投資テーマ「長期的に円をオーバーウェイト」を終了する
  • 過去6カ月にわたり、円が幅広く上昇したことから、投資テーマ「長期的に円をオーバーウェイト」を終了することとする。ドル円は4月の112円から当月上旬に105円台まで(ドル安方向に)大きく下落したことから、当面は値固めの局面に入ると見込む。今後数カ月間は上昇リスクと下落リスクが拮抗するとみており、現時点では円のオーバーウェイトのポジションを新たに構築することは推奨しない。
  • 円オーバーウェイトの投資テーマは終了するが、日本株式投資における為替オープン のアプローチは維持する。円が短期的に上昇する余地は限られるとみているが、一方で、下落リスクも限定的と考える。長期的には、円には引き続き大きな上昇余地があり、いずれ円高方向に進むと予想する。よって、 日本株式を保有する投資家には為替ヘッジを行わないことを勧める。

今年2月、我々は、米ドル、人民元 、スイス・フランの均等加重通貨バスケットに対する円の上昇を見込んで 「長期的に円をオーバーウェイト」という投資テーマを開始した。2月の時点で、我々は、景気環境の改善・悪化いずれの局面においても、円が上昇するという見方をとった。グローバル景気のモメンタムがさらに減速する場合でも、あるいは日本の経済成長が上昇に転じ、日銀がついに緩和政策の正常化に踏み切る場合であって も、円のリスクは上振れ方向に傾いていると考えた。2月以降、世界経済の成長率が大きく減速し、下振れシナリオを裏付け る形となった。市場は、こうした新たな状況に順応した。日銀の追加緩和策の可能性、そして 米連邦準備理事会(FRB)を始めとする各国中央銀行の極めて積極的な緩和バイアスも市場は織り込んだ。米中貿易紛争の激化により、安全資産とされる円に対する需要はさらに高まった。また、 この投資テーマは人民元の下落からも恩恵を受けた。8月上旬以降、米ドル/人民元は、節目である7.0の水準を超えて(米ドル高元安方向に)上昇した。こうした動きを受けて、円については、足元で上昇リスクと下落リスクが拮抗しつつあると考える。よって 、円のオーバーウェイトについて、短期的に利益確定の売りを行うこととする。

円の上昇は当面一服

この数カ月、日銀は円の上昇を容認する姿勢を示した。しかし、円高進行のペースがかなり速いことから、今後数カ月間は上昇余地が限定化されると見込む。これまで同様、上昇のスピードと幅には適度なバランスが必要である。値固めの局面を経て経済が順応できるようになれば、さらなる円の上昇を日銀が許容する可能性も出てくる 。

ドル円が4月の112円近辺から8月上旬に105円台まで大きく下落したことから、投資テーマ「長期的に円をオーバーウェイト」のリスク調整後の期待リターンは低下したものと考える。今後数カ月は、円は値固めの局面に入るとみている。市場は現在、FRBによる追加利下げについて、2019年末までに65ベーシス  ポイント(bp)、2020年7月末までに99bpと、かなり積極的に織り込んでいる。このため、特にFRBの利下げ幅が市場の期待に届かなければ、ドル円の短期的な下落余地は限られると考える。我々の基本シナリオでは、FRBの利下げ幅は来年6月までに75bpと予想しており、市場コンセンサスに比較すると小さい。また、日銀が金融緩和政策を一段と強める可能性も高まっているとみている。我々は、日銀が国内外の景気減速を背景に、9月または10月に翌日物金利を15bp引き下げると予想しており、  ゼロ%程度を 目標値とする10年国債利回りの許容変動幅も、現在の+/-0.2%から拡大する可能性がある。そうした日銀による緩和政策によっても、直近の円高の動きは一服すると考える。

再び「長期的に円をオーバーウェイト」とする機会をうかがう

しかしながら、再び魅力的な水準が到来すれば、長期的な円のオーバーウェイトを再開したい。市場のリスク・センチメントは比較的速く変化するとみている。足元の米中貿易紛争の状況は変わりやすく、トランプ米大統領が突然、中国との通商協議に進展の兆しが見えると示唆する可能性も排除できない。もしそ うなれば、リスクオンによるドル高円安の反応がみられる可能性がある。また、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、市場の期待ほどハト派姿勢が強まらなかった場合も、ドル円は上昇すると見込む。

最後に、日本株式投資について為替オープンを維持する

「長期的に円をオーバーウェイト」の投資テーマは終了するが、日本株式投資における為替オープンのアプローチは維持する。2018年12月、我々は、日本株式投資について、為替ヘッジの解除を決定した。3~4年の投資期間でみた場合、円の上昇余地は大きく、為替ヘッジを外しても十分にプラスリターンが得られると判断したからだ。そうした見方に変化はなく、数年単位の投資期間においては、円は引き続き上昇する可能性が高いと考える。

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