今週の要点

1. 米中貿易「第1段階」に合意するも、対立の終結ではない

米中は1月15日、貿易協議の「第1段階」の合意文書に署名した。先月13日に両政府が合意に達したと発表して以来、株式市場は上昇基調を続けている。中国は今後2年間で米国産品やサービスの購入を2,000億米ドル以上増やす一方、米国は関税を段階的に撤廃する。だが、今回の合意内容は限定的なものにとどまっている。第1に、合意によっても関税が完全に解消されるわけではなく、第2段階が決着するまで3,700億米ドル相当の中国製品に対する追加関税は維持される。第2に、合意は部分的な内容であり、摩擦再燃の可能性も否定できないことから、景況感は緩やかな改善にとどまりそうだ。第3に、すでに分断されたサプライチェーンが以前の状態に戻る可能性は低い。関税の影響を受けた中国製品のうち約半分のサプライチェーンはベトナムやマレーシアなど他の国に移っている。とはいえ、今回の合意は景気の下振れリスクを軽減し、新興国市場を中心にリスク資産の見通し改善に寄与するだろう。

要点:今回の合意で貿易をめぐる対立が終結するわけではない。だが、これによって景気の下振れリスクは緩和され、株価の上昇も下支えられるだろう。こうした環境下では、特に新興国株式が有望とみる。

2. 米決算発表シーズン開始 株価になお一段上昇余地

地政学的対立が弱まり、米中が貿易協議の第1段階合意に署名したことを受けて、S&P500種株価指数は最高値を更新した。2019年第4四半期の決算発表シーズンが始まった現在、市場の注目はファンダメンタルズ(経済の基礎的諸要件)にも向けられている。決算発表が進むなか、株価にはなお一段の上昇余地があると我々はみており、今年のS&P500種の増益率は6%と予想している。増益率に関する先行指標も良好で、米連邦準備理事会(FRB)のシニア・ローン・オフィサー・サーベイによると貸出基準も引き続き緩和的である。全体的には、貿易をめぐる対立が和らぎ、低迷していた半導体等の業界が持ち直すとみられることから、昨年の企業業績の伸び悩みが今年も続くとは考えていない。とはいえ、S&P500種の予想株価収益率(PER)は18.6倍と20年間の平均の15.8倍を大きく上回っていることから、引き続き十分な分散投資と銘柄厳選を勧める。

要点:株価には上昇余地が残されていると考える。株式に一度にまとまった資金を投入したくない場合には、決まったスケジュールに沿って買い入れる(投資期間は12カ月以内に設定し、5~10%の株価下落があった場合は購入を前倒しする)、あるいはまず債券を購入し、その後リスク資産に投資する、等の段階的な戦略を勧める。

3. 急成長するデジタル・トランスフォーメンションから投資機会を捉える

台湾政府は先週、5Gの周波数割り当て免許を交付した。割り当て入札の総額は46億米ドルと、人口比でみると今回の入札は世界最大規模となった。こうした結果からも、デジタルサービス分野のビジネスが急成長する可能性が見て取れる。大量のデータを無線で送信できる5Gは、自動運転から遠隔手術まで数多くの新たな応用の道を開くだろう。デジタル・トランスフォーメーションの波に乗るためには、我々が提案する6つの主要テーマに分散投資すること勧める。具体的には、1) 2020~2030年にかけて総データ生成量が10倍以上に拡大する見通しの「デジタルデータ」、2) 今後10年間に年率15~20%の売上増が見込まれる「eコマース」、3) 2025年には人工知能(AI)、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)、ビッグデータ、クラウド、5Gを併せた合計成長率が年率12%前後に達すると予想される「イネーブリング・テクノロジー(実現技術)」、4) 2030年に向けて金融セクター全体の3倍のスピードで売り上げが増加する見通しの「フィンテック」、5) 人口の高齢化に伴う医療費の増加にけん引される「ヘルステック」、6) 今後5~10年の成長率が1桁半ばから後半に達すると予想される「安全性と危機管理」の6分野である。

要点:デジタル・トランスフォーメーションは従来のビジネスモデルを根底から覆すだろう。テクノロジー企業は通常の景気リスクの影響を受けやすいため、同分野における幅広い企業群に投資することを勧める。

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