• アジア株式市場は、米中間の貿易摩擦における緊張の高まりと軟調なマクロ経済データの発表により、4月の堅調な上昇から一転して下落に転じた。
  • 米中貿易摩擦再燃がアジアの株式市場および通貨にとって当面のリスクとなっている。しかし足元は、移動制限の緩和の方が相場への影響力が大きいと考える。よって、我々はアジア(除く日本)株式のオーバーウェイトを維持する。
  • 株式では、自動車、家電、運輸、飲料、小売、一部カジノ等、個人消費の回復により恩恵を受けるセクターに着目している。通貨では、人民元、韓国ウォン、日本円をオーバーウェイトとする。

アジア株式:移動制限の緩和は米中間の通商上の緊張高まりより影響力が大きい

アジア株式市場は5月4日に急落した。トランプ米大統領が、新型コロナウイルス感染拡大を巡る中国の対応に対し、新たに中国に関税を課すことを検討すると表明したことが背景にある。株式市場は、3月23日から4月30日までの間に22%(MSCIアジア(除く日本)指数)上昇した後、下落に転じた。アジア株式市場は、グローバル株式市場に対して35%(長期平均:約23%)ディスカウントされた状態で取引されている。アジア企業の2020年の利益成長率は横ばい(グローバルでは約-20%)と予想されており、アジア株式市場のリスク調整後の期待リターンは魅力的と考える。

米中貿易摩擦の再燃はアジア株式市場にとって当面のリスクであり、相場変動が一段と高まる可能性がある。しかし、昨年の経験を踏まえ、関税引き上げや新たな資本規制等、急激な緊張の高まりがない限り、企業業績および市場への影響はある程度の範囲で収まると考える (図表1)。

アジア地域では、移動等の制限の緩和の方がリスク資産にとって重要だ。アジア市場の大半は、新型コロナウイルスの感染拡大が比較的進んだ局面にあると考える。経済活動の再開は7-9月期以降の堅調な景気拡大を後押しし、年後半および2021年の経済のファンダメンタルズの改善につながるとみている。5月4日の市場の下落後、株価純資産倍率(PBR)が約1.3倍とサイクル中盤のバリュエーションに対して20%近いディスカウントで推移しており、バリュエーションは割安で大きなプラス材料と考える。この状況は、我々のアジア(除く日本)株式のオーバーウェイト(対債券)を裏付ける。

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