今週の要点

新型コロナをめぐる最新シナリオ

新型コロナ感染拡大の大規模な第2波は今のところ発生しておらず、ワクチンや抗ウイルス薬の開発も進展しており、また、欧州中央銀行(ECB)やドイツの景気刺激策など金融緩和も続いている。これらを踏まえ、我々は新型コロナをめぐるシナリオを更新した。基本シナリオでは楽観的な見方を反映させ、2021年6月末のS&P500種株価指数の目標値を3,300に引き上げた。ただし、集会や国外渡航など一部の制限については2020年末まで継続されるとし、ワクチンの大量生産は2021年にずれ込むと予想する。楽観シナリオでは感染第2波は到来しないと想定し、2021年6月末のS&P500種の目標値を3,500に引き上げた。ただし、これは検査・追跡方法の拡充、またはワクチンの早期量産を前提とする。楽観シナリオでは、マーケットを主導してきた成長株や大型株、米ドル高基調が反転し、コロナ危機下でアンダーパフォームしていた銘柄がアウトパフォームに転じる可能性があるとみている。こうした出遅れ株には一部のバリュー株、シクリカル(景気敏感)銘柄、および米国の中型株が含まれる。実際、先週はバリュー株が成長株を4.8%アウトパフォームし、米ドルは対英ポンドで2.5%、対ユーロで1.7%下落した。

要点:割安なセグメントを選ぶ戦略で、さらなる上値が期待できる。

ヘルスケアと政策支援が長期投資を後押し

世界中がバイオテク企業による新型コロナワクチン開発に注目する中、先週はコロナ以外の分野でも進展が見られた。最新のデータによると、米系バイオ企業が開発中の血友病の遺伝子治療薬は、ほとんどの臨床試験患者に関して効果が最長4年持続し、13人中11人は1年間出血しなかったという結果が出た。この遺伝子治療薬は早ければ今夏にも米国で承認される可能性がある。ヘルスケアセクターは短期的なディフェンシブ投資の選択肢としても、ヘルステック、遺伝子療法、癌治療といった長期投資テーマの投資対象としても豊富な機会をもたらすと期待される。この他にも長期投資を後押しする材料として、ドイツ政府が1,300億ユーロ規模の追加経済刺激策を発表した。このパッケージには5Gネットワーク敷設やインフラ整備への投資促進、電気自動車購入補助金等が含まれており、デジタル・トランスフォーメンションの原動力となるイネーブリング・テクノロジー(実現技術)等の中長期テーマを後押しすると期待される。人工知能(AI)、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)、5G、クラウド、ビッグデータの5つのテクノロジー市場は2019年の5,260億米ドルから2025年には1.1兆米ドルへと、年平均成長率13.4%で拡大すると予想される。

要点:ヘルスケアや、新型コロナを機に加速しているその他の中長期テーマに投資することで、市場の短期的なノイズ(雑音)に惑わされない投資戦略が可能になる。

サステナビリティ重視は今後も続く

6月5日の「世界環境デー」に合わせて、英国の環境団体「ア・プラスチック・プラネット」が世界初のプラスチックを使用しない個人用防護服(PPE)の販売を開始した。また、ニューヨーク州は州最大の風力発電所の建設を承認した。感染対策としてPPEのニーズが高まり、使い捨てプラスチックの利用も急増するなど、コロナ危機下でサステナビリティへの取り組みが後退するとの懸念が広がっているが、一方でこうした直近の動きは、サステナビリティ重視の姿勢が今後も続くとの見方を後押しする。実際、サステナブル資産は堅調に推移しており、グリーンボンドは今年の下落局面でも健闘した。よって、今後もサステナビリティ重視の継続を見込んだ戦略を取ることを勧める。例えば従来のポートフォリオの一部を、グリーンボンドやESG基準で競合他社に先行している企業等のサステナブルな代替投資先に切り替えることが可能である。再生可能エネルギーなど、国連「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿った中長期の機会に注目することもできる。中長期的には、資産クラス全体でサステナブルな投資をポートフォリオに組み入れることで、低成長環境でもリターンを追求できる新しい戦略が構築可能になると考える。

要点:サステナブル投資はコロナ危機下でも比較的堅調に推移した。様々な方法でサステナビリティをポートフォリオに組み込むことができる。

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