米国株式市場は27日に大幅下落した。株式市場の割高なバリュエーションに対する懸念、追加財政刺激策を巡る不確実性、新型コロナの新規感染者数が増加し続ける中でのワクチン普及の遅れが、短期的に相場を大きく変動させた。

S&P500種株価指数とナスダック総合指数はともに2.6%下げて取引を終えた。下落は広範なセクターで見られたが、金融(-2.9%)などの景気に敏感な業種の下げが、ハイテクセクターの下げ(-1.9%)を上回った。米国10年国債利回りは2.5ベーシスポイント(bp)低下した。

追加財政刺激策の規模とタイミングは依然として不透明だ。民主党のシューマー上院院内総務は26日、バイデン大統領が掲げる1.9兆米ドル規模の新型コロナ経済対策案に共和党が賛成しなければ、民主党だけの単純過半数で法案を可決させる財政調整措置を通して同法案成立を進めるべきだと主張した。

今後の見通し

今回の下落まで、株式市場は力強いパフォーマンスを示してきた。S&P500種株価指数は大幅に下落したものの、年初来では横ばい水準となっており、昨年10月末からは15%、昨年3月の下値からは68%上昇している。この株価大幅上昇を経て、株価が過去最高値近辺をつけている現在、短期的な先行き不透明感が相場の大幅な変動につながっていることは理解できる。しかしながら、我々は市場の関心が企業利益と財政刺激策、ワクチン普及に戻り、中期的には株価上昇が続くと考える。

  • これまでのところ、米国企業の2020年第4四半期利益は予想を上回っており、9割超の企業で、利益が予想を平均25%余り上回った。全体的に、企業利益の伸び率は、2021年は26%、2022年は11%を予想する。
  • 米国の新型コロナ経済対策は今後数週間で可決されると予想する。バイデン大統領が掲げる1.9兆米ドルよりも規模が小さくなりそうだが、経済と企業利益の伸びを下支えするには5,000億~1兆米ドルで十分とみている。
  • 今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、金融緩和政策の出口を検討するのは時期尚早と主張した。低い金利と利回りが引き続き株式のバリュエーションと株式市場への資金流入を下支えするだろう。
  • ワクチン生産のペースは我々の推定よりも遅いが、ワクチンを開発する主要企業は今年の生産目標を概ね引き上げている。某米大手製薬会社は先日、2021年の目標を13億回分から20億回分に引き上げ、欧州への供給が遅れているのは生産設備増強のためだと説明した。一方、別の某米製薬会社は2021年生産目標の下限を5億回分から6億回分に引き上げた。ワクチンが新型コロナとの闘いで効力を発揮し続ければ、投資家は短期的な普及の後れには惑わされないだろう。
  • 一部の市場参加者の行動が過去の株式バブルを彷彿とさせており、我々はレバレッジの利用状況を注視する方針だが、株式市場全体がバブル状態に陥っているとは思わない。低い金利と債券利回りを勘案すると、株価は上がり過ぎではない。引き続き十分な分散投資を行っていれば、個別の株価の動きが全体的なポートフォリオに大きな影響を及ぼすことはないだろう。

投資家の取れる行動とは

短期的な相場の変動に惑わされず、株式を継続保有することを勧める。株式市場にはさらなる上値余地があるとみており、S&P500種株価指数については2021年12月までに4,000をつけるとの見方を我々の基本シナリオとしている。投資行動については以下を勧める。

景気回復を見据えて景気敏感株に投資する:パンデミック下でアウトパフォームしてきたセクターから、世界経済の回復による潜在的な恩恵が見込まれるセクターにシフトすることを勧める。特に昨年プラス成長を達成し経済回復の先陣を切っている中国といった、新興国株式を有力視している。また、米国大型株より景気感応度の高いグローバル小型株なども引き続き推奨する。

段階的に投資する:市場の下落局面は、中長期的には投資機会ともなりうる。長期的な投資目標の達成において、投資のタイミングを計る戦略が功を奏すことは滅多にないが、タイミングを逸するリスクを戦略的に低減させることは可能である。例えば、毎月段階的に投資を行うことで、リスクを分散することができる。

下振れリスクに備える:株式相場全体についてはバブル状態にあるとは見ていないが、ポートフォリオを地域や資産クラスごとに十分に分散することが必要である。リスク回避志向の投資家には、金も分散対象となりうる。また、従来型の株式・債券への分散投資に加え、ダイナミック・アセットアロケーション(機動的な資産配分の変更)を取り入れるなど、ポートフォリオのリスク管理を見直すことができる。

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