何が起きたか?

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が景気の先行きに慎重な見方を示したこと、そして米国の一部の州で新型コロナウイルス感染拡大に関する懸念が高まったことが、11日(木)の株式市場の重石となった。この日、S&P500種株価指数は5.89%、ストックス欧州600指数は4.53%それぞれ値を下げて取引を終えた。最近の相場の牽引役はグロース株からバリュー株へとシフトしていたが、長期的な低金利の見通しと景気回復への懸念により、その流れに一部で反転がみられた。ここ2日では、ハイテク株中心のナスダック総合株価指数(10日に過去最高値を更新)が、ラッセルバリュー指数を3.72%アウトパフォームした。11日の下げ幅は大きいが、それは最近の上昇局面を止めるものではないと考えられる。現時点の相場は、2週間前まで遡らない程度の水準に戻した状態である。

10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、FRBは投資家の関心を経済リスクに再び振り向け、今年の米国の国内総生産(GDP)が6.5%減となり、年末時点の失業率が9.3%になるとの予想を示した。パウエル議長のコメントでは、経済的な先行き不透明感が強調され、人々が新型コロナのリスクがなくなったと考えるまで(つまり、ワクチンが利用可能になるまで)、景気は完全には回復しないとの見通しが示唆された。FRBの予想は、政策金利が2022年末まで据え置かれることを示しており、低金利が長期にわたって続くとの見通しを裏付ける。

経済活動を再開させた米国の一部の州では、新型コロナの新規感染者数が上昇しており、大規模な感染の「第2波」の出現を危惧する報道もされている。テキサス州では10日、パンデミックが始まって以来で最多となる1日当たり2,504人の新規感染者が報告された。フロリダ州では1週間の新規感染者が8,553人となり、7日間の合計ではパンデミック以降で最大となった。カリフォルニア州では、入院者数が過去10日のうち9日で増加した。

さらに、バイオテクノロジー企業のモデルナは、7月にワクチン治験の最終段階に入ることを発表したが、推奨される用量は、予想レンジの最大値(100マイクログラム)であるとも確認している。つまり、年間の生産能力は10億回分ではなく、約5億回分になる可能性がある。

何が予想されるか?

我々は依然として、医学の進歩と財政・金融刺激策によって、医療システム崩壊を招くような感染の第2波を引き起こすことなく、経済活動の再開は継続されると考える。

現時点で我々は、最近の米国での感染拡大状況が、国家・州レベルの都市封鎖につながらないと見ている。新規感染者数は広範囲で増加しておらず、第2波というよりは、まだピークに達していない第1波の続きであるケースもあるということを理解する必要がある。例えばジョージア州では、経済活動再開から6週間になるにもかかわらず、新規感染者数は横ばいである。総じて、米国の感染率は低下し続けている。感染者数が増加している州でも、病院の収容能力と比べると低い。

さらに、報道では第2波の恐れに注目するかもしれないが、市場の注目は消費者の行動に集まりそうだ。これまでのところ、人々の移動データは、第2波を危惧する報道にもかかわらず、感染者数が増えている州でも、消費者が依然として活発であることを示している。6月5日時点の小売店と娯楽施設に関するグーグルの移動データは、コロナ危機前の水準のマイナス36%まで改善した。4週間前はマイナス46%だった。フロリダ州では4週間前のマイナス33%からマイナス23%に、テキサス州ではマイナス23%からマイナス14%になっている。欧州では、移動は増えているが、新規感染者数は抑えられている。例えば、早期に経済活動を再開した、オーストリアとデンマークの1日当たりの新規感染者数は一桁台を維持している。

投資家は何をすべきか?

グローバル株式は2月の高値から7.1%低い水準にある。今後、基本シナリオでも、楽観シナリオにおいても、株価上昇の余地はある。FRBは景気がV字回復にはならない可能性を示したが、長期的な金融緩和の方針を確認した。これは、中期的にはリスク資産をサポートするだろう。クレジットは依然としてFRBによる政策支援を受けており、低金利の環境下、インカム獲得手段として魅力的だ。とは言え、最近の相場上昇後の、11日のリスクオフの動きからも、銘柄選別の重要性が再確認できる。

具体的には、以下に投資機会があると考える。

  • 銘柄の選別をする:FRBの景気回復が遅れる見通しや、低金利環境を数年継続する姿勢を受け、銀行などの金利への感応度の高いバリュー株や景気敏感銘柄が10日から11日にかけて下落した。一方で、コロナ危機の相場急落時にアウトパフォームしたテクノロジー株など、長期成長が期待できるセクターへの投資のシフトが見受けられた。前例のない規模の財政・金融政策の支援を受けて経済活動が再開するなか、一部の景気敏感株とバリュー株がグロース株とのギャップを縮小させると予想する。楽観シナリオとなれば、米中型株、欧州資本財、ドイツ株式のアウトパフォームが期待される。ただし、楽観シナリオへのシフトが確実という訳ではないことからも、ヘルスケアや優良銘柄におけるディフェンシブ株のリスク調整後リターンにも注目する。こうした銘柄はいかなるシナリオにおいても、比較的堅調に推移すると予想されるからだ。
  • 下振れリスクに備える:11日の相場急落によって、我々は依然として相場変動の大きい環境にあることを再認識した。コロナ感染状況、景気見通し、米中間の緊張の高まり、米大統領選挙の行方といった不透明な状況の下、投資家は下振れリスクに備える必要があるだろう。資産クラスや地域間の分散投資の他にも、金やヘッジファンドのアクティブ運用などへの代替投資も検討できる。
  • ポートフォリオにインカムゲインを追加する:FRBの緩和継続姿勢により、長期にわたる低金利の時代に突入していることが理解できる。よって、投資家は利回り追求姿勢を強めることになるだろう。我々は引き続き、米ハイイールド債、米ドル建て新興国国債といったクレジットを推奨する。既にスプレッドの縮小は進行しているが、長期的な低金利環境とFRBによる積極的な資産購入により、これらの資産クラスは依然として魅力的な利回りを提供する。
  • クレジット市場における投資機会:コロナ危機後の世界で利回りを追求する代替手段とし、パンデミックによって引き起こされたクレジット市場の混乱の中で投資機会を捉えることができる。我々はクレジット市場の下落局面がしばらく続き、デフォルト(債務不履行)率は大幅に上昇すると予想する。ヘッジファンドを通じたアクティブ運用戦略を用いることで、コロナ危機によって経営不振に陥った企業への投資を通じ企業を支援し、いずれは魅力的な投資リターンを生み出す可能性がある。

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