S&P500種株価指数は15日(水)、2.2%下落して取引を終えた。今週は株式市場の方向感が定まらない中、前日の上昇を一部巻き戻す形になった。VIX指数が依然として高く、広範な株価指数が我々の基本シナリオでの目標近くで推移する中、様々な国が策定する出口戦略に市場が反応するのに伴い、変動の激しい取引が続くだろう。

15日の下落は、予想以上に弱い経済指標、米国銀行の貸し倒れへの懸念、石油需要が過去最大の減少幅になるとの国際エネルギー機関(IEA)の報告という複数の要因によって引き起こされた。

  • 3月の米小売売上高は前月比マイナス8.7%を記録。ニューヨーク連銀製造業景況指数は過去最低のマイナス78.2となり、2009年2月につけたマイナス38.2の2倍となる落ち込みを記録した。また米連邦準備理事会(FRB)は、6週間ごとに全米の企業から集めた情報をまとめた米地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表した。今回の報告には、4月6日までに集めた情報が含まれ、「米国の全地域で経済活動が急速に縮小しており」、「多くの地区で、深刻な雇用削減が広範囲で行われていると報告されている」ことについて詳細が示された。
  • 2020年1-3月期決算を終えた複数の米銀大手が、コロナウイルス感染に関連した貸倒引当金を積み増ししたために、2桁の減益を報告し、先行きが不透明であるとの見通しを示した。
  • また、原油価格も再び下落した。IEAが今年の世界の石油需要が9%という過去最大の減少幅を記録するとの見通しを発表したことを受けて、WTI原油は1バレル当たり20米ドル、ブレント原油は同28米ドルを切る水準にまで下落し、2週間ぶりの安値を記録した。我々は、6月末時点のWTIとブレントがともに1バレル当たり20米ドルになると予想するが、年後半には上昇に転じて、年末にはそれぞれ同40米ドル、同43米ドルにまで回復すると見ている。

こうした環境下では、引き続き株式よりもクレジットを推奨する。特に、米国社債、米ドル建て新興国国債、グリーンボンドが魅力的とみる。

株式市場については、銘柄を厳選し、特に1)欧・米・スイスにおける売られ過ぎの銘柄、2)コロナでも業績が安定的で底堅い銘柄(高配当の優良株等)、3)オンコロジー(がん治療)、ヘルステック、遺伝子治療、デジタル・トランスフォーメーションなどの長期的な勝ち組銘柄等に注目することを勧める。

さらに、株価がかなり戻してきたことから、長期投資の追加を検討している投資家には、株式の分割購入などのディフェンシブな戦略を勧める。下落リスクからポートフォリオを守りたい場合は、ダイナミック・アセットアロケーション(機動的な資産配分の変更)戦略の追加や、金や長期国債の保有も有効な手段だろう。

投資家には投資を継続することを勧める。欧州ではスイス、イタリア、オーストリア、デンマークが正常化への第一歩として経済活動の一部を再開する準備を進めており、他国もこれに続く見通しである。さらに、財政・金融当局も過去に例のない規模と範囲で経済対策を導入しており、これが波及すれば上値余地はさらに広がる可能性がある。

House View レポートの紹介



資産運用はUBS証券へ

UBSウェルス・マネジメントでは、富裕層のお客様の資産管理・運用を総合的にサポートしております。日本においては、2億円相当額以上の金融資産をお預け入れくださる方を対象とさせていただいております。

(受付時間:平日9時~17時)