CIO Alert 市場の追い風となる「第2風」

最新のマンスリーレターで、我々はウイルス感染の「第2波」を引き起こすことなく、経済活動が再開すれば、株式は追い風となる「第2風」を捉える可能性があると指摘した。先週はその「第2風」が現実味を帯び始めた。

2020年 6月 05日

最新のマンスリーレターで、我々はウイルス感染の「第2波」を引き起こすことなく、経済活動が再開すれば、株式は追い風となる「第2風」を捉える可能性があると指摘した。先週はその「第2風」が現実味を帯び始めた。欧州中央銀行(ECB)による追加金融刺激策、人々の移動増加、行動規制が解除された国々の感染数の安定または下落、そして米国の5月の非農業部門雇用者数が前月比250万増とのニュースを受けて、投資家は危機が過ぎ去ったとの確信を強めている。経済の正常化が進み、主要経済国の政府が都市封鎖策を再実施する必要がなく、中央銀行が緩和政策を維持すれば、株価が一段と上昇する余地が生まれるだろう。しかし、今回の上昇局面では、市場内で銘柄を厳選する重要性が増している。

何が起きたか?

S&P500種株価指数、ユーロ・ストックス50指数、MSCI新興国株価指数は先週それぞれ4.9%、9.5%、6.3%上昇して取引を終えた。最も上昇が著しかったのはバリュー株と景気敏感株で、MSCIワールド・バリュー指数は先週7.9%、一部航空会社は50%超上昇した。ブレント原油価格は10%高の42米ドル/バレルとなった。一方、安全通貨への需要は弱まり、米ドルとスイス・フランはともに下落した。G10通貨で我々が推奨する英ポンドは強さが際立ち、先週は対米ドルで2.6%上昇した。

主な要因は次の通りである。

  • 追加刺激策:今週、ドイツは1,300億ユーロ規模の新たな経済対策を発表し、ECBは債券購入プログラムを6,000億ユーロ増額した。これによって、ECBの今年の資産購入額は1兆4,000億ユーロになる。一方、米国の財政・金融刺激策は、合計すると、2021年末までに同国の国内総生産(GDP)の50%を上回る。
  • 移動の増加:移動のパターンにも正常化に向かう明るい兆しが見られる。アメリカン航空は、7月の国内線の便数を通常の55%にする方針を発表した(5月は僅か20%)。イタリアなどの国々も、旅行者に向けて国境を開きつつある。
  • 少ない新規感染者数:人々の移動は回復しているが、最初に都市封鎖を解除したドイツなどの国々で感染率は上昇していない。今後数週間で、都市封鎖の解除が相次ぎ、持続的な回復が急速に進む可能性が高まるだろう。各国政府も、新たな感染拡大に向けた準備の強化をすすめており、これからは完全な都市封鎖をせずに第2波に対処できるようになると考えられる。
  • 経済安定化の兆し:最新の雇用統計は、現時点で米国経済が回復し始めたことを最も顕著に示している。今週発表された購買担当者景気指数(PMI)なども底打ちしたようにみられる。

見通しはどうか?

我々の基本シナリオが実現した場合、一部の規制(公共の場での集会や海外渡航等)は2020年末まで維持され、大規模なワクチン生産が行われるのは2021年になってからと予想する。しかし、感染の再燃は医療システム内で対応し、都市封鎖が再度実施されることはないだろう。これにより、持続的な景気回復は2020年第3四半期から始まり、社会活動は2021年前半に世界的感染拡大前の水準に戻るだろう。このシナリオが実現するには、検査と追跡を推進し、ICU収容能力を拡大し、抗ウイルス薬を使って、医療システムを支える必要がある。主要経済国で医療従事者とリスクの高い集団を守るのに十分なワクチンが生産されることも、このシナリオの実現を後押しする。

我々の楽観シナリオが実現した場合、2020年後半にすべての主要地域で、持続的な景気回復が始まり、社会活動が世界的感染拡大前の水準に戻る。これが可能になるのは、検査と追跡のアプローチが成功するか、ワクチンの量産が予想よりも早まるか、あるいは「集団免疫」の閾値が現在考えられているよりも低いと証明される場合だ。我々の悲観シナリオが実現した場合には、主要経済国の政府が、医療システムの崩壊を防ぐために、都市封鎖措置を断続的に再導入するだろう。これによって、持続的な景気回復は2021年まで始まらず、社会活動が世界的感染拡大前の水準に戻るのは2021年後半になってからになる。

投資家はいま何をすべきか?

株価指数は下値より約40%高い水準にまで回復している。S&P500種株価指数は、基本シナリオの2021年6月までの目標である3,300に近づきつつある(楽観シナリオの目標値は3,500)。

株価がこれらの水準になるには、経済活動の再開と、金融・財政刺激策の継続が必要となり、上昇余地のある銘柄・セクターの選別が重要になってくる。また、今回の上昇局面を受けて、大きなキャピタルゲインを得る機会がより限られ、低金利が長期に渡って続く可能性が高いことから、投資家は債券などの分野で利益を得ることに再び注目するかもしれない。そして、下振れリスクの管理や、エクスポージャーの積み増しには、ディフェンシブなエントリー戦略を検討することができる。

具体的には、以下が重要だと考える。

  • 上昇が見込まれるバリュー株を厳選する: 5月半ばに、ラッセル1000バリュー指数は、同グロース指数と比較して、過去20年超で最低の水準にまで下落した。ここから、バリュー株のパフォーマンスが大幅に改善する余地があることが示唆される。また、相場の牽引役が代わりつつある兆しもある。5月24日から6月4日にかけて、MSCIバリュー株指数は9.8%上昇したのに対し、同グロース株指数の上昇率は5.2%だった。特に、バリュー銘柄の比重が高い英国市場(指数の40%は素材、エネルギー、金融で構成)を推奨する。米国のバリュー銘柄では、エネルギー銘柄の株価には、我々の長期的な原油価格の見通しを下回る水準が織り込まれているようだ。アジアでもバリュー銘柄、具体的には保険・銀行セクターや持ち株会社またはコングロマリット(複合企業)の一部銘柄に出遅れが見られる。
  • 一部の景気敏感株と中型株のアウトパフォームを期待する: 経済活動が再開される中、投資家は、危機の間はパフォーマンスが劣っていた、景気敏感株を探すだろう。我々は、米国の中型株のパフォーマンスが大型株のパフォーマンスを上回り始めると考える。中型株は米連邦準備理事会(FRB) の資産購入プログラムの恩恵を受け、デジタルよりもフィジカルなビジネスの比重の方が多いからだ。ユーロ圏では、資本財セクターとドイツ株式を推奨する。アジアでは、消費拡大の恩恵を受ける銘柄を推奨する。
  • リスク調整後リターンが魅力的なクレジット: 我々は引き続きクレジット、具体的には、米ハイイールド債と米ドル建て新興国国債を推奨する。米ハイイールド債のスプレッドは1週間で、77ベーシスポイント(bp)縮小して583bpになった。だが、中央銀行が資産購入を行い、政策金利が長期に渡って低く維持される中、投資家がインカムゲイン獲得のために同資産クラスの購入を続ければ、スプレッドは一段と縮小しそうだ。
  • 下振れリスク管理とディフェンシブなエントリー戦略: 急上昇する市場への投資に不安を抱く投資家は、様々な資産クラスと地域への分散投資、金や物価連動国債(TIPS)などの代替的な投資で、下振れリスクを管理することができる。キャッシュを保有し、投資機会をうかがいつつも、タイミングリスクを管理するには、規則的な分割株式購入などを検討することができる。

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