今週の要点

下落への防御策

世界各国での経済再開の動きやコロナ治療薬・ワクチンの開発進展など、明るい材料が確認される一方で、投資家は下振れリスクにも引き続き注意が必要である。新型コロナの感染拡大に伴い中国による米国製品の輸入額が減少する中、貿易をめぐる米中の対立が再燃の様相をみせた。トランプ米大統領は6日、中国による米国製品の購入が米中貿易協議の「第1段階」合意で想定した水準に達しているか否かについて「今後1~2週間で報告できる」と述べ、中国をけん制した。ただし、先週末には通商合意の履行に向けて双方が協力することで両国が一致するなど、状況はやや好転した。ドイツでは、ロックダウン緩和後わずか1週間たらずで新型コロナの1日当たりの新規感染者数が再び1,000人を超えた。韓国では新規感染の再拡大を受けてバーやクラブの営業が再び禁止された。しかし、市場が我々の基本シナリオまたは悲観シナリオの方向に傾いた場合、リスク回避型の投資家には、市場から退場するよりもポートフォリオを守る対策を取ることを勧める。具体的には、相場の変動に合わせて機動的に資産配分を変更するダイナミック・アセットアロケーション戦略、インフレに強い金と米国物価連動国債(TIPS)、元本保全型戦略などを追加して、分散的に投資する戦略が有効と考える。また、いち早く経済再開に踏み出し、回復を先導するとみられる中国を含めた、地域分散も有望とみる。

要点:リスク回避型の投資家は悲観シナリオに備えた防御策を取ることを勧める。

新型コロナの影響による中長期的な有望銘柄を探る

我々は、新型コロナ感染拡大収束後の世界を見据え、感染拡大の影響で明暗が分かれる中長期的な勝者と敗者にも注目している。シェアリングエコノミーが苦境にたたされるとの我々の見方を裏付けるように、シェアリングエコノミー大手では大規模な人員削減が相次いでいる。先週は配車サービスの米Uberが14%、民泊大手の米Airbnbが25%の人員削減を発表した。一方で、感染拡大防止策をきっかけにビジネスの成長性が高まっている企業もある。世界の各都市では、ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)措置に沿って、宅配のみに移行したレストランが多いが、感染拡大の懸念が弱まっても人との物理的距離を取る傾向は当面続くだろう。フードデリバリーは年間平均成長率約16%で伸び、2030年には市場規模が3,650億米ドルに達すると予想している。また、今般のコロナ危機で遠隔医療の導入が進み、患者はウイルスの感染リスクに晒されたり医療システムに一層の負担をかけることなく、診察を受けられるようになった。新型コロナの感染拡大以降、ある大手メディカルプラットフォーム企業は月間ユーザー数が10倍に増加した。一方、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)で世界のサプライチェーンは脆弱性を露呈した。危機収束後には企業や各国政府がサプライチェーンを分散させたり、自国付近に移す動きが広まる可能性が高い。オートメーションやロボット関連企業、特に倉庫オートメーションがその恩恵を受け、オンライン小売の拡大とともに構造的な変化による経済成長が見込まれる。

要点:投資家には、この構造的変化から生まれる勝ち組と負け組に注目し、新型コロナ危機後の世界を見据えてポートフォリオを準備することを勧める。

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