• ロックダウン(都市封鎖)緩和開始を踏まえ、我々は新型コロナに関する今後6-12カ月のシナリオを更新した。新しい基本シナリオでは持続的な景気回復が今年7-9月期(第3四半期)から始まり、経済・社会活動は2021年上期に正常に戻ると予想する。緩やかな規制は2020年年末まで継続されるだろう。楽観シナリオでは経済は早ければ今年下期にも正常に戻ると見込む。悲観シナリオでは依然として大規模な感染「第2波」を想定している。
  • 先進国でロックダウンの緩和が徐々に開始されるなか、治療薬やワクチンの最新の臨床試験結果や、経済再開後も大規模な感染第2波が確認されていないことなどから、楽観的な見方も浮上している。一方、各国政府は過去に例のない規模の流動性供給と財政刺激策により、引き続き景気回復と資産価格を下支えしている。
  • 基本シナリオでは、コロナ禍の影響で出遅れていた銘柄に牽引される形で、今後12カ月は株式がプラスリターンになるとみている。債券のリスク調整後リターンが引き続き魅力的と考え、米投資適格債、米ハイイールド債、米ドル建て新興国国債、グリーンボンドを推奨する。米ドルは今後多くの主要通貨に対して下落すると見ている。

新型コロナの感染が中国国外で急速に拡大し始めた2月~3月以降、市場は感染拡大に関するニュースに大きく揺れ動いてきた。例えば、S&P500種株価指数は、約3,400の過去最高値からわずか4週間で30%超下落し、3月23日に2,237をつけた。しかしその後パンデミックの封じ込めが奏功するにともない、3,000を上回る水準にまで回復した。

現在、欧州と米国では新規感染者数は概ね抑制傾向にあり、治療薬やワクチンの開発も急速に進められており、検査能力も大幅に拡充している。長引く活動規制に市民の不満が高まり、各国は経済再開に動き出し、人々は自宅を出て店舗やレストランを訪れ始めている。米国の活動状況の指標として我々が重視している「グーグル・コミュニティ・モビリティ」レポートによると、危機前の水準と比べて小売店と娯楽施設の移動トレンドは-22%、主要駅の人出は-37%にまで戻っている。重要な点は、これまでのところ、人の往来の回復が1日当たりの新規感染者数の大幅な増加につながっていないことだ。感染再拡大のリスクは払拭しきれないが、こうした状況から、当初想定していたほど感染再拡大が深刻化しないとの楽観的な見方が浮上している。

SARS-CoV-2ウイルスと、それが引き起こす新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、なお解明されていない部分も多いが、ここ2カ月で分かってきたこともある。抗ウイルス薬のレムデシビルは、目覚ましい特効薬とは言えないかもしれないが、臨床試験では有効性を示す結果も出ており、医療機関の負担を軽減する可能性がある。その他にも多くの治療薬の開発が進められている。米政府は、官民連携で新型コロナのワクチン開発・生産・供給を急ピッチで進める「ワープ・スピード作戦」を開始した。感染「第2波」は当初懸念していたほど深刻化しないとの楽観的な見方も浮上している。新型コロナの感染では、通常よりも多くの人にウイルスを移す、いわゆる「スーパー・スプレッダー(感染者)」の存在が大きいと指摘されている(ただし、どの程度拡散するかについてはまだ不明な点が多い)。実際にこのスーパースプレッディング現象が発生していた場合、2つの重要な帰結が考えられるだろう。つまり、感染拡大に歯止めをかけるために必要な免疫保持者の割合が当初想定よりも低い可能性、そして、対象を絞った隔離措置が感染拡大の封じ込めに効果を発揮する可能性があるということだ。

しかし、下振れリスクをすべて排除するのは時期尚早だ。各地で実施された大規模な抗体検査では、米国や欧州主要国で感染によってウイルスへの免疫を確保した一般市民は2~10%程度であるこが示唆された。例えば、集団免疫率がすでに20%に達していたとしても、まだ感染が拡大する可能性がある。特に感染がこれまでさほど拡大していない地域では、社会活動の再開により新たな感染拡大のリスクが発生し得る。米国では少なくとも10州で、今も入院者数が増加している。だがそれでもこれらの州では規制を解除する方針のようだ。一方、新興国のブラジルとインドでは感染者数が依然として増加している。このように、感染状況は地域によってばらつきがある。

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