原油価格の急落を受けて株式は今週前半に売られたが、22日(水)に反発した。S&P500種株価指数は2.3%、ユーロ・ストックス50指数は1.6%上昇してこの日の取引を終えている。債券市場もセンチメントが持ち直し、米国投資適格債、米国ハイイールド債、米ドル建て新興国国債のスプレッドがやや縮小した。

市場のセンチメント改善には次のような要因が挙げられる。

  1. 原油市場の安定: 22日のニューヨーク原油先物市場でWTIの6月物は、前日比19.1%高の13.8米ドル/バレルまで回復した。前日比の上昇率は一時30%を超えた。2日前には、貯蔵能力の枯渇懸念から、5月物が史上初のマイナス価格をつけた。米エネルギー情報局(EIA)が22日発表した週間統計によると、米国の原油在庫は増加し続けており、大幅な供給過剰は年後半まで解消されないとの我々の見解を裏付けた。しかし、トランプ米大統領が22日にツイッターで「イランの小型船が海上で米艦船に嫌がらせをするなら、そのすべてを攻撃し、破壊する」と発言したことなどから、ある程度の買い戻しが見られた。原油市場は当面不安定な値動きが続くとみられるが、主要国がコロナ対策の各種規制措置を解除し、さらに産油国の生産と設備投資が減少するのに伴い、年後半にはWTIと北海ブレント原油の価格は回復すると予想する。
  2. 新型コロナ対策の追加支援: 米上院は21日(火)夜に、4,840億米ドル規模の新型コロナ救済法案を可決した。下院の承認と大統領の署名を経て23日に成立する見通しだ。これには、中小企業の雇用維持を目的とした「給与保護プログラム」の3,100億米ドル追加など、新型コロナの影響による失業者数や倒産件数の増加を食い止める重要施策が盛り込まれている。一方、欧州連合(EU)加盟国は23日の首脳会議で、復興に向けた支援策を承認する見通しだ。一部の加盟国からは、2兆ユーロ規模の経済支援策が提案されている。施策の実施には時間がかかる可能性が高く、ユーロ圏共同債の発行は議論が難航すると予想されるが、追加の経済対策はセンチメント改善に寄与するだろう。
  3. 経済活動の再開期待: 全米の一部の州が行動制限を解除する方針を表明しており、トランプ大統領も「一部の州で安全に動き始めた。我が国の経済活動が再開し始めている」と述べた。ムニューシン財務長官は、8月末までに米国経済のすべてとは言わないが大半は再開する見通しと述べた。また、イタリアのコンテ首相も、ロックダウン(都市封鎖)を5月4日から段階的に緩和する方針を示した。

S&P500種株価指数は現在、House View Monthly Letter最新号「コロナ感染ピーク後を見据える」で述べている基本シナリオに近い水準で取引されている。我々の楽観シナリオ設定における前提がさらに実現し、たとえば、レムデシビルなど、新型コロナウイルス感染症の治療薬により医療現場の逼迫が緩和される状況等が確認できるようになれば、株式市場はさらに上値余地が広がる可能性がある。しかし、現時点では株式よりもクレジット市場の方が期待リターンは高いとみている。

クレジットでは、米国投資適格債、米国ハイイールド債、米ドル建て新興国国債を有望とみている。米国投資適格債は、米連邦準備理事会(FRB)による資産購入プログラムの中核で、企業行動も、自社株買いや配当、設備投資の中止など、債券保有者に有利な動きが増えている。

株式については、楽観シナリオに沿った進展がさらに確認できるまでは、ディフェンシブ銘柄など銘柄選別的な投資を勧める。特に、生活必需品など、景気感応度の低いセクターで底堅い業績を示す企業や、構造的な長期トレンドの恩恵を受ける企業、一部の景気敏感株を推奨する。コロナ・ショックを引き金として加速する構造的な変革の恩恵を受けるセクターとしては、オートメーションとロボット、eコマース、フィンテック、フード、ヘルスケアなどが挙げられる。

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