の下落時に底堅さが確認されたパフォーマンス、投資を通じて世界の変革に寄与できる点などから、よりサステナブルなポートフォリオへのシフトを勧める。

深読み

米ドルは一時下げ止まる見通し

新型コロナウイルスの感染拡大当初、流動性需要の急増により米ドルは急上昇したが、その後続落している。米ドル指数(DXY)は7月に4.1%下落し、月次ベースでは過去10年で最大の下げ幅を記録し、3月のピークからの下落率は9%に達した。

しかし、先週DXYは若干上昇して1週間の取引を終え、週次ベースでは6月中旬以来初の上昇を記録した。我々は米ドルはこのまま下げ止まりに向かうと考えている。米ドル安基調に歯止めがかかり、短期的に上昇する理由としては3つが考えられる。

  • 欧州の一部で新型コロナウイルスの感染再拡大懸念:最近の米ドル安は、米国の一部の州における感染拡大が一因だった。しかし、米国では新型コロナ感染者数の増加ペースが鈍化しており、8月8‐9日の週末の新規感染者数は平均1%の増加にとどまった。それまでの5週間平均は1.6%だった。一方、欧州の一部では新規感染者数の増加に拍車がかかっている。ドイツでは8月7日の実行再生産数(Rt、1人の感染者が平均何人に感染させるかを示す)が10日間の最高となる1.16に上昇し、イタリアでも新規感染者数が2カ月ぶりの高水準に達した。
  • 差し迫る財政の崖:失業給付への加算が期限切れとなるなか、米国の「財政の崖」をめぐる懸念も米ドルの重石となっている。超党派の協議が難航する中、トランプ大統領は週400米ドルの失業保険上乗せ給付を含め、一連の財政刺激策を承認する大統領令に署名した。議会の合意が待たれるが、大統領選挙を前に両党とも合意にこぎつけたい思惑があり、少なくとも1兆米ドルの新たな対策が合意されると予想している。これが米ドルの支援材料になるだろう。
  • 米ドルのショートポジションの積み上げ:米商品先物取引委員会(CFTC)のデータを基にすると、投機家筋が保有する米ドルの対ユーロでのネットのショートポジションは2018年以来の高水準に達し、米ドルにとってポジティブ材料が増えた場合に利食いの買戻しが起きる可能性が高まっている。

しかし、中長期的には下落スピードは鈍化するとしても、米ドルの下落基調に変わりはないと考えている。

  • 米国では財政と金融の異次元緩和で米ドルの金利優位性が薄れており、この状況が続くだろう。
  • 米大統領選をめぐる不透明感も米ドルを下押しするだろう。選挙後も、米国の財政と負債規模の不透明感が米ドルの重石になるおそれがある。
  • 新型コロナ感染拡大に先立ち、多くの長期投資家はスイス・フランや日本円など他の資金調達通貨と米ドルとの大幅な金利差から利益を得るため、米ドルへのエクスポージャーを大幅に拡大してきた。我々はこのオーバーエクスポージャーが解消されると予想している。事実、CFTCのデータは資産運用会社が保有するユーロのネットのロングポジションが5月末から7月末にかけて22万3,000枚から33万7,000枚に増加したことを示している。

このため、短期的には、一段の米ドル安を追いかけるタイミングではないと考えるが、中長期のトレンドを踏まえて戦略的ポジショニングを点検し、必要に応じて見直しをすることを勧める。ユーロ/米ドルについては、2021年9月までに米ドルは1.22まで下落(1.20₋1.25のレンジの中間)すると予想し、1.15₋1.16の水準にユーロが下がる局面があればユーロのエクスポージャーを追加することを勧める。米ドル/スイス・フランについては、同期間のレートを0.90と予想している。スイス国立銀行(中銀)は先ごろ為替介入の規模を縮小したが、スイス・フランの上昇を抑えるために今後も介入を続けると予想される。

House View レポートの紹介


資産運用はUBS証券へ

UBSウェルス・マネジメントでは、富裕層のお客様の資産管理・運用を総合的にサポートしております。日本においては、2億円相当額以上の金融資産をお預け入れくださる方を対象とさせていただいております。

(受付時間:平日9時~17時)