何が起きたか

新型コロナ新規感染者数が増加し続け、新たに行動制限が発動されるとの報道を受けて、広範な「第2波」への警戒が再び高まり、株式は24日(水)に下落した。S&P500種株価指数の終値は2.6%下落。これに先立つ欧州市場では、ストックス欧州600指数が2.8%値を下げて取引を終えている。

米フロリダ州は24日、新規感染者数が5,500人を超え、1日当たりの増加数の最多を更新したと報告した。23日にはアリゾナ州、カリフォルニア州、ミシシッピ州、ネバダ州が、22日にはテキサス州がそれぞれ過去最多を記録している。カリフォルニア州のニューサム知事は、同州の感染者数が増加すれば、外出禁止命令の再発動を検討する用意があると発言。テキサス州のアボット知事は、人々に自宅にいるよう呼びかけた。ドイツではノルトライン・ウェストファーレン州が、食肉加工工場で集団感染が発生した郡に対して、6月末までの軽度の都市封鎖を再発動した。

弱いリスクセンチメントに追い打ちをかけるように、国際通貨基金(IMF)は今年の世界経済成長率予想をマイナス4.9%に引き下げた。4月の予想はマイナス3%だった。また、2021年の成長率予想を5.8%から5.4%に下方修正し、新たに大規模な感染拡大が起これば、同年の成長率がわずか0.5%になる可能性があると警告した。さらに米国は、航空機メーカーへの補助金を巡る対立で、英国と欧州連合(EU)からの輸入品に対して31億米ドルの関税を賦課する可能性を示した。関税の総額は小さいが、トランプ大統領の選挙戦の一環として、米国とその貿易相手国との緊張が高まるという投資家の懸念が浮き彫りとなった。

今後の見通し

我々は引き続き新型コロナの感染状況を注視していく。

  • 一部の州知事の最近のコメントを考えれば、米国で州レベルの移動制限が発動される可能性は排除できない。しかしながら、規制はより地域に限定されたものになる可能性が高いと考える。
  • 規制の発動を決定する上で、病院の収容能力が極めて重要な要素になりそうだ。我々の試算によると、アリゾナ州、フロリダ州、テキサス州、カリフォルニア州の一部(深刻さの順)では、今後2⁻4週間において病院の集中治療室(ICU)への過度な負担が危惧される。新規感染者は若年層に集中している兆候があり、その場合は、入院者数の増加ペースが鈍化する可能性があるため、コロナ患者の新規入院者数に注目することが重要だ。
  • 対照的に、ドイツ、ポルトガル、韓国では、最初のピークと比べて小規模な感染拡大が地域的に発生している。1日当たりの新規感染者数の伸びは3月と比べて緩やかで、このことから継続されている措置(追跡、隔離等)が有効であることが示唆される。病院は感染者への対応により長い時間をかけられることになる。これらの国の医療システムは、このペースの感染拡大であれば、数カ月とは言わないまでも、あと数週間程度は対処可能だと見られる。だが、これ以上感染ペースが加速する場合には警戒が必要だ。
  • 一方、治療薬・ワクチン等の開発は継続中で、初期段階における有望な兆候も出始めている。

しかし、新たに感染者数が増加している国でさえ、全体的には正常化に向かっていると見られる。3月から4月にかけての都市封鎖中に被った深刻な経済的打撃により、世論は経済再開の継続を支持する方向に向いているようだ。社会は、移動を減らすことなく、より効率的に感染拡大を封じ込める方法を模索している。このことから、移動データを通して、感染再拡大への消費者の反応を調べることがより重要になる。しかしながら、少なくとも地域レベルでは、規制の緩和と強化を手探りで調整する状態が当面続くだろう。

投資家は何をすべきか

感染「第2波」を警戒する報道が相次ぐと経済正常化のペースへの懸念が高めるため、市場の変動は高まるだろうが、我々は、来年にかけて回復の勢いが増すとの基本シナリオを維持する。また米国の大統領選挙が近づく中、投資家が自らに「恐怖」のストーリー、つまり、民主党が選挙で勝利することによる、増税、規制強化、ハイテク大手に対する独占禁止の強化、あるいはトランプ大統領が反中国の姿勢を強化し選挙戦を戦い勝利するというストーリーを言い聞かせるならば、相場の変動性をさらに高める可能性がある。

だが、感染抑制状況の変化や米国大統領選挙によって、相場は大きく変動するものの、市場にとって中期的に最も重要なのは、中央銀行による流動性供給のストーリーだと考える。さらなる追加財政支援が行われる可能性も高い。ムニューシン米財務長官は23日、新型コロナ関連の景気低迷に対処するための新たな刺激策を検討中だと述べた。これらを踏まえ、我々は投資を継続することを推奨し、株式と債券の両方が有望だと見ている。

また、市場の先行きが不透明な間は、様子見姿勢を取るのではなく、高いボラティリティ(相場変動)を活用し、ドルコスト平均法を用いて株式の長期ポジションを構築することを勧める。

景気回復に伴い世界的に株式が上昇するとの見方から、これまで株価上昇局面で出遅れていた、一部の景気敏感株とバリュー株に上昇余地があるとみている。先行き不透明感は払拭されないことから、下振れリスクへのプロテクションとして、世界のクオリティ株も推奨する。さらに、リスク回避志向の投資家は、ファンダメンタルズに支えられている、安全資産として魅力的な金を保有し、厳選されたヘッジファンドへのエクスポージャーを検討することができる。

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