• 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と各国の政策対応は、この数カ月にわたり金融市場を動かす最大の要因となっている。我々は新型コロナをめぐる3つのシナリオを想定し、今後数カ月の投資に及ぼす影響を説明する。
  • 基本シナリオでは、感染封じ込め策が欧州では5月中旬ごろに、米国ではそれより少し遅れて解除し始めると想定している。その結果、景気は緩やかなU字回復を辿ると予想する。
  • 政策支援の効果が経済に波及すると期待されるため、債券(特に米ハイイールド債、米ドル建て新興国国債、米投資適格債)への投資を引き続き推奨する。また、株式は銘柄を厳選することを勧める。
  • 市場のさらなる下落を警戒する投資家には、1)高格付債への戦略的資産配分を増やす、2)ダイナミック・アセットアロケーション戦略を加える、3)金や米長期国債をポートフォリオに追加するなどの戦略が有効と考える。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な感染拡大)はここ数カ月で、金融市場を動かす最大の要因となっている。株式市場は3月に過去最大級の下落幅を記録した後、直近では回復の兆しを見せているが、今年につけたピークを依然として下回る水準にある。債券も大きく売られ、価格には2008年世界金融危機時の水準に近いデフォルト率が織り込まれている。猛威を振るうウイルスに対して世界各国は大半の経済活動を停止する選択をし、感染拡大のペースを落とし、医療機関が迅速に対応できる態勢を整え、人類が直面する悲劇がこれ以上深刻化しないよう取り組んでいる。政府の各種規制は、感染拡大のスピードが大きく減速し、新規感染者の急増する可能性が抑制されるまで続けられるだろう。次の表1に、各国の感染状況と今後の見通しをまとめた。以降のセクションでは、パンデミックをめぐる想定シナリオ、経済的な影響、そしてシナリオ別の投資戦略を提示する。

慎重に先を見据える

企業収益やデフォルト(債務不履行)など、経済活動の様々な予想を立てる上で最も重要な前提となるのは、現在の経済閉鎖がどの程度続くのかということだろう。それは、感染拡大の抑制スピードが大きな決定要因となるが、そのほかにもウイルスの進化、治療薬・ワクチンの開発、感染拡大の第2波のリスクなど経済閉鎖期間そのものに影響を及ぼす他の要因や、財政・金融的支援の規模など経済的打撃の深度に影響を及ぼす要因によっても変わってくる。

我々は今後6~12カ月について、大きく3つのシナリオを想定した(表2)。

  • 基本シナリオ:感染拡大封じ込めを目指す厳格な行動規制措置が、欧州では5月中旬までに、米国では6月初旬までに解除されるが、一部の規制が年後半に再導入される。協調的な金融・財政対応策によって、最終的には影響を受けた企業と産業を支援するのに必要な資金が供給されるが、支援開始のタイミングが遅すぎたためすべてを守り切ることはできない。景気は2020年第3四半期から2021年第1四半期にかけて、緩やかなU字回復を辿るだろう。グーグルの「コミュニティ・モビリティ・レポート」を指標とする消費活動は、2020年12月までに、コロナ危機前を20%下回る水準で安定するだろう。
  • 悲観シナリオ:感染拡大が再発すると抑制が難しくなり、厳格な規制が断続的に再開される。債券市場が安定せず、金融政策効果が適切に波及しないため、景気回復はL字型となる。グーグルのコミュニティ・モビリティ・レポートを指標とする消費活動は、少なくとも2021年6月までは (危機前を20%下回る水準まで) 安定的に回復しない。
  • 楽観シナリオ:技術の進歩と有効な治療薬の開発によって感染拡大が徐々に抑制され、欧州と米国では2020年第3四半期までに規制が段階的に解除される。景気はV字回復を示す。グーグルのコミュニティ・モビリティ・レポートを指標とする消費活動は、2020年6月末まで危機前を20%下回る水準を下限に安定的に推移する。

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