• 世界的なマクロ経済の回復と低利回り環境により、低格付け債への投資を求める動きが強まっている。
  • グローバル・アジア・クレジット・オポチュニティ(GACO)ポートフォリオにおいては、良好なファンダメンタルズ(基礎的諸条件)、魅力的なバリュエーション、比較的短いデュレーションに基づき、中国ハイイールド債とアジア・ハイイールド債を推奨する。
  • 潜在的なリスクとして、中国不動産セクターの信用または世界の流動性の積極的な引き締め、あるいは米国国債利回りの低下があげられる。

2020年は、グローバル・クレジット投資家にとって予想よりも良い年となった。異例の量的金融緩和策と大規模財政支援策が奏功し、高格付債、投資適格債、ハイイールド債のリターンは5~10%に及んだ(図表1)。2021年は、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)のさらなる回復と景気対策の継続が期待される。最も魅力度が高いクレジット領域は、中国ハイイールド債とアジア・ハイイールド債と考える(表1)。

中国ハイイールド債とアジア・ハイイールド債のバリュエーションは魅力的である。本稿執筆時点のスプレッドは、欧米のハイイールド債が20パーセンタイルの領域にあるのに対して、両ハイイールド債はそれぞれ60パーセンタイル、90パーセンタイルの水準にある(図表2)。絶対ベースの利回りは、同格付けの米国、欧州のハイイールド債が4.9%、3.9%の水準にあるのに対して、中国、アジアのハイイード債はそれぞれ7.9%、7.0%の水準にある(図表3)。世界的な低利回りの環境を考慮すると、景気回復が進むにつれて中国、アジアのハイイールド債セクターへの資金流入が拡大すると予想する。

マクロ面でも中国とアジアは堅調な回復を示している。中国では、鉱工業生産が2020年4月以降、前年比5~7%増を維持し、小売売上高も過去2カ月にわたり5%増の水準まで反発した(図表4)。一方、欧米では、鉱工業生産が漸く前年比で横ばいまで戻し、小売売上高は直近の新型コロナ感染者数拡大により不透明感が高まっている(図表5)。

よって、アジアと中国企業のファンダメンタルズ、特にハイイールド債の領域において耐性が高いことも確認された。信用格付けの変更について、アジアは格下げよりも格上げの方が多く、格上げへの変更ペースは先進国を上回っている(図表6)。アジアにおいて、ネット・レバレッジ・レシオ(負債比率)は、2015/2016年の局面よりもパンデミック期間の方が低い(図表7)。今後数カ月は、企業業績の一段の回復により負債比率は改善するだろう。足元の世界的な新型コロナ感染者数の拡大により景気回復ペースは遅れるものの、頓挫することはないと考える。

債券のデュレーション(満期までの残存期間)は短期の債券を推奨する。量的金融緩和の縮小または金利正常化の問題は、行われるか否かではなく、いつ行われるかである。したがって、指標となる利回りの上昇トレンドが定着しても、短期デュレーションであれば比較的リスクが抑えられるだろう。中国ハイイールド債、アジア・ハイイールド債のデ ュレーションはそれぞれ2.3年、3年であり、アジアと米国の投資適格債のデュレーションよりも2.5~5.0年短い。

我々の投資見解に対するリスクとして、中国不動産セクターの信用または世界の流動性の積極的な引き締め、あるいはリスクオフ・センチメントの広がりによる米国債利回りの低下があげられる。不動産融資についての足元の規制上の指針は、堅調な販売ペースを踏まえると中国不動産開発企業にとって、依然として対応可能と考える(図表8)。不動産開発企業は、営業利益の伸びが債務の伸びを上回っていることから、今後信用状況は改善するとみている。

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