今週の要点

ボラティリティを利用して市場に参入

先週は株式市場のボラティリティが高止まりした。特にテクノロジー銘柄は1 日の変動が大きく、9 月8 日にナスダック総合指数は4.1%下落した。世界の株式も1.2%下落して1 週間を終えた。今回の相場変動の大半は、好調が続く企業業績の先行き見通しの悪化や世界の景気回復の腰折れ懸念ではなく、オプション関連取引が主因だと考えられる。新型コロナウイルスに対するワクチン開発も進捗しており、我々は引き続き来年4-6 月期(第2 四半期)までに実用化されると見込んでいる。英アストラゼネカは先週、開発中の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を一時中断したことを明らかにした。だが、これは標準的な安全措置であり、ワクチン誕生を妨げるものではない。したがって、今般のボラティリティは魅力的な投資タイミングを提供していると考えられる。各国中央銀行の流動性に加え、債券に比べて魅力的なバリュエーションが引き続き株式の支援材料になるだろう。とはいえ、最近の下落を踏まえ、超大型株以外のテクノロジー株にリバランスし、分散投資することも重要であると考える。特に、米国の中型株のほか、5G、中国ニューエコノミー、ヘルステック等に関連している銘柄を勧める。

要点:ボラティリティはより魅力的なレベルで市場に参入する機会を提供すると考えられる。

サステナブル投資の好機到来

サステナビリティ(持続可能性)をめぐる課題に積極的に取り組む投資家が増えており、今やサステナブル投資ファンドの運用資産残高は1 兆米ドル以上にのぼる。我々は主に次の3 つの理由から、サステナブル投資の好機が到来していると考える。第一に、新型コロナウイルスのパンデミックを受けて各国政府と規制当局がグリーン・リカバリーの推進に向けた取り組みを強化しており、サステナブル投資の機運が高まっていること。第二に、サステナビリティへの注目が高まることで、低炭素社会への移行、廃棄物管理、食の未来等の分野に関与している企業など、破壊的イノベーションの分野に投資機会が見出せる。第三に、不安定な市場環境下で、サステナブル投資商品の運用成績が従来の投資商品に匹敵し、またはそれを上回っていること。例えば、今年上期のパフォーマンスでみると、サステナブル投資ファンドの72%がモーニングスターの各カテゴリーの上位50%に入っている。

要点:グリーン・リカバリー関連銘柄とコロナ後の勝ち組企業の買いを勧めする。

ブレグジットをめぐる対立はあるものの、英国資産は依然魅力的

英国と欧州連合(EU)の間で離脱協定をめぐって亀裂が深まり、通商合意がまとまらないままブレグジットの移行期間が終了するリスクが高まった。これを受けて、先週は英ポンドがユーロに対して3.6%下落した。英政府は既に締結された離脱協定の一部を無効にできる国内市場法案を英議会に提出したが、EU はこれを厳しく批判している。今後数週間は、瀬戸際外交によって英国の資産はボラティリティが高い状態が続く見通しだが、政治的、経済的思惑から何らかの合意に達するとみられる。そうなれば、適正水準に対して割安とみられる英ポンドと英国株式のリスクは軽減されるだろう。英ポンドについては、中期的には米ドルとユーロの双方に対してポジティブな見方を維持している。そのため、グローバルポートフォリオに含まれる英ポンド建て英国資産のリスクに対してはヘッジをかけていない。交渉妥結につながる着地点が見出せれば、世界の株式に出遅れている英国株式に対する大きなマイナス要因も取り除かれるだろう。英国は12 カ月実績株価収益率(PER)が15.4 倍と、MSCI オール・カントリー・ワールド指数より30%割安で取引されており、バリュエーションは魅力的である。また、英国市場はエネルギーや素材などシクリカルなバリューセクターが占める割合が高く、世界経済の回復が進めばその恩恵を受けるだろう。

要点:EU と英国が通商合意に達すると予想し、対ユーロと対米ドルで英ポンドに強気の見方を取っている。英国株式はブレグジットをめぐる不透明感の解消と、世界経済の回復進捗の双方から恩恵を受けるとみている。

