今週の要点

1. 米国とイランの対立から学ぶ

イランは予告した通り、先週イラクにある米国の軍事基地にミサイルを発射して報復措置を実行した。直後に原油価格は5%急騰した一方、S&P500種株価指数先物は1.7%下落して1日の取引を開始した。しかし、1月8日の記者会見でトランプ大統領が自制的な態度を示したことで両国の攻撃姿勢が和らぎ、中東での対立が市場に長期的影響を与える可能性は低いという我々の見方を裏付けた。米国とイランとの間の緊張の高まりと沈静化に対する市場の反応は、地政学的不確実性に対応する指針となる。第一に、慌てて売りに走ることは禁物で投資を続けることだ。S&P500種は両国の軍事緊張の高まりで一時1.1%下落したが、その後すぐに持ち直して最高値を更新した。第二に、政治的リスクに対するヘッジを探しているなら、金投資を検討するとよいだろう。金は先週0.6%上昇し、ファンダメンタル要因の下支えもある。第三に、下振れリスクが心配なら、現在の低いボラティリティを活かして下落リスクへのプロテクションを講じることもできる。

要点:地政学リスクの再燃を理由に投資目標の追求を中断することは避けたい。投資を続けることを基本としたうえで、政治的不確実性へのヘッジとしての金投資や、現在の低ボラティリティを活かしたプロテクションを検討することができる。

2. 環境への配慮が優先

グリーンボンドは昨年、発行額が2,300億米ドル超と過去最高を記録し、急速に投資の主流になりつつある。2018年の発行総額は1,710億米ドルだったが、2019年は9月末の時点でこの水準を上回った。一方、企業によるグリーンイノベーションへの取り組みも進んでおり、リチウムイオンよりもクリーンでエネルギー効率も高いとされるバッテリー技術の開発を進めている企業もある。政策当局者も持続可能性の拡大を目指す施策を推し進めており、オーストリア政府は国内すべての電力を2030年までに再生可能エネルギー源から発電し、2040年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げている。こうした動きは、今後10年で政府、消費者、そして民間企業が持続可能な投資と商品にシフトするという我々の見解を裏付けている。このトレンドに先行する投資家は、恩恵を受けることができると考えている。

要点:従来の債券をグリーンボンドや国際開発金融機関(MDB)債に切り替えるなど、伝統的な投資の一部を持続可能な代替投資に切り替えることで、サステナビリティ(持続可能性)投資への移行が可能である。

3. 英ポンド下落は中長期的な同通貨の下落を示している訳ではない

英国議会はジョンソン首相が提出したEUからの離脱法案を1月9日に可決し、1月末の正式なEU離脱が整った形だ。英国政府は今年予定されているブレグジットの移行期間の延長を拒否しているが、欧州委員会のフォンデアライエン欧州委員長は先週、延長しなければEUと英国の新たな関係のすべての側面について合意することは困難だと発言した。今年中に新たな通商協定が締結されないリスクから、英ポンドは12月の英総選挙後の高値から下落した。さらにイングランド銀行のカーニー総裁が、英ポンドが再び下落した場合は短期の刺激策を考慮すると発言したことで、下落に拍車がかかった。とはいえ、英ポンドは割安な状態が続いており、ブレグジットをめぐる国民投票が実施されて以来、割安度は拡大している。英ポンドは長期的には上昇する余地があると我々は考える。

要点:短期的下落があっても、英ポンドは中長期で見ると割安な状態が続いている。ポートフォリオに英国株式を有する投資家には為替ヘッジを勧めない。

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