今週の要点

新型コロナ感染再拡大も、市場への楽観的な見方を維持

米国では新型コロナウイルスの1日の新規感染者数が6万人強と過去最多を記録し、検査人数に対する陽性者の割合も上昇しており、消費者信頼感に水を差している。グーグルのデータによると、小売と娯楽の客足は6月半ば以来、危機前を15%程度下回る水準で安定してきたようだが、アリゾナ、フロリダ、テキサスの各州では人の移動が減少している。しかし、株式について楽観的な見方を支える根拠も残されている。米国では入院者数の増加ペースは低下し、当初と比べ死者の数も急増していない。各国政府は景気刺激策を強化しており、今週に入って英国は300億英ポンドにのぼる雇用支援策を発表した。さらに、経済統計は世界各地で予想を上回っており、Citiエコノミック・サプライズ指数は4月の‐144から急回復して過去最高の188を記録した。これらを踏まえ、我々は高格付債よりも株式とクレジットを推奨する。今こそ「回復に向けてリセット」するタイミングであり、インカムを発掘し、ボラティリティを管理し、長期を見据えてポジションを整える時と考える。

要点:金融緩和策と景気刺激策により株価は下支えされると考える。上振れ余地に備えたポジションを構築し、「回復に向けてリセット」するタイミングである。

米大統領選に向けた投資戦略

米大統領選挙に関するレポート「ElectionWatch」最新号では、11月の大統領選挙の結果が金融市場にもたらす影響を予想している。いずれの党が圧勝した場合でも、エネルギー、金融からテクノロジー、ヘルスケアに至るまで様々なセクターに影響が及ぶと予想される。バイデン前副大統領はトランプ大統領が実施した減税の一部を廃止し、環境にやさしい政策を推進するとしており、サステナビリティ関連の資産の追い風になりそうだ。対照的に、トランプ大統領が再選すれば、減税や規制緩和が進むとみられ、エネルギーと金融関連銘柄の一部が恩恵を受けるだろう。先週の世論調査では、民主党のバイデン氏への支持が高まっている。英ファイナンシャル・タイムズ(FT)の世論調査はバイデン氏が獲得する選挙人は307、トランプ大統領は148に留まると予想している。

要点:共和党、民主党それぞれが勝利した場合の恩恵を受ける企業や、選挙の影響を受けにくい企業については、最新号のElectionWatchを参照いただきたい。

グリーンな政策が投資家を後押し

コロナ後の経済復興に気候変動対策も盛り込む「グリーンリカバリー」の推進が、世界各国の景気刺激策の柱となっている。アジアでは中国政府が100億人民元を投じて電気自動車インフラを拡充する。韓国の「韓国版ニューディール事業」ではグリーン・プロジェクトに7兆ウォンが投入される。欧州は2050年までに気候中立(温室効果ガス正味排出量ゼロ)を目指す「持続可能な欧州投資計画(SEIP)」を発表し、今後10年間で官民合わせて1兆ユーロ規模の投資を行う。さらに、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は先週、FTに対し、二酸化炭素排出削減を資産購入計画の柱に据えると発言した。最後に、米大統領選挙で民主党が圧勝するBlue Waveが起きた場合、米政府がグリーン政策を促進し世界の環境に対する潮流を加速するとみられる。世界各国の政策支援が引き続き債券、株式、プライベート市場の持続可能な投資を後押しすると考えられる。

要点:持続可能な投資戦略は、消費者の意識の変化と政策当局者の支援継続の恩恵を受けるだろう。

地域的な見解

中国A株の上昇は続くか?

CSI300指数は6営業日間で13%と大きく上昇し、7月6日には2015年7月以来の高値となる4,670で引けた。こうした株価上昇の背景にあるのは、中国人民銀行が再貸付金利と再割引金利を予想外にそれぞれ25ベーシスポイント(bp)引き下げたこと、ならびに不動産販売が6月に予想を超える回復を見せたことだ。

オンショア、オフショア市場ともに、機関投資家の動きは大きな盛り上がりを見せている。今年上期には中国で418本の株式およびハイブリッド・ファンドが組成され、調達された資金の総額は7,180億人民元に達した。ノースバウンド(香港から中国本土への投資)の資金の流れも急激に増加しており、今年上期の1日当たり平均出来高は前年比で13%上昇した。

一方、A株の1日平均売買代金は先々週に9,000億人民元へと増加し、今年の平均を31%上回ったほか、7月6日にはこの売買代金がさらに1.5兆人民元に急増した。CSI300指数は現在、実績株価収益率(PER)が14倍程度で推移しており、長期間の平均を1標準偏差(SD)近く上回る。潤沢な流動性や継続的な金融緩和、金融市場に有利な行政の施策が、現行のバリュエーションを支えていくと我々はみている。とはいえ、今後一段の株価上昇を招く要因となるのは、バリュエーションの上昇ではなく企業利益の伸びだろう。

我々は来年の増益率は2桁台前半から半ばになると見込んでいるため、中国本土のA株市場にはまだ向こう3~6カ月間で2桁台前半の上昇率となる余地がある。市場を動かす次の材料としては、第2四半期の決算発表で示される経営陣の中期的な業績見通しや、第3四半期の景気回復を示すさらなる兆候などが考えられる。このようなプラス材料が示されれば、今年下期から来年にかけて好調な企業業績が続くとの市場の見方が強まるだろう。

今回の上昇を主導しているのは、今年これまで出遅れ感が強かった金融や不動産関連の銘柄であり、CSI300指数を4bp程度アウトパフォームしている。景気循環セクターの好転のきっかけとなったのは、中国人民銀行が先週、10年ぶりに再貸付金利と再割引金利をそれぞれ25bp引き下げたことだ。この動きを契機に、景気循環セクターは回復局面に入ったと我々は考える。

不動産開発業者の6月の売上高が前年同月比13%と力強い伸びを記録したことも、この流れを後押しした。足元のモメンタムは第3四半期も持続する見通しであり、不動産のバリュエーションを後押しする材料となる可能性がある。また、金融セクターでは政策による下支えが続いており、資本市場の改革やブローカー間でのM&A活動の活性化がリスク選好ムードを支えると予想される。

国内の資本市場改革はセンチメント改善にも貢献している。報道によると、中国証券監督管理委員会(CSRC)はパイロットスキームの一環として、中国の大手商業銀行の少なくとも2行への投資銀行免許の付与を計画している。その他にも、スタートアップ企業向け創業板(チャイナネクスト)でのIPOに新たな登録システム導入(ルールの緩和)、レッドチップ企業の国内上場に対する規制緩和、A株指数デリバティブ商品のオフショア市場導入などがある。

全体としては、明確な政策支援があることや、米中関係緊張に対する高い耐性から、我々はH株よりもA株を引き続き推奨する。A株の中では、当面堅調な業績の伸びが見込まれるセクター(ヘルスケア、IT、生活必需品)、および2021年に力強い企業利益の伸びが期待できるセクター(一般消費財、資本財)を勧める。

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