• アジアの株式市場(MSCIアジア指数(日本除く))は、中国武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大懸念から、1月20日以降で2~3%下落した。この修正局面の前には、米中貿易協議の第1段階合意による安堵感から相場が高値に上昇していたが、上げ相場も一服の印象となった。
  • ウイルスの感染拡大が抑制されれば、アジア経済と株式市場への影響は長期には及ばないだろう。湖北省武漢市は23日、公共交通機関の運行を一時停止し、感染の封じ込めに向け措置を強化した。市場の反射的な反応は戦術的(短期的)な買い場になるとみているが、航空や観光、一部の消費関連産業などのセクターでは一時的にセンチメントが落ち込みそうだ。
  • アジアの企業収益は2020年には大幅な回復が見込まれ、さらに株価も割安であることから、我々はアジア株式全般と中国株式について強気の見方を維持している。アジア市場の相場は依然として世界市場よりも33%割安だ。過去平均の23%割安な水準も下回っている。具体的には、営業利益率が改善している中国のインターネット銘柄、5G関連の設備投資拡大から恩恵を受ける5G関連銘柄、景気動向に左右されにくく、収入が安定的な優良高配当銘柄を推奨する。またアジアの通貨の中では、高利回り通貨が有望とみる。

我々の見解

アジアの株式市場(MSCIアジア指数(日本除く))は、米中貿易摩擦をめぐる先行き不透明感が薄れたことから投資家がリスクオンに転じ、12月初旬以降9%上昇した。しかしこの上昇基調は1月20日に一旦ストップした。中国武漢市での新型肺炎ウイルスの集団感染がさらに広い範囲に拡大 (エピデミックに発展)する恐れがあり、消費、旅行、観光関連セクターに影響するとの懸念が高まったからだ。感染が疑われる人や感染が確認された人が増える中、中国では推定4億5,000万人が中国全域を移動する春節を数日後に控えており(訳注:24日に連休開始)、投資家は警戒感を募らせている。政府は23日、武漢市の公共交通機関の運行を一時停止し、集団感染の封じ込めに向けて措置を強化した。

アジア経済成長の下振れリスク

大規模な集団感染はアジア経済の回復見通しに下振れリスクとなる。我々は第1四半期がアジアの国内総生産(GDP)と企業収益の成長にとっての転換点になると予想していた。だが状況が悪化すれば、転換の時期は1四半期程度、遅れるかもしれない。

この見方は、集団感染の抑制には時間がかかり、消費者の自由裁量支出に悪影響が生じる可能性があるとの我々の予想に基づいている。しかし、緩和的な金融政策が続き、世界的に景気回復も見込まれることから、経済成長が一時落ち込んだとしてもその後に大きく反発すると予想する。これは2003年にSARSのエピデミックが発生した局面でも見られた。新型肺炎の集団感染が発生してからまだ間もないが、現時点 では経済的な打撃が及ぶ期間は1四半期(2020年第1四半期)にとどまると予想している。これまでの観察によると、ウイルスの毒性と死亡率はSARSほど高くはないため、経済的な影響の規模は、SARS感染がアジアに広がった2003年よりも小さくなる見通しである。ただし、感染状況が終息に向かう前に現状より一時悪化する可能性があり、国内消費が一時的にではあるが、大幅に落ち込むおそれもある。流行が8カ月に渡って続いたSARSの場合でも、経済的な影響が感じられたのは1四半期間だけだった。さらに、需要は、当局による集団感染の終息宣言を待たずに、感染者数がピークに達した直後には回復に向かうとみられる。

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