米国の大統領選まで3カ月を切った。有権者は、トランプ大統領を再選させるか、バイデン元副大統領を選択するか、決断の時が迫っている。新型コロナは2020年米大統領選挙戦を混乱させ、各候補者の選挙戦略から11月の米国民による投票方法に至るまで様々な側面に影響を与える。

今年の初めはトランプ大統領が2期目に向けて好位置につけているようにみられたが、最近の世論調査はバイデン氏有利に傾いている。現在ベット市場(予測市場)は、2021年におよそ60%の確率で政権交代があり、また60%に近い確率で民主党が上院と下院の過半数を獲得すると見ている。

国政選挙の3カ月は長期間であるため、我々は勝者の予想は控え、投資家には現時点で急なポートフォリオ調整は勧めない。

とは言え、2人の候補者が持つ米国のビジョンは大きく異なり、米国とアジアの経済国(特に中国)との関係についての見方もある程度異なっている。従って、それぞれの政策課題の影響を理解することが重要だ。7月6日付の我々のレポート「米大統領選に向けたポートフォリオの準備」では、実現可能性があると思われる4つのシナリオが米国に及ぼす大きな影響を紹介した。

  • Blue Wave(民主党圧勝:大統領職、上院、下院):増税と規制強化の影響が財政支出拡大によって相殺されるため、経済成長にはややプラス。一方で、刺激策のために金利と物価の上昇が加速する可能性がある。
  • バイデン勝利(民主党:大統領職、下院 / 共和党:上院):規制を通した政策が多く導入される可能性が高いため、経済成長には中立的かややマイナス。財政刺激策は抑制され、実質的な税制改革は行われない。金利とインフレ期待は概ね現状維持。
  • 現状維持(共和党:大統領職、上院 / 民主党:下院):規制緩和が継続されるが、先行き不透明感は引き続き強いため、経済成長には中立的。貿易摩擦が悪化する中、地政学的緊張が高まる可能性がある。金利とインフレ期待は概ね現状維持。
  • Red Wave (共和党圧勝:大統領職、上院、下院):追加減税とインフラ支出が実施される可能性があるため、経済成長にはややプラス。規制環境は依然として緩やか。財政赤字が拡大するため、金利とインフレ期待の上昇はやや加速。

以前のレポートで指摘したように、大半の国政選挙は世界的なイベントではない。だが、米国選挙は例外だ。そして今回の選挙は、記憶に残る最近の選挙の中では最もアジアにとって重要になる。中国への厳しい姿勢は、米国の中で党を超えた支持を得ているが、米中関係の中での全体的なアプローチと重点事項は候補者によって異なる可能性が高い。米中関係への影響のほかにも、バイデン陣営が提案する国内課税措置、投資、規制の大幅な変更が、アジア全体に影響を及ぼすだろう。

本稿では、米国選挙がアジアの投資家と金融資産にどのような影響を及ぼすかに注目し、以前紹介した4つのシナリオのアジア経済と金融市場への影響について評価する。

House View レポートの紹介



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