米経済指標低調で、成長リスク高まる

今週の要点

1. 米経済指標低調で、成長リスク強まる

先週発表された米国の9月のISM製造業景況感指数は47.8と、約10年ぶり の低水準となった。非製造業景況感指数も56.4から52.6に低下し、市場予 想を大幅に下回った。こうした低調な経済指標を受けて、S&P500種株価指 数は週半ばに3%、ユーロストックス50指数は4%下落した。米国10年国債 の利回りは1.6%を下回った。確かに、製造業セクターは米国経済の10%程 度を占めるに過ぎず、製造業の低迷が必ずしも米国経済全体の景気後退に まで発展するわけではない。ISMの非製造業景況感指数は50を上回り、景 気の拡大を示す領域にとどまっている。製造業そのものの指標からセンチメ ントの弱さが裏付けられれば、米連邦準備理事会(FRB)が10-12月期(第4四 半期)に追加利下げに踏み切る可能性も強まるだろう。さらに今週は、米中が 貿易協定で暫定合意に至る可能性があり、もしそうなれば、リスク選好度を 下支えするだろう。しかし、経済指標の好転と米中貿易紛争の長期休戦が確 認されない限り、株価がここから持続的に上昇する可能性は低い。特に、最 近の指標を見る限り、慎重な姿勢が引き続き求められる。

要点:我々は株式全体についてはアンダーウェイトとし、その中で欧州株式に 対し米国株式をオーバーウェイトとしている。FRBは、欧州中央銀行(ECB)より も、世界経済の減速に対処する手段をより多く持ち合わせているからだ。セクタ ー別では、景気に左右されにくい通信サービス、生活必需品、ヘルスケアをオ ーバーウェイトとする。

2. 弾劾のノイズは市場に影響せずとも、不透明感は高まる

先週はトランプ米大統領の弾劾調査に関するニュースがさらに続き、政治を めぐる不透明感が高まった。しかし、2020年の大統領選を前に、この政治的 不確実性は必ずしも米国の政策に影響せず、マクロ経済や市場のファンダメ ンタルズ(基礎的諸条件)への影響度はさらに低い。下院は民主党が多数党 となったため、共和党の協力がなくとも弾劾訴追決議の成立に必要な単純過 半数は獲得できる。しかし、上院の弾劾裁判を通じて大統領を罷免するには 3分の2の賛成票が必要となり、かつ上院は共和党が過半数の議席を占めて いることから、トランプ大統領は無罪となる可能性が高い。これまで上院で有 罪とされた大統領はおらず、弾劾手続きの前例も少ない。過去を振り返って も、この政治的手続きが市場に大きな影響を与えうるかどうかを確認できる 事例はない。したがって、政治動向を予測したり、結果に反応して、性急に投 資判断を行わないことが賢明である。

要点:CIOの「グローバル・リスク・レーダー」レポートでは、マクロ経済と市場に 影響を及ぼしうる複数のテールリスクを取り上げている。米国の政治はマクロ 環境に影響を及ぼすまでには至っていないとみているが、2020年の(大統領 と議会)選挙の前後でリスクの発生確率が変動するか、引き続き注視していく。 また、投資家への影響が大きい米中貿易交渉の進展具合にも注目していく。

3. 不動産投資家は我慢の時

「UBSグローバル不動産バブル指数」の対象24都市において、2012年以降 初めて、インフレ率調整後の平均不動産価格の上昇が止まった。市場は世 界金融危機前ほど過熱しておらず、借り入れの伸びはGDP成長率程度にと どまっている。しかし、レポートは、複数の理由から市場が一段と冷え込む可 能性があると指摘している。多くの都市では、アフォーダビリティ(買いやすさ) が低下する中、一段の値上がりが抑制されている。この10年間で、住宅の買 い手が都心部の近くに60平方メートルのマンションを買うのに必要な平均勤 続年数の中央値は、5年から7年に上昇した。一部の都市では、これ以上の 値上がりを抑えるため、政府による規制が導入されるリスクが増大している。 住宅価格の上昇に伴い雇用の郊外化も進んでおり、都市の魅力にも変化が 起きている。しかし、一部の都市ではバブルの可能性が引き続き高まってい る。低金利に支えられて、ユーロ圏内のすべての都市ではバブル指数のスコ アが上昇し、短期的な上振れ余地は限定的となっている。よって、一部の都 市を除き、投資家がキャピタルゲインを得るには、中長期の投資期間が必要 になるだろう。

要点:不動産は投資家の資産プランの重要な一部であり、高いバリュエーシ ョンは必ずしも投資の損失を意味するものではないが、「バブルのリスクが高 い」都市でマンションを購入した場合、その後の価格上昇は限定される公算 が大きい。

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