House View Weekly 金融政策の限界

米中貿易摩擦は依然として相場の変動要因となっており、米中貿易交渉の第1段階の合意に向けて協議が進展した結果、先週は米国株式が過去最高値を更新した。米連邦準備理事会(FRB)は先週利下げを実施したが、今後は金融政策が相場の方向性を決定づける可能性は後退したと考えている。

04 11 2019

今週の要点

1. 過去最高値を更新した米国株式が引き続きユーロ圏株式より有望

米中の貿易協議をめぐる進展の兆しと市場心理の好転を受けて、S&P500種株価指数は11月1日に過去最高値を更新した。トランプ米大統領は米中の貿易協議の「第1段階」として、予定より早く「かなり大きな内容の」合意に署名する可能性があると述べた。暫定合意が成立すれば市場にくすぶる重要なリスクは大きく後退するだろうが、株価(特にユーロ圏)がここからどれだか上昇するかについて我々は慎重姿勢を崩していない。400億~500億米ドルにのぼる米国産農産物の購入を中国が約束したというトランプ大統領の発表は非現実的であり、中国は長期的かつ包括的な合意に至るかどうかについては懐疑的だとブルームバーグが報じていることもあり、通商合意が長続きするかが疑問視されているからだ。製造業を中心に景気の伸びは依然減速している。10月の米国ISM製造業景気指数は48.3で、ユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)はそれを下回る45.9だった。企業利益の伸びも減速しており、7–9月期(第3四半期)の1株当たり利益は米国では平均で2%、ユーロ圏では5%の低下が予想されている。

要点:我々は株式に対する小幅のアンダーウェイトを維持し、米国とユーロ圏の景気と企業利益の見通しを比べた上でユーロ圏株式よりも米国株式を推奨する。ただし、中国からの輸入品に対し12月に予定されている関税引き上げを米国が無期限で保留したり、製造業が世界的に急回復するなど、予想外の明るい材料が見えた場合は、株価を押し上げる可能性がある。

2. FRBの利下げが一段落

FRBは3会合連続して25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施し、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50–1.75%に引き下げた。これを好感して株式市場は上昇し、S&P500種は10月30日に0.3%上昇した。パウエル議長は景気がFRBの予想通りに推移する限り、現在の政策スタンスは「適切である可能性が高い」として、利下げ休止を示唆した。旺盛な消費支出により米国の第3四半期のGDP成長率は1.9%拡大、インフレ率も年率換算で2.2%と、FRBの目標近くで推移するなど、直近の経済指標はFRBの政策スタンスを下支えている。関税引き上げによる景気の一段の減速、雇用の伸び悩み、消費支出の低下の兆しなどが同時発生しない限り、FRBが利下げを再開することはないだろう。

要点:FRBは今後利下げを休止する模様だが、消費支出の不振が景気の鈍化を招いた場合、一段の利下げを迫られる可能性がある。FF金利の先物市場は現在のところ、2020年末までに40bp前後の利下げを織り込んでいる。米国株式の中では、旺盛な消費支出を追い風に消費財と生活必需品セクターが堅調とみられる。

3. ブレグジット:離脱に先立つ総選挙

英国は12月12日に総選挙を予定している。これについて我々は次の3つのシナリオを想定している。1)世論調査の大半が示唆するように、保守党が単独過半数を獲得した場合、1月31日のEU離脱に必要な新協定案を議会が可決承認し、少なくとも2020年12月まで移行期間に入ることが予想される。2)保守党が単独過半数を獲得できなかった場合、連立政権の下でブレグジットがさらに延期され、国民投票が再実施される可能性が高い。3)いずれの政党・政党グループも過半数に及ばない場合、合意なき離脱のシナリオが想定され、英ポンド/米ドル相場が1.12に下落するおそれがある。しかし、このシナリオの可能性は最も低いと考えている。

要点:英ポンドは対ドルで上昇し、月間の上昇率としては21カ月ぶりの大きさとなったが、依然として割安であると考える。我々は中長期的に英ポンドが上昇するとみており、英国株式への戦略的(長期的)エクスポージャーに対するヘッジを外した。



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