ヘリコプターを求む

フランシス・コッポラ監督は、映画「地獄の黙示録」の撮影には政府のヘリコプターが必要だとわかると、ロケ地をフィリピンにし、同国マルコス大統領(当時)は軍用機の貸し出し要請に応じた。

政府のヘリコプターの必要性は、退任が近づく欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の最近の記者会見でもテーマになった。「ヘリコプター・マネー」で欧州景気を刺激できるのか、との質問に対し、ドラギ総裁は「人々に金を渡すのは、それがどのような形であれ財政政策の仕事であって、金融政策ではありません」と述べた上で、「財政政策の出番が来たと私は考えています」と付け加えた。

中央銀行の幹部たちの判断と期待はともかく、朝の地平線に豊富な紙幣を積み込んだヘリコプターはまだ見えてこない。「地獄の黙示録」で使われたヘリコプターによる効果に対する見解やヘリコプター・マネーに対する経済的見識は横に置き、本レターでは、市場に影響を及ぼす財政政策と金融政策の動きに目を向けたい。

ドイツには財政面から景気刺激策を実施する余地がある。しかし、経済危機が本格化するまでは積極的にそうする気がないようだ。一方、米議会は上下両院で多数政党が違うねじれ状態にあるため、来年の米大統領選挙までは大規模な景気刺激策の障害となるだろう。中国には財政政策の手段も意欲もあるが、債務の伸びを抑えるために、現在の景気サイクルでは緩やかな刺激策にとどめる可能性が高い。

現在の景気減速に対処するには、金融政策に再び頼る必要がありそうだ。各国中央銀行は今後数カ月で追加金融緩和策を実施するだろう。その結果、米国とユーロ圏経済は景気後退を回避し、市場の下落は緩和されるだろう。さらに、予定されている追加関税が発動される前に、通商交渉が予想外の進展を見せる可能性もある。米中貿易交渉の進展なしでは、各国中央銀行は市場を本格的に押し上げるほどの影響力があるとは考えにくい。しかも、貿易交渉合意への期待はこれまで何度も裏切られてきた。

我々は、戦術的(短期的)ポジションとして、株式をアンダーウェイトとする中で、ユーロ圏株式に対し米国株式をオーバーウェイトとし、一部の新興国通貨、米ドル建て新興国国債、欧州投資適格債をオーバーウェイトとするインカム収入獲得戦略を取る。

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