食料革命 食の未来と課題

近年、食料は、経済のみならず、国家の安全保障にさえも大きく関わっています。現在の農業システムは、持続可能な農業ではありません。しかし、「第4次産業革命」の技術を原動力に、今まさに農業革命が起きようとしています。垂直農法、水耕栽培、バイオテクノロジー、ブロックチェーン、ロボット工学など、従来の発想を根底から覆す技術革新が、食料の生産方法を変えつつあります。

17 7 2019
  • 栄養価の高い健康的な食品を求める消費者のニーズ に応えつつ、次世代に貴重な地球資源を引き継ぐため には、世界の食料生産システムを根底から変える必要 がある。すでに水と土地の大半は農業・食料生産のため に利用され、人間活動による温室効果ガス排出も、その多 くは食料生産活動に起因している。
  • 一方で、我々は急増する都市人口の問題にも直面してい る。土地や土壌、水、栄養素、労働力等の資源が年々減少 する中、増え続ける都市部の人口に対し、いかに食料や 燃料、衣料等を確保するかは喫緊の課題となっている。 さらに、とどまることを知らない人間活動に起因する急激 な気候変動も、地球環境に大きな負荷をかけている。
  • 明るい兆しとしては、食料の生産、輸送、消費のすべて の場面で変革をもたらす新・農業革命が徐々に実現に 向かっている。変革のけん引役を担っているのは、主に 次の5つのメガトレンドだ。1)資源不足に直面する政治 経済体制、2)新世代の消費者、3)健康とウェルネス、4) デジタル化の進展、5)持続可能な生活。
  • 近年、農業生産性の向上や、健全な環境の保全、さらに は多様化・高度化する消費者ニーズに対応する新技術が 次々に生み出されている。例えば、生物学的ソリューショ ンにより、環境安全性を向上させつつ、全く新しい方法 で収量を上げ、植物が本来持つ病虫害への抵抗力を高 めることが可能になりつつある。垂直農法や人工的に育 てられた食料、藻類による水産飼料生産といったイノベ ーション、そしてビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、 人工知能(AI)など第4次産業革命の主要技術が、農業サ プライチェーンの様々な段階に組み入れられている。
  • 最近まで、農業はディスラプション(革新的な技術で既存 市場を根底から大転換させる創造的破壊)の点で他の 産業に後れをとっていた。農業分野の2018年のデジタ ル普及率はわずか0.3%であるのに対し、金融セクター は2.5%、小売セクターは12%近くに達している。だが、 農業のデジタル普及率は、今後急速に上昇する見通しである。農業専門のクラウドファンディングサイト AgFunderによると、農業関連テクノロジーへの投資は昨 年、前年比43%増の169億米ドルに達した。未開拓の市 場が広がり、強力なテクノロジーが次々に出現しているこ とを考えると、食料イノベーションの市場規模は、2030年 までに現在の5倍の約7,000億米ドルに達するものと 見込まれる。急成長するセグメントと長期的な潜在成長 性から利益機会を獲得するには、関連する非上場および 上場企業に分散投資することを勧める。
  • 食料生産のセグメントには、投資家にとって大きな収益 機会が期待できる分野がいくつかある。高い成長性を秘 めているのは植物由来タンパク質で、2018年の46億米 ドルから2030年には850億米ドルへと、年平均28%で 急成長すると予想する。この他にも、スマートファーミング (16%)、オンライン・フードデリバリー(16%)、種子処理 (13%)、種子科学(9%)などに高い成長性が見込 まれる。
  • 農業関連大手は、農業セクターの課題をすべて自力で 解決できるわけではない。今後、こうした課題に対処して いくためには、非伝統的な投資家やビジネスオーナー、 生産者、政府当局などと連携していく必要がある。農業 ビジネスの将来性は高いが、保証されているわけでは ない。
  • 農業・食料生産がさらに前進するためには、「テクノロジ ーは、自然で、豊富で、安価な食料の敵」とする神話を覆 さなければならない。中小農家も、時流に乗り遅れずに 新技術を採用していく必要がある。この必要性は世界共 通であり、先端技術に制約なくアクセスできることが肝 要となる。そのためには、農業セクター全体が連携して、 国連の持続可能な開発目標(SDGs)など一連の目標にい かに取り組むべきかを検討し、合意を形成していく必要 がある。我々は、企業利益と公益の双方に投資すること によって、世界の農業と食料消費の在り方を、目に見 える形で良い方向に変えていくことができる。


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