深読み

サステナブル投資の好機到来

最近発表されたエコロジカル・スレット・レジスター(Ecological Threat Register、ETR)の調査データによると、水不足、自然災害、人口の急激な増加によって今後30 年で10 億人以上の人が移住せざるを得ない状況に追い込まれるおそれがある。地球温暖化その他のサステナビリティをめぐる問題が、過去に例のないほど深刻な影響を人類に及ぼそうとしている。

投資家は、持続可能な世界経済を目指すプロジェクトや企業に資金を投じるなど、サステナビリティ問題により積極的に対応し、サステナビリティのリスクからポートフォリオを守る動きを強めている。2020 年6 月時点でサステナブル専門投資ファンドに投資されている金額は1 兆米ドル以上にのぼり、2018 年末の6,000 億米ドルからわずか18 カ月で急増している。

サステナブル投資は勢いを増し続けると思われる。最新レポート「Sustainability Matters: A private investor perspective」で、今がサステナブル投資に適した時期である3 つの理由を特定した。

  1. 今が投資のタイミング: 持続可能な開発は長期的な目標だが、投資家がコロナ後のポートフォリオを検討する上で、サステナビリティの要素は重要性が高まっている。パンデミックを受けて各国政府や規制当局がサステナビリティを重視する姿勢が強まり、グリーンリカバリー政策や急成長するサステナブル投資分野を構造的にサポートする取り組みが広がっている。ブルームバーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンスのレポートによると、経済規模上位50 カ国はパンデミックを受けてグリーンな取り組みに5,830 億米ドルを投じている。EU グリーンディールに沿ったEU 復興計画は、発表された1.8 兆ユーロの予算の30%を今後7 年間で気候関連の投資に配分して経済の復興を図る。11 月に実施される米大統領選の結果次第では、このトレンドがさらに後押しされる可能性がある。民主党のバイデン候補は、気候変動対策に2 兆米ドルを投資する計画を発表した。世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF:運用資産規模1.4 兆米ドル)やノルウェーの政府年金基金グローバル(同1.2 兆米ドル)など、世界最大級のグローバル投資家の一部は、すでにサステナブル投資を開始している。
  2. 環境・社会・ガバナンスの問題は投資家にリスクと機会の両方をもたらす: 山火事を原因とする企業破綻、個人情報、サプライチェーンに関する問題、直近では世界を襲ったパンデミックで非倫理的な企業行動が明るみに出るなど、企業をめぐる事件は財務業績を損なう可能性がある。目先、エネルギー集約型産業では、製造工程をよりエネルギー効率が高い代替手段に切り替えるには、追加の設備投資が必要になるだろう。一方、メリットの面では、サステナビリティ重視の機運により、低炭素社会への移行、廃棄物管理、食の未来等に関与している企業など、破壊的イノベーション分野に投資機会が見出せ、良好なリターンも期待できるる。
  3. リターンの先にある社会的意義: サステナブル投資は高いリターンに加え、サステナブルな開発目標への貢献または目標との整合性を目指している。サステナブル投資戦略の指数、ファンド、商品の2020 年のリターンは、不安定な市場環境の中で従来の投資戦略に匹敵またはそれを上回るパフォーマンスをあげている。今年上期のパフォーマンスでみると、サステナブル投資ファンドの72%は、モーニングスターの各カテゴリーの上位50%にランクインしている。サステナブルファンドは、実績が増えるにつれて、今回の好成績が異例な結果ではないことが明らかになりつつある。過去数十年のサステナブル投資指数の運用成績を実証的に見ると、サステナブル投資手法は今後も景気サイクル全般にわたり従来の商品に並ぶパフォーマンスを実現するものと見込まれる。

サステナブル投資ソリューションを投資戦略の主流に位置づけるためには、必要な取り組みがまだ多く残されている。例えば、アセットマネジャーによるESGインテグレーション(投資先判断にESG情報も織り込んでいく取り組み)の実践強化、企業によるESG情報の開示拡大、サステナビリティとインパクト指標の標準化の推進などである。だが、こうした変化・変革が完全に実現するまで投資を待つ必要はない。投資家がサステナブルな投資基準をポートフォリオに取り入れることは、投資面からも倫理的にも合理的である。

